ウメ子ちゃんの物語(事件) 親の財布からお金を盗む <2>

<1>からのつづきです。


時計をみると、深夜0時をまわっていました。

マツお母さんとタケお父さんは、とにかく冷静に話をしようということで決めました。

寝室に行って、「ウメ子、ウメ子!」と寝ているウメ子ちゃんを揺すったのですが、ウメ子ちゃんが起きないので、タケお父さんが抱えてリビングまで連れていきました。

ウメ子ちゃんをリビングに座らせて、タケお父さんが「ウメ子、話があるんだよ。お父さんのお金がなくなってたでしょ」と言ってる途中から、ウメ子ちゃんは「いやだぁ」と言って、立ち上がろうとしました。

もう一度ウメ子ちゃんを座らせました。

マツお母さん「お父さんのお金がね、どうしても見つからなかったから、ウメ子の引き出しも開けちゃったの。そしたら、お金があったんだよ」と言って、マツお母さんは引き出しから小銭入れを出して、中を開けてお札を取り出して見せました。

ウメ子ちゃんは「ああ」と言いました。

タケお父さん「お父さんはね、お札をこんな風に折ったりしないんだよ。これはウメ子がとったの?」

ウメ子ちゃん「ウメ子はとってない!」

マツお母さん「ウメ子はとってないんだね」

タケお父さん「じゃぁ、誰がやったんだろう。お友だちとか?」

ウメ子ちゃんは「知らない。もぉやだ、寝たい。寝たいよぉぉ」と言って、泣き出しました。

マツお母さんは「寝たいって言ってるよ。一旦寝てから、朝になって話し合ったらダメなの?」と言うと、タケお父さんは怒った顔で首を横に振りました。

タケお父さん「ウメ子、このお金はどうしたの?」

ウメ子ちゃん「あのね…、千円は、落ちてたのを、拾ったの」

マツお母さん「落ちてたのを拾ったんだ。どこに落ちてたの?」

ウメ子ちゃん「財布の横にね、落ちてたのを、拾ったのぉ」

タケお父さん「はぁ?落ちてるわけないでしょ!」

マツお母さん「待って。千円札は、財布の横に落ちてたのを拾ったんだよね。じゃぁ、1万円札は?」

ウメ子ちゃん「知らない。ウメ子はとってない。もぉ、寝たいよぉ・・。のどが、のどが、苦しいぃ・・」

マツお母さんはコップに水を入れて、ウメ子ちゃんに渡しました。

ウメ子ちゃんは泣きながらお水を飲みました。

マツお母さんは「やっぱり、話すのは朝にしたら?」と言いました。

タケお父さんはまた首を横に振って、(バカッ!)と口パクで言いました。

タケお父さん「ウメ子、1万円はどうしたのか言ったら寝てもいいよ。ウメ子がとったんでしょ?」

ウメ子ちゃん「・・あのねぇ、お友だちがね、1万円とか2万円とか財布に入れて持ってるのぉ。それ見たらねぇ、ウメ子も欲しくなっちゃったのぉ。でも、お父さんの財布から、お金をとるのはいけないって、ウメ子は分かってたのぉ。いけないことだって、わかってたの。でも、財布から、1万円が出てて、それを持ったらね、なんか・・、そのまま、持っちゃったのぉ・・」

マツお母さんも横でぼろぼろと泣いてしまいました。

マツお母さん「ウメ子、ウメ子のお金はね、お年玉とかたくさん通帳に貯めてるでしょ?だから、お金が欲しかったら、引き出して使うことができるんだよ」

ウメ子ちゃん「それも、知ってたの。でも、でもね、1万円札がおうちになかったら、絶対にとらなかったよ。うわぁぁん」

タケお父さん「じゃぁ、これもウメ子がとったんだね」

ウメ子ちゃん「とったんじゃないの。財布からね、出てたからね、抜いたの。でもね、ウメ子は泥棒みたいに、とったんじゃないんだよ。ウメ子はお金をそんなに使わないんだよ。お金もね、ここにあるって忘れてたの。覚えてたら、お母さんにもプレゼント買ってあげるでしょ?1万円札を持ってみたかったんだよぉ」

タケお父さん「ウメ子、ウメ子のお小遣いが今300円でしょ。これ、少ないんじゃないかなって、お父さんは思ってる。ウメ子にはもうちょっとあげてもいいんじゃないかなって思ってるんだよ。いくらくらい使うかな。ウメ子がお父さんの財布からお金をとらなくていいように考えよう?」

