預かりますよ

あげるつもりだったんだけどなぁ

中学の時に最初に買ったギターはYAMAHAのエレキギターで、結構悩んで選んだRGXA2という機種でした。本当はレスポールが良かったのですが、どうしてもレスポールならGIBSONしか受け入れられないし、かといって学生が買えるような代物ではないので、妥協に妥協を重ねて買いました。偉そうなことを言ってますが、ずっと貯めていたお年玉で買ったので実質両親のお金ですね。
ストラトを買う選択肢もあったのですが、妥協した結果ストラトさえも妥協するのが嫌だった(ストラトも高い)ので、どうせなら変わり種にしようと思って選びました。

ボディはホワイトで、形自体はストラトタイプ。ネックは濃いブラウンで24フレット、手の小さい僕にはちょうどいい細さで難しいと言われるFコードもすぐに弾けるようになりました。装飾はほとんどないのに、すらっとしていてどこか高級な壺みたいな雰囲気が好きでした。
そして何より軽いのが魅力でした。2.5kg。軽すぎて買ってすぐに振り回したら飛んでいって底を傷つけました。MAN WITH A MISSIONのボーカルも同じのを使っていた時期があって、自分のセンスは間違ってなかったと思ったのもいい思い出です。

とにかく好きな曲をたくさんコピーして、歌うのが楽しくて学校の時間以外はずっと弾いていました。自分はプロになるんだと本気で思っていましたね。近所のおばさんには「上手になったねぇ」なんて言われて舞い上がっていましたが、今思うと音がうるさいって意味だったんじゃないかと思うくらいアンプから爆音で鳴らしていましたね。
スタジオに入るお金はなかったから、自転車漕いで機材のある友達の家に行ってはBUMP OF CHICKENになったつもりで大声で歌った日々でした。
友達と喧嘩した日も、雨の日も晴れの日も、受験に失敗した日も、勉強に明け暮れた日も、テレビを見る時も漫画を見る時もいつも太ももの上にはギターがありました。上京してからも新しいギターを買う気になれず、気づいたら日焼けしてオフホワイトになったボディを見ては愛着が湧いて、一生使ってやると意気込んでは弾いていました。

だけど僕はミュージシャンにはなれず、全然違うことをしています。
ずっと太ももの上にあったギターはいつしかスタンドの上にある時間が増えて、部屋のインテリアになっている姿に寂しさを覚えるようになったあたりで手放したくなりました。でも、おそらく何よりも誰よりも同じ時間を過ごしたもので捨てることができない。

その日は急に訪れました。引越しをする時に友人に譲ろうと思ったのです。売ってどこの誰かもわからない人に使われるのは嫌だし、廃棄するのはもっと嫌だ。そんな時に出会った友人に聞いてみました。

預かりますよ。

どういう意図だったのかは分かりません。譲ると言った僕に対して友人は、「預かる」と言うのです。ただ、僕はそれが嬉しくて、やっぱりこの人に譲るって決めて良かったと思ったのです。

きっと僕はまたバンドがやりたいんだと思います。そうなった時にこのギターがないことを悔やむような気がして、そんなことを見透かされているような気がしました。

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