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黄昏のタクシー業界にまつわるエトセトラ:ライドシェア元年編

(前回分)

タクシー運転手として書いている『黄昏』シリーズの第三弾を今回アップする。


1:タクシーの増加傾向について

今回はまずはタクシー運転手数について触れておく。
タクシーの乗務員(運転手)数はパンデミック前の2019年3月に比べて20%・約6万人減少している。
なお、2023年後半より各地で乗務員の新規採用が進んでおり、増加傾向にある。


参考ポスト(このアカウントの中の人は業界紙『東京交通新聞』のデータを元にしているので、数値としての有用性が高い)

上記アカウントの中の人が紹介していた過去記事抜粋によれば、川鍋一郎氏(東京・日本交通グループ会長)は2019年度の乗務員数に戻ることを目標値にしているようである。

それで良いのだろうか。
1日の走行距離のうち、お客様のご乗車距離の割合である『実車率』という指標があるが、これが50%台で推移するのが目安である。

地域差や個人差があるにせよ、東京23区や武蔵野・三多摩エリアなどの大都市圏や時間帯は別として、お客様が増えていないのに乗務員数や稼動させる(出庫して街中に出てくる)タクシーを増やせばいいのか。
供給過剰になるのは目に見えて明らかである。
同業のXユーザーの方のポストや愚痴を拝読する限りだが、2024年春頃から大都市圏では乗務員が増加して乗務シフトのやりくりや融通にも支障が出るほどになったり、街中のタクシーの台数が増加傾向にあるようだ。
福岡地区もゴールデンウィーク後より(おそらく普通二種免許取得や研修期間完了のためか)稼動台数が去年(2023年)より10%ほど増加し、金土日以外は供給過剰かと思えるほどの状況である。

また、地域によってタクシーが有り余るほどになったり全く走っていない場合もあるが、
・お客様が元々少ないエリア
・トラブルや事件・事故が多発するエリア
にはタクシーが近づかないこともあり、利用が集中する地域・場所・時間帯に『不足』を体感する人が多いものと思われる。


自分の体感で話をする。
個人的に2022・23・24年の売上高をメモに取っていたが、売上高は国際的イベントがあった2023年8月を除いてほぼ横ばいであった。
2023年には運賃改定が行われており、2024年には関東地区では一般的な予約料(迎車料金)が導入される。
この料金改定が今後業界に与える影響が気がかりである。

個人的には、運賃改定後も売上高が横ばい(つまり、利用頻度の減少傾向が続いている)であることが懸念すべき点であり、1人でも多くの方にお伝えしておきたいところである。

(2023年の運賃改定)

(2024年の予約料導入について)

2:日本型ライドシェアについて

2024年に『日本型ライドシェア』がスタートしている。
福岡地区もライドシェア導入対象であり、数は少ないもののライドシェアと表示している車を見かけることがある。

『日本型』は、
・夕方から夜のタクシー利用者が多い時間帯
・元々タクシー利用者が多い大都市圏
・既存のタクシーだけで対応できなくなっている需要の急増
に対応するスポットワークであり、2000〜2010年代に地方の工業地域で増えた工場への人材派遣や近年の単発アルバイト(例:タイミーやメルカリ)に近い形態と理解するのが正確だろう。

パンデミック前には需要のピークの時期・時間帯に合わせてタクシー会社はタクシーを保有してきたが、パンデミックを経てマイカーへの移行やビジネス需要が縮小している中で保有しているタクシーの台数を仮に全て動かすと
・タクシーが有り余る(供給過剰状態)
・基本的に歩合制のタクシー運転手の収入のさらなる減少
が、長期的に乗客が減少している現状で起こりうることは容易に想像できる。


需要が全般的に見れば縮小していき市場の動向が読めない中で、経営者ならば毎月一定額出ていく固定費(車の維持管理費や給料)のカットに手を付けることは一度は考えるだろう。

その一方で急変する需要(乗客数)に対応するには、他業種ならば『変動費』としてパートタイム労働者や派遣労働者を使うだろう。
その『変動費』の部分について、タクシー業界は今後『日本型ライドシェア』で対応することになり、将来的には正社員のタクシー運転手が減っていくことになるのでは、とみている。

人工知能ではなく、マイカー普及や生活習慣の変化(インフレなど)による市場の変化・縮小で消えてもおかしくない業界のひとつがタクシー業界ではないだろうか。

『日本型』スタート後様子を見ているが、特に
・乗客が集中するラッシュ時(PayPayドームのイベント時や金土・祝前日夜)
・安近短ユーザーが多く移動する時間帯(高齢者の通院・買い物が多い平日午前)
の状況について、Xなどを使いユーザーの声を追いかけてみて実態を理解する必要がある。

ライドシェアの料金によっては、安近短需要を賄うと運賃以外のものを求めるユーザーの住み分け・使い分けが定着してもおかしくないとは思っている。
航空会社のフラッグキャリア(日本航空やANA)とLCC(ピーチアビエーションやジェットスターなど)のような関係になる可能性はあるだろう。

今後の推移をもうしばらく追いかけてみて、改めて書きたい。

この業界について『景気変動のバロメーター』とは言い得て妙である。

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