ウメ子ちゃんの物語(事件) 親の財布からお金を盗む <3>
<2>からのつづきです。
マツお母さんはウメ子ちゃんの引き出しから『遊ぶ計画』と書かれた手紙を取り出しました。
ウメ子ちゃんが見ないでと言っていたのだから、見てはいけないものだろうけれど、マツお母さんは開けてみてしまいました。
その中に、『持ち物』一覧があり、『お金(1万いじょう)』と書かれていました。
タケお父さん「これさぁ、Rちゃんからお金持ってきてって言われてるって可能性もあるのかなぁ?」
マツお母さん「う~ん、わかんないけど・・。1万とか2万とか持ってる友だちって絶対Rちゃんだと思うんだよね。Rちゃんって、ほんと10月になってから遊ぶようになった子なんだよ。タケくんも一回見たことあるよね?一軒家に住んでるみたいだし、お金持ちなのかな。Rちゃんももしかしたら、親のお金とってるってことも考えられるかな?Rちゃんの親にも話した方がいいかなぁ。明日、運動会で会えたらいいんだけど・・」
タケお父さん「まぁ、話した方がいいかもね」
マツお母さんとタケお父さんはまたお金を計算したりして、少し話し合ってから寝ました。
10月12日(月)
ウメ子ちゃんが6時半に目を覚ましました。
リビングに向かって、「おっそ!」と言いました。
マツお母さんもウメ子ちゃんが起きたことで目を覚まして、リビングに向かいました。
ウメ子ちゃんはリビングのはしっこの机上空間に座っていました。
マツお母さんが「着替えておいで」と言ったら、着替えに行って、戻ってきてからマツお母さんが作ったおにぎりを食べました。
学校の支度ができたので、マツお母さんはタケお父さんを起こしにいきました。
タケお父さんは「全然寝られなかった」と言いました。
ウメ子ちゃんの近くにマツお母さんとタケお父さんが座ると、ウメ子ちゃんはむすっとした顔になりました。
体操座りをしたまま壁にある棚の方を見て、タケお父さんに背中を向けました。
タケお父さんは「ウメ子、お父さんもお母さんも、もう怒ってないよ」と言いました。
ウメ子ちゃんは何も言いませんでした。
タケお父さん「1万円持っているお友だちって誰なの?」
ウメ子ちゃん「・・・っ」
マツお母さん「え?言いたくない?」
ウメ子ちゃん「違うっ!Rちゃん」
マツお母さんとタケお父さんは目を合わせました。
マツお母さん「そうか、Rちゃんなんだね。Rちゃんが1万円持ってるの見て、ウメ子も持ちたくなっちゃったんだよね」
ウメ子ちゃんは頷きました。
タケお父さん「今日、運動会だね。お父さんもお母さんも見に行くからね」
マツお母さん「ほら、もう8時だ。学校に行かなくちゃね。後で行くからね」
ウメ子ちゃんは学校に登校して行きました。
マツお母さんとタケお父さんはツル美ちゃんを連れて学校に向かいながら、昨夜のことを話しました。
タケお父さん「それにしてもさ、マツちゃん、ウメ子が寝に行った後、『やっぱりウメ子はいい子だった』って言ってたよね。俺、ゾッとしたよ」
マツお母さん「え?そんなこと言ってた?覚えてないんだけど・・」
タケお父さん「言ってた。絶対に『やっぱりウメ子はいい子だった』って言った。ゾッとしたもん。マツちゃんはさ、『子育ち』してるからウメ子はいい子だって思ってるのかもしれないけど、そんなことはないんだよ。ウメ子は悪い子なんだよ。普通の悪い子なんだよ。子どもなんてみんな悪いもんなんだよ」
マツお母さん「う~ん、でも、なんか正直だなぁって思ってさ。嘘はついてたけど。1万円持ってみたかったて言ってたじゃん」
タケお父さん「は?そんなのあるわけないでしょ」
マツお母さん「え~~?!そ、そうなの?そこも嘘?」
タケお父さん「持ってるだけなわけないじゃん。使うでしょ!現に、5千円札がなくなってるんだから。マツちゃん言ってたじゃん。ウメ子がスーパーの精算機でなぜか千円札が出てくることがあるって言ってたって。俺、ピーーンときたもん。あ、5千円使って、千円札のおつりが出たんだなって」
マツお母さん「そうかぁ。たまたま2万3千円は返ってきたけど、Rちゃんと遊ぶXデーまでこのままだったら、1万円札は消えていたかもしれないんだね。ゲームとかしてさ」
タケお父さん「そりゃそうだよ。まぁでも、1万円なんてそうそう使えないけどね」
そうこう話している間に、運動会の時間が迫ってきていたので、慌ててツル美ちゃんを連れて小学校に向かいました。
運動会は、コロナ感染防止のため、あっという間に終わりました。
タケお父さんは運動会を見てから仕事に向かいました。
小学校ではRちゃんのお母さんを見つけることはできませんでした。
この日の午後。
学校から帰宅したウメ子ちゃんは、まったく普段通りでした。
普通に笑って話もするし、お友だちが来て、一緒に近所の公園に遊びに行っていました。
マツお母さんもツル美ちゃんと一緒に公園に行ったのですが、ウメ子ちゃんがお友だちとブランコや遊具で遊んでいました。
