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010.『あごコンプレックス』

ーーゲスト紹介ーー

照屋裕太(てるやゆうた)
総務として働く社会人。趣味はマンガを読むこと。好きな漫画は『僕のヒーローアカデミア』で、主人公が弱いところから這い上がっていくのがツボ。そういうマンガが好き。Facebookアカウントはこちら。

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どんなコンプレックスだった?

ご覧のとおり、僕はアゴが出ています。小学校低学年の頃は丸顔だったんですが、だんだんとアゴが伸び始めたんですよ。もともと人と顔つきが違うなとは思ってたんですが、当時はあまり気にしてませんでした。でも、中学に入ると英語を習い始めるじゃないですか。中一の英語ってみなさん覚えてます?「ago」という単語があるんですよ。これでめちゃくちゃいじられるようになっちゃったんですよね。授業中に「ago」という単語が出ると、一斉に見られる、みたいな。それからアゴというパーツが、あるのは仕方ないけど隠していたいものになりました。だから中学時代は基本的にマスクをして、猫背で首をすくめてアゴが目立たないようにして。笑うときはとくに目立つので、隠すために手で口を覆う癖がつきましたね。

どうやって乗り越えた?

大きなきっかけとしては、中三のとき学校の先生に言われたことです。中学の頃の僕はわりとすぐカッとなって物を投げたりする人だったんです。今はもう丸くなりましたけどね。アゴ以外。当時はそんな姿を見かねたのか、先生が僕にこう言ったんです。

「みんな君のアゴをおもしろがってるだけで、誰も君の人格を否定してはいないよ。アゴをからかわれたとしても、それは君自身をからかってるわけじゃない。だから怒る必要はないし、むしろみんながおもしろがってるアゴを人と仲良くなるために使ってみたらいいよ」って。

僕はその、自分を苦しめてるものを使うという視点が新しすぎて衝撃的だったんですが、実行にいたるにはまぁ〜〜〜時間がかかりましてですね。高校に入ってからは、より人がとっつきづらい振る舞いをするようになってしまいました。ルールを守ることを徹底させるような、守れないやつはクズだ!と思ってしまうような、そんなやつでした。

そんなまま高校3年になったある日曜日、友達とTMレボリューションのライブに行ったんです。それがもうめちゃくちゃ楽しくて、次の日学校に行ってからもライブのテンションのままでした。そのときはとにかく気分が良くて、ハイテンションで人と話してたらなんだか相手の反応がよかったんですよね。みんな笑顔で話してくれるし、その後仲良くなれた人もいたし。それを経験したとき、人と仲良くなれるなら使えるものは全部使おうと思いました。

たぶん僕は、人と仲良くなりたかったんですよ。アゴをいじられることで『攻撃されてる』と感じて、アゴを隠すことで自分を守っていたわけですが、そんな偏見なく話しかけたらちゃんと返事をくれるんだとわかったからこそ、人と仲良くなりたいという気持ちに素直になれたんだと思います。そしてそれが実感できて初めて、先生に言われたことをようやく実行できるようになりました。だって、自分からコンプレックスをさらすことで、相手との心理的距離を近づけられるんだとわかったんですから。

それからは「今日もアゴ飛び出てんなー」とアゴをいじられても「期末の成績も飛び出るからな」なんて気楽に返せるようになりました。迷う余地をなくして一気にハイになれば、いろいろやれるもんだなと思いましたね。それはまるでロボットが突然人になったような変わりようでしたけども。

いま、自分のアゴは好きですか?

好きですよ。アゴが出てるのは良いことだと思えるようになってからは、整形する気がさらさらなくなりました。友達との会話でもアゴの話題が出ることはなくなりましたし、アゴのおかげで初対面の人と仲良くなりやすいなと感じていますし。アゴで苦しんでた自分がいるからこそ、苦しんだり困ったりしている人の気持ちにもなれますからね。

同じコンプレックスを抱えている方にメッセージをお願いします。

アゴが出ている君は、他にも飛び出るものをもってるはずだから引っ込めんな!アゴも自分も出していこう!

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照屋さんから、コンプレックスに悩むみなさんへおすすめの作品 (若干のネタバレ要素があります)

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「コンプレックスを乗り越える」というテーマでお話をいただいたところ、照屋さんからみなさんにおすすめの作品をご紹介いただきました。

死んでゾンビになった女の子たちが自分の死因(過去のトラウマや心残り)と向き合って、ゾンビであることを隠しながらアイドルを続けていくというのが『ゾンビランドサガ』のあらすじ。

ゾンビでも、過去にどんなことがあってもアイドルをしたい。そんな気持ちをもって気丈に生きる彼女たちの姿は、自分がもつ嫌な部分と向き合うみなさんを支えてくれるはず。

今回はアゴというコンプレックスを乗り越えたお話でしたが、それは別に乗り越えるべきものではなく、隠し続けてもいいし、向き合っても向き合わなくても良い。整形して違う自分になってもいい。なんだっていいんだということをお伝えしたくて、この作品を掲載させていただきました。

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