ウメ子ちゃん「ウメ子はね、300円が好きなの。そりゃ、いっぱいもらえる方が嬉しいに決まってるでしょ?でもね、ウメ子は300円が好きなんだよ。でも、それは、お父さんとお母さんが決めて?のどが、のどが痛いぃぃ・・・」

マツお母さんがハンカチを渡すと、ウメ子ちゃんは鼻水をふいてから、少し水を飲みました。

ウメ子ちゃん「もう、いい?」

タケお父さん「まだだよ」

ウメ子ちゃん「うわぁぁぁぁぁん!寝たいよぉぉ」

ウメ子ちゃんはマツお母さんの膝の上で泣き崩れました。

タケお父さん「もうお父さんの財布からお金をとらないこと、わかった?あとね、お店のものも絶対に盗んだりしたらダメ。欲しいものがあったら、お父さんとお母さんに相談してくれたらいいから」

ウメ子ちゃん「わかった。もうぬすんだりしない。ごめんなさい。今度ぬすんだら、もうウメ子と一緒に暮らさなくてもいいからぁ・・・。だからもう許してぇ・・」

ウメ子ちゃんのおしりから「プゥッ」とおならがでました。

それで、3人とも笑ってしまいました。

マツお母さん「もう、明日の朝話そう。ウメ子、寝ておいで」

ウメ子ちゃんはだだだっと歩いて寝室に行ってしまいました。

リビングにタケお父さんとマツお母さんが残りました。

タケお父さん「はぁ・・・。人間って嘘をつくんだな」

マツお母さん「そりゃ、嘘つくでしょ」

タケお父さん「ウメ子、最初、知らないって言ったよな。とってないって。俺の読みが甘かったんだろうけど、すぐに謝るのかと思ってた・・。だって、ここに証拠のお金があるんだから。完落ちする前に、嘘の中に少しずつ本当のことが混じってくるんだよな。でもまだ嘘が残っているよね。
っていうか、最初に約束したじゃん!俺とマツちゃんは同じ立場でいようって。そうじゃないとウメ子に逃げ道を与えちゃうでしょ。なのに、なんで、マツちゃんがウメ子の味方みたいになって、俺だけ怒ってるみたいになってるんだよ!」

マツお母さん「いや、だって。眠たいって言ってるんだもん。明日でもいいじゃんって思っちゃって・・」

タケお父さん「朝じゃ、絶対無理だろ。逃げ道がありすぎるんだから。ご飯食べるとか、学校に行く準備があるとかで、いっくらでも言い訳ができるんだから。それに途中でやめたら、布団の中で言い訳を考えられるじゃん。そんなんでお互い寝れるわけないでしょ」

マツお母さん「そうかー・・。私は学校休んでもいいかぐらいに思ってたんだけどね」

タケお父さん「俺、ウメ子がお金とったの、Rちゃんが関係してるんじゃないかと思うんだよ」

実は、マツお母さんが開けたウメ子ちゃんの引き出しの中には、ウメ子ちゃんが最近遊ぶようになったというRちゃんからのお手紙が置いてあったのです。

このお手紙に関しては、数日前の物語が関係しています。

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10月8日

ウメ子ちゃんがいつもより30分以上遅くなって帰宅しました。

マツお母さんが「おかえり~」と言うと、ウメ子ちゃんは「あのね、ハンカチ入れ、落としちゃったの。それで、いっぱい探したんだけど、どうしても見つからなかったの。だから先生にも言ってきた。明日も探してみる」と言いました。

ハンカチ入れというのは、スカートやズボンのウエストにクリップでとめる移動ポケットのことです。

この移動ポケットは、春休みに帰省したときにおばあちゃんに買ってもらったもので、マツお母さんは(あぁ、大事にしてるんだなぁ)って思っていました。

10月9日

ウメ子ちゃんが「ハンカチ入れ、見つかったよ~。職員室に届いてた」と言って、帰ってきました。

「あぁ、よかった。ここにRちゃんとの『遊びの計画』の紙が入ってたんだよね~。あぁ、なくならなくてよかった!」

ウメ子ちゃんは、こそこそと自分の引き出しに何かを入れて、

「お母さん、ここ、絶対に見ないでね!」と言ったのでした。

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そして、その手紙が『遊びの計画』が書かれた紙だったのです。


<3>へつづく。


「子育ち」という育児方法をどんな親でも使える形で表現したいと思っています(^_^)