帰宅して夕飯を食べ、本の読み聞かせ(最近は『チム・ラビットのおともだち』を読んでいます)をしてから、お風呂に入りました。
タケお父さんが早めに帰ってきて、運動会の話もして、お金の話題には一切触れないまま、眠りました。
10月13日(火)
この日の朝のウメ子ちゃんはちょっとイライラした感じでした。
「おにぎりにして」
「もしかして白いおにぎり?!」
「中に何か入れてよね」
「はぁ?梅干ししかないの?」
「海苔まいてないじゃん!」
でも、自分で海苔を巻いて、おにぎり食べてました。
8時過ぎてから、「忘れ物あるかもしれない!けど、いいや。行ってきます」と言って、ダッシュで学校に登校していきました。
タケお父さんが起きてきました。
タケお父さん「ウメ子、どう?」
マツお母さん「朝はなんかイライラしてたけど、昨日とかびっくりするくらいに普通だったよ」
タケお父さん「まぁ、あれはウメ子なりに俺たちに気をつかっているのかもね。お父さんとお母さんを心配させないように」
マツお母さん「ウメ子らしいんだけどね。それにしても、昨日はSちゃんとふたりで公園で遊んでたんだけど、ブランコしたりして楽しそうでさ、こういう日ばっかりだったらいいのにって、思ってしまったわ」
タケお父さん「そうじゃないでしょ。こういう日もあれば、お友だちと買い食いして社交する日もあるんだよ」
マツお母さん「うん、わかってるんだよ。でもさ、ウメ子の同級生ががペットボトルのカルピスウォーターとかコーラとか飲みながら、コンビニのお菓子食べて、ゲームしてるの見てると、あ~、なるべく遅くあって欲しいなぁって思っちゃうんだよね・・」
タケお父さん「それはマツちゃんの期待でしょ。期待しちゃダメだよね」
マツお母さん「いや、わかってるんだけどね。それに、私が用意したおやつとか飲み物は嫌がるんだから。だから、ウメ子に好きなのを選んでもらうしかないね」
タケお父さん「おこづかい300円じゃどうしても無理なんだよ」
マツお母さん「必要なものと欲しいものってあるでしょ。ウメ子はね、学校のノートとかも自分で買ってるんだよ」
タケお父さん「えっ?!それは買ってあげてよ!300円の中から、学校で使うものまで買わせてたの?」
マツお母さん「やっぱり私、『ひどいお母さん』かな?いや、例えば、下敷きでもノートでもさ、ウメ子が好きなのがあるわけじゃん。色とか柄とか。私がこれにしたら?っていうのじゃなくて、ウメ子は自分で好きなのを選ぶんだよね。赤色鉛筆でもさ、家にあるのに、『この色は好きじゃない』って、違う赤色鉛筆を買ったりするんだよ。一緒に買いに行くわけじゃないし」
タケお父さん「う~ん。それじゃ、それは、欲しいもの、だね」
マツお母さん「うん。で、どうして今までやってこれたんだろうって、考えてみたんだけどさ、今まではお年玉とか春休みとかに帰省したりして、親戚からそれなりの金額のおこづかいをもらってたんだよね。だから、基本的にウメ子は数千円くらい持ってたんだよ。だからコーヒー豆だって買えるでしょ?それに月々300円プラスされてる形だったんだよ。でも、今年は夏に帰省しなかったじゃん?だから、9月に所持金がゼロになっちゃったんだよね・・。
だって、そうそう、そういえば、9月26日に一緒に商店街の文房具屋さんに行ったじゃん。そのときに、ウメ子がすごく欲しがってたペンがあって、買おうとしてレジに持って行ったんだけど、お金が足りなくてやめてたんだよ。あのときには、財布の中身は350円以下になってたんだよ」
タケお父さん「ウメ子はおこづかい帳つけてたんじゃないの?」
マツお母さん「それが、最近さぼってたんだよね・・。私がみるの面倒くさくなっちゃって」
タケお父さん「えぇ~。でも、おこづかい帳もつけなくていいのかもね。自由にできないじゃん。悪いこともできないじゃん。俺、つけたことないし」
マツお母さん「私もつけたことなかった(笑)う~ん、でも、記録していくのは悪くないと思うんだよね。まぁ、つづけてみようと思う。で、見て」
マツお母さんはウメ子ちゃんの引き出しから、まだ包装されたままのペンを出しました。
最初に引き出しを開けたときには気がつかなかったのですが、奥の方に入っていました。
マツお母さん「これ、ウメ子がすごく欲しがってて、買えなかった『スパイペン』なんだよ。絶対にタケくんのお金で買ってるんだよ。盗んでるかどうかはわかんないけど。私ね、ウメ子くらいのときに、スーパーで万引きしたのが、『モコリンペン』だったんだよ」
タケお父さん「同じじゃん(笑)よし!決めた!ウメ子のおこづかいは3千円にする!で、今日、差額の2千7百円をウメ子に渡す。今日も早く帰ってくるから。ウメ子には俺から話す。マツちゃんじゃ絶対に間違える」
マツお母さん「わかった・・」
(つづく)
「子育ち」という育児方法をどんな親でも使える形で表現したいと思っています(^_^)