見出し画像

婆さん、ぴったんこカンカン終わるよ

私の祖母は、よく「ぴったんこカンカン」を見ていました。というか、私に対する唯一のお願いが、それを見ることだったと、大人になってから気づいたのです。

両親が共働きの私は、学校が終わると祖父母の家に行って、母親の仕事が終わるまで世話をしてもらっていました。
祖父母の家に着くなり、プレステーション2を付けてゲームゲーム、終わったらアニメを見ながら作ってもらった晩御飯を大喰らい。
テレビを独占していました。

祖父母は何も言わずにテレビを見させてくれました。しかし、祖母は毎週火曜日の「ぴったんこカンカン」は見たいと、私に言っていました。毎週毎週「ぴったしカンカンが見たい」、「お婆ちゃん、"ぴったし"なんてないよ!"ぴったんこ"だよ!」と、言うやりとりをしながら、テレビ越しの安住アナと、泉ピン子さんを見ていました。年寄りは物分かりが悪いなぁなんて思っていました。

祖母は、私が中学一年生の時に亡くなってしまいました。そして大人になり、社会人になって、甥っ子がテレビを占領している時、私は祖母を思い出します。
ああ、あの人はずっと見たいテレビを我慢していたのかもしれないなぁと、今になって気づくのです。
甥にご飯を作って、感想を言ってもらえなかった時、失敗したと思っていたのかもしれないと、今になって気づいたのです。

そして先日、ぴったんこカンカンが終了する事をネットニュースで見た時、この番組が「ぴったしカンカン」のリメイク番組だと知りました。祖母がデタラメを言っていたわけじゃなかったことに、亡くなって10年もかかってから気づいたのです。

もう少し、一緒に見られる番組を見ておけばよかったなんて、今更思うわけです。
婆さん、ぴったんこカンカン終わるってさ。
この番組の面白さが、やっと分かったのに終わっちゃうよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?