体育協会ってそもそも何なの?

2021年に音声配信コンテンツでお話した内容をまとめた記事となります。配信の際には、総合型地域スポーツクラブで活躍されている上杉さんにご協力いただきました。
▶note:https://note.com/kenta_manager

※1948年以前は「大日本体育協会」、2018年以降は「日本スポーツ協会」という名称ですが、ここでは統一性を持たせるために「日本体育協会」とします。


歴史

「日本体育協会」の前身となる「大日本体育協会」は、嘉納治五郎(かのうじごろう)氏を中心とする体育関係者で、1911(明治44)年に創立されました。嘉納治五郎氏は日本人初の国際オリンピック委員です。

創立目的は主に2つです。

①国民の精神の充実度は国民の体力に大きく関係するため、体系的に国民の体育の振興を図る。
②世界の文化の発展と平和に貢献するオリンピック競技大会に、日本も参加する体制を整える。

この直後、1912年に開催されたストックホルムオリンピックに日本は初めて参加しました。体育協会は、オリンピックとの関連性が非常に強い組織なんですね。

その後、1946年には国民体育大会が文部科学省、実施都道府県との共催で開催されます。これは、第二次世界大戦で敗戦した国民生活に活力を与え、日本のスポーツ界を再建するために企画されたものです。

1948年には「日本体育協会」に名称を変更。1961年にスポーツ振興法が成立し「心身ともに健康」「レクリエーション振興」がうたわれたり、1962年には体育協会によってスポーツ少年団が結成されたり、戦後から徐々に「生涯スポーツの推進」に活動内容が寄ってきます。

そして、1989(平成元)年には「日本オリンピック委員会」が体育協会から独立します。創立当初の目的のひとつが役割から外れ、本格的に「生涯スポーツ推進」にシフトするなかで、2009年には総合型地域スポーツクラブ全国協議会を設立。2018年には「日本スポーツ協会」に改称し、現在に至ります。

創立後、戦後、平成と役割の比重が徐々に変わっていることがわかります。

組織、事業

日本体育協会は「公益財団法人」です。行政庁から公益性を認められた法人で、公益を目的とした事業をすることになっています。

連携機関はスポーツ庁(行政)やオリンピック委員会です。

加盟団体は、都道府県体育協会、中央競技団体(日本陸上競技連盟など)、関係スポーツ団体(障がい者スポーツ協会、中学校体育連盟など)です。日本体育協会へ加盟すると、当該スポーツ・地域における国内での統括性が認められ、権限が付与されます

そして、都道府県体育協会から、各市区町村の体育協会・競技団体などに連携が図られ、各地域の総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団が運営される体制となっています。

※今回は体育協会視点で捉えていますが、行政視点での生涯スポーツ推進もあり、どの組織がどの役割をどれだけ担っているかは、地域によってかなりばらつきがあります。

主な事業としては、国民体育大会・スポーツマスターズの主催、スポーツ少年団・総合型地域スポーツクラブの管理運営などです。

事例

掛川市体育協会

イベント(マラソン、スポーツ大会)、施設管理、スポーツ少年団・競技団体・総合型地域スポーツクラブの運営、スポーツツーリズム視点で旅行業などまで手掛け、まさに「街の生涯スポーツの本丸」として機能しています。

まとめ

国が生涯スポーツ推進の施策として1990年代に『総合型地域スポーツクラブ』を打ち出しましたが、そのはるか80年前には日本体育協会が誕生していて、「体育の振興」を図っていました。

当時は「オリンピックに参加する」という意義が大きくありましたが、1989年にオリンピック組織が体育協会から独立してからは、生涯スポーツ推進に重きを置く団体になっていきました。

国体、マスターズの運営、スポーツ少年団、総合型地域スポーツクラブの管理を担いながら、国と各都道府県体育協会および競技団体を繋ぐ、生涯スポーツの本丸的な立ち位置となっていますが、110年という長い歴史のなかで現場となる地区町村体育協会の活動には地域差が非常に大きくあり、行政側の生涯スポーツ推進と相まって構造が複雑化しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?