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パラメータを機能性に全振りしてしまった結果→飾りじゃないのよ時計は

ブランディングアイテム

先日の自民党総裁選で岸田 文雄氏が選ばれ、そのまま第100代内閣総理大臣に就任しました。

個人的には、キリ番だし初の女性首相に期待をこめて、高市 早苗氏(決して、野田 聖子氏ではない)を応援していたのですが…

自民党員でもないオッサンの政治的主張はおいといて、Twitterで岸田首相が着けている33万円の“セイコー”アストロンSBXB001に的はずれなバッシングをして、炎上していた立憲民主党系の司法書士がいました(時計オタクが、ココに言及しないとかはない)。

いやいや…「特別定額給付金3人分を超える!」と息巻いているアストロンは、庶民派を演出するための対外用腕時計で、プライベートでは“ロレックス”のRef.16520デイトナを着けてますよ。

おたくも、士業の身分でそこそこ稼いでいるはずだし、高級腕時計がいくらくらいするか?相場が分かった上で言ってるでしょ?

そのあと、自身もBクラスの“メルセデス・ベンツ”を所有していたことがバレてブーメランで返ってくると、ネット民から集中砲火を浴びて敵前逃亡しました。

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「国産腕時計をアピールするにしても、安倍元首相に忖度して“セイコー”アストロンではなく、

“GS”の雪白(秒針が青なのがいい)にしろ!」くらいのツッコミなら共感しましたが、いかんせん詰めが甘い。

この2機種は、本家で造っている“トヨタ”クラウン(当代で、セダン生産終了するらしいけど)と上位互換ブランド“レクサス”LSのような間柄です。

70万円近くと価格がアストロンの倍以上するので、アンチはさらに発狂するかもしれませんが、心臓部はハイブリッドのスプリングドライブですよ。

Cal.9R65は、服部時計店技術の粋を集めたキャリバーです。

ちなみに、1969年誕生の初代アストロンは『クォーツショック』を引き起こして、スイスの時計産業を奈落の底に突き落とした張本人でした。


このように、腕時計はブランディングに使われることが多く、戦略でへりくだって見せたい総理のケースは特殊だとしても、一般的には自分を少しでもよく見せたいがために、着ける腕時計ブランドは背伸びをします。

いったら、シークレットブーツです。

そうじゃないのなら、なくても生活に困らない腕時計に、頭金なしの60回ローンを組んでまで買う人間とかいないでしょ?

ブランドの威光をつかうのが手っ取り早いのですが、逆に威光が裏目にでるときもある。

1人で近所の“コメダ珈琲”へコーヒーを飲みに行くだけのワンマイルウォッチに、肩肘はって一張羅の高級腕時計は浮くやろ…

今回は、そんな話です。



軍モノに活路を求めて

ミリタリーがファッションに与えた影響は大きく、砲撃兵が懐中時計を腕に括りつけたことがその始まりとされている腕時計もまた然りです。

それなのに、スイスの時計ヒエラルキー社会を活動の場としている情報発信者はあまり触れない…ミリタリーウォッチのジャンルを発信しているのは、そんな時計をリアルに売買している関係者か?軍モノに特化した情報発信者くらいのものです。

古着屋界隈では、フランス軍の『Mなんちゃら』と呼ばれるジャケットやパンツを中心に、ミリタリーアイテムの価格が高騰しているのに、時計はそれほど注目されていない。

そこで普段使いのセカンドウォッチには、世間がノーマークのミリタリー系に目をつけました。


かつては“オメガ”や“ジャガー・ルクルト”のような、スイス時計界きっての大御所もミリタリーウォッチを軍に納品していましたが、基本このカテゴリーに高い方がエラいみたいな資本主義の価値観は存在しません。

高くても、“フランク ミュラー”のクレイジー アワーズみたいな、ひと目で何時か?直感的に分からない時計が1番いらない。

時は流れて…耐衝撃性、視認性、精度、製造コストのどれをとっても機械式では太刀打ちできないクォーツ式が登場したことによって、軍用時計はディスポーザブル(使い捨て)が主流となっていきます。

しまいには、腕時計は官給品ですらなくなり軍人みずから調達するのが当たり前に…

ある元自衛官曰く、GPS時刻補正するソーラー発電の小ぶりなデジタル時計が最強だと。

つまり、5600系の“カシオ”Gショックです。

たとえカモ柄にされたとしても、Gショックじゃ兵士気分が味わえない(泣)

スティンガーをぶっ放してくるタリバン兵に応戦しているガチの『職業軍人』ではなく、こっちは平和ボケした見た目重視の『陸ソルジャー』なので、ステレオタイプなミリタリーウォッチで十分なのです。

しかも、こなれた価格で。

安ければいいのであれば、“ダイソー”でこなれすぎた550円のミリウォッチ(商品名)が売っていたので、ものは試しと買ってみたら…想定どおりケースも風防もプラで萎えました。

これじゃない…ので、ドーパミン放出36%

そうなると考えることはみんな同じで、比較的安価なアメリカブランドに向かうのでした。



カーキ フィールドという選択

今ではスウォッチグループの“ハミルトン”は、実際に米軍や英軍にミリタリーウォッチを供給していました。

“ハミルトン”のミリタリー『カーキ』コレクションは、陸軍の『フィールド』、空軍の『アビエーション』、海軍の『ネイビー』に分かれています。

有名なのは陸軍用のカーキ フィールドで、その数あるモデルのなかでも昔ながらの12H24H表示のメカが、ミリタリーウォッチ入門機として最適です。

庶民でもなんとか買える63,800円と、アストロンSBXB001の約1/5なのも人気のヒミツです。


同じカーキ フィールドでも、2014年公開の映画『インターステラー』の小道具時計を商品化したマーフは、コブラ針がレトロなミリタリーウォッチの雰囲気を醸しています。

金額的に、庶民のサブ機とはいえない121,000円也。

『マーフ』とは、主人公ジョセフ・クーパーの娘マーフィー・クーパーのこと。

手巻き(H-50)のメカが直径38mmなのに対して、自動巻き(H-10)のマーフ オートは42mmと一回り大きいのが、好みの分かれるところです。

NATOベルトのメカが一般兵用装備なら、黒い型押しレザーベルトできれい目寄りなマーフは士官用。


腕時計を着けて、いざ“コメダ珈琲”に行こうとしたときにかぎって、テーブルの上に置いといたはずのマーフがない…

ふみこ「ねぇ?誰かいるのぉ?」

押し入れにベラが不法潜入していて、「しれーっ」とマーフを持っていかなかったのであれば、これは『マーフィーの法則』あるある。

外国人の女の子がわが家にいてもこわいので、べつのミリタリーウォッチを探しにいくのでありました。



noteを書いている中の人はファッショニスタではありません。レビュアーでもありません。 あえてたとえるなら「かろうじて美意識のあるオッサン」といったところです。 自分が買いたいものを買っています。 サポートしなくていいです。 やっていることを遠くから見守っていてください🐰