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マイ弓道ダイアリー 1

相変わらず弓道が上達しない。 
もうすぐ始めて2年になるが、この前も上の壁に矢が突き刺さるという失態を2回もしてしまった。そのたびに梯子を持ってきて抜いてくれる先輩たち。中には「僕、高所恐怖症なんですよね…」と言いながらやってくださる人もいて、皆さんの注目も浴びて冷や汗が出るし、その時点でダッシュで家に帰りたくなる。本当にすみません。

5月には弐段の昇段試験を受ける予定なのだが、大丈夫なのか自分。

とはいえ、今年の初射会(初参加!)では、巻き藁の練習もできずにいきなり最初の答射でバシッと的中した。年初めの一射目が当たるなんて思ってもみなかったので、めちゃくちゃうれしかった。

その日は団体戦(これも初)があって「どうか迷惑がかかりませんように…矢が上に飛びませんように…」と半泣きで参加したものの、そこでも2回的中してなんとか貢献でき、私たちのグループが優勝して商品(ゴディバのお菓子)までいただいてしまった。

商品のゴディバうれしかった

「今年は幸先いいなー!弓道の腕が上がってきたのかも?ウフフ」と調子に乗って、華々しい幕開けに気をよくしていたのもつかの間、その後はなかなか当たらない日が続く。お稽古のたびに1回(または2回、多くても3回どまり)は当たるのだが、矢が乱れていて上に行ったり下に行ったり。

そのうちに、後から入ってきた方々が初段審査を経て、ぐんぐん上達しているのを目の当たりにする。めちゃくちゃ的中率が高い。中には平日に自主練している人もいるらしい。え、すご!!

正直あせった。こんなに差がついているの?と。そして後輩の方のパンッと的中する音を聞くたびに、胸が苦しくなってきた。従来の負けず嫌いが顔を出し、つい心をザワつかせながら的前に立ってしまう。
当然、矢はあさって方向にいく。そんな他の人のことを気にしながら矢を射るなんて、本末転倒なのだ。わかっているのに気になって仕方がない。

マイペースな猫のハクちゃんを見習いたい

そんなわけで最近のお稽古は、自らの器の小ささを感じさせられる時間となっている。道場に行くのがつらい。正直、楽しくはない。「もう今週はサボっちゃおうかなー、新年度の準備とかで疲れてるし(言い訳)」という考えがふとよぎることもある。というか毎回、行くか行かないかで葛藤してしまう。

でもなんとか週1回ペースで通っていて、行けば「ああ、いいお稽古ができたなあ。ためになるアドバイスももらえてよかった!」と必ず思う。そう、行って後悔することはほぼないのだ。でも行くと自分のライバル心や嫉妬心が止まらず、我ながらうんざりする。その自己嫌悪がしんどいのかもしれない。

先輩方がどんなに的中していても「すごーい」と素直に思えるのに、なぜ?
あろうことか後輩の方が的を外すとホッとしたりする自分もいたりして、我ながら性格の悪さに震える。

大人ぶって社会人のふりはできていても、中身は小学生だなとつくづく思う。たぶん私の精神年齢は小4くらいで止まっている!

今のマイバイブル

そんなときに、ふと目にして購入した弓道の本。その中に「これは私のことだ…!!」と心に刺さる一節があった。

射は他の何ものにも妨害されることはない。また他人の射には何の手助けも出来ず、ただ傍観するのみである。
(中略)
そんなことに一喜一憂するより、自己のペースを乱さぬように心掛ける方がよい。

『弓執る心』(今村鯉三郎)

ひいいい。まさにそれ!!!私が的を大きく外すたび、後ろで見ている他の人たちは基本的に無言、無反応。それがいつも苦しくて冷たく感じることも多かった。先生や先輩が指導してくれることもあるが、お稽古している人はあまり口を出さない。
でも確かに、どんなにアドバイスをもらっても的前に立てば自分と弓矢しかないので、それ以上は他の誰も立ち入ることはできない。
同じように、私も他人の射を気にしている場合ではないのだ。

付箋と線だらけのバイブル

人と比べず、煩悩を忘れてマイペースを保つ。
言葉にするのは簡単でもこれほど難しいことはない。日々の生活でも弓道のお稽古でも、嫌というほど知っている。

そんな執着、不安、雑念だらけの自分に気づくたび、弓道はいつも「気にするのはそっちじゃないよ」と心の在り方を教えてくれる。「射即人生」ってまさにこれだな、と何度めかの目からうろこ。

他人が私をコントロールできないように、私も他人をどうこうすることはできないのだ。そんな当たり前のことを、またしても弓道から教わった。

的前に立つことは自分軸の中心に立つことと同じだ。まさに誰も邪魔することのできないマイワールドの中心。そんな時間を持てることに感謝しながら、何も心配せずに思いっきり体を伸ばして弓矢を放ってみたい。

…と書いている間、先週も矢を大きく上に放ちまくりで変な注目を浴びて、家に帰って久々に泣いた。

もうしばらく行かない!と夫に宣言したのだが、審査も近いし、結局は次の週も重い体を引きずって道場に行ってみた。すると、なんだか調子が戻っていた。
いや、ぜんぜん当たらないのだが(的中は最後の1射のみ)、的を大きく外すことはなかった。もう上に行くより断然マシ!!ちょっと原因もわかってきたし、恐怖心が薄れてきた(かも)。
段々と目標のハードルが低くなっている気もするが、今はこれでよしとしておく。

最近の私にしては上出来

そんなアップダウンを繰り返しながら、今のところ私の弓道のお稽古は続いている。
それは、道場に行くことで日常や仕事やあらゆる誘惑(スマホ含む)から離れて、シンプルに自分と向き合える貴重な時間だからだろう。
ほとんどの人にとって、そんな当たり前のような時間がなかなか取れないのが現実かもしれない。

すでに審査に申し込んだことを後悔している私だけれど、とりあえず5月の本番まではがんばる!!

Kana


英語講師ときどき翻訳 Twitter: @kanahilston