ウメ子ちゃんの物語(事件) 親の財布からお金を盗む <4>

<3>からのつづきです。


マツお母さんは封筒に2千7百円を入れて用意しておきました。

ウメ子ちゃんが16時過ぎに学校から帰宅しました。

ウメ子ちゃん「お母さん、ただいまぁ!今日、5時15分まで遊んでもいい?」

マツお母さん「うん、いいけど」

ウメ子ちゃん「お母さん、ウメ子の財布は?小銭入れ!」

マツお母さん「えっ?あれは、お父さんのお金でしょ?」

ウメ子ちゃんは、むっとして「ウメ子のお金だよ」と言いました。

マツお母さんは小銭入れを持ってきました。

「あのね、お父さんのお金、まだ4千円が見つかってないんだよ。ウメ子はお金持ってなかったじゃん。お父さんのお金でしょ?」

ウメ子ちゃん「ウメ子が拾ったお金だもん。お父さんのお金は使ってない。ウメ子は知らない」

マツお母さん「お父さんのお金は使ってないんだね?」

ウメ子ちゃんは、「もういいでしょっ」と言って、マツお母さんが手に持っていた小銭入れをパッと取って、玄関に走っていきました。

玄関の外にはRちゃんが自転車に乗って待っていました。

マツお母さんは急いで外に出て「Rちゃん、こんにちは!あ、ちょっと待ってて」と言いました。

玄関でメモ帳に携帯の番号を書いていたら、ウメ子ちゃんが横にやってきて「ちょっとっ!何書くつもり?『2万円はありません』とか書かないでよ?」と怒ったように小声で言いました。

マツお母さん「Rちゃんのお母さんに、お母さんの連絡先を伝えようと思って・・」

ウメ子ちゃん「ならいいけど・・」

マツお母さん「Rちゃん、これウメ子のお母さんの連絡先なんだけど、家に帰ったらRちゃんのお母さんに渡してくれる?」

Rちゃんは頷いて、自転車のカゴの中の手提げ袋の中に、マツお母さんの渡したメモを入れました。

ウメ子ちゃんも自転車に乗って、一緒に出かけていきました。

ウメ子ちゃんは17時半頃に帰ってきました。

「ただいま~!あぁ、楽しかった!算数のノートなくなりそうだったから買っといたんだ~。あと、今日は○○公園に行ったよ。うちのクラスの男子がめっちゃいっぱいいたわ。TくんとTくん(※ツル美ちゃんの公園友だち)のお母さんもいたから挨拶したよ」

マツお母さん「そうなんだ。あ、お父さんがね、ウメ子のおこづかい上げるって言ってたよ」

ウメ子ちゃん「ラッキー♪・・で、いくらになるの?」

マツお母さん「お父さんが帰ってきてからにしよう。先にごはん食べよう」

夕飯を食べて、本を読んで、お風呂に入ってわらべうたを歌ったりしていたら、タケお父さんが帰ってきました。

リビングに座っていたタケお父さんが「ウメ子、ウメ子におこづかいをもっとあげようと思ってるんだ。お母さんが用意してるから」と言いました。

マツお母さんは用意していた封筒をウメ子ちゃんに渡しました。

タケお父さん「開けてごらん」

ウメ子ちゃん「ええと・・・2千7百円!えっ?!こんなにもらってもいいの?!」

タケお父さん「今月、ウメ子に300円渡してるでしょ。合わせたらいくらになる?」

ウメ子ちゃんは「・・・3千円だ!わかった、10倍ってことだね!え~!嬉しい!ウメ子、早く4年生になって400円もらいたいなぁってずっと思ってたんだよ」と言って、何度か一人で頷いていました。

タケお父さん「ウメ子、聞いて。このおこづかいでね、ウメ子は自分のものを買うんだよ。でも、必要なものはお父さんやお母さんが買ってあげるから」

ウメ子ちゃん「あぁ、靴とかね!」

タケお父さん「そうなんだけど、例えば、今使ってる筆箱が壊れたとするじゃん。お店に行ったら、100円の物から1万円の物まで売ってるとするでしょ」

ウメ子ちゃん「えぇ~~?!100円の筆箱なんてあるかなぁ?」

タケお父さん「ウメ子、まずお父さんの話を聞いて。お父さんは500円の物で十分だと思うとするじゃん」

ウメ子ちゃん「ウメ子も500円くらいのでいいと思うと思うな~」

タケお父さん「待って、お父さんの話をまず聞いて。でも、ウメ子が800円の『すみっコ』の筆箱が欲しいとするじゃん」

ウメ子ちゃん「えぇ~~?!ウメ子、『すみっコ』の筆箱は選ばないなぁ!」

タケお父さん「お父さんの話を聞いてってば!」

ウメ子ちゃん「あぁ、はい。ごめんなさい」

タケお父さん「で、そのときに、ウメ子が300円出して、お父さんが500円出すって使い方もできるってことなんだよ」

ウメ子ちゃん「うん、わかった」

タケお父さん「それから、欲しいものがあって、お金が足りなくなったらお父さんとお母さんに相談したらいいからね」

ウメ子ちゃん「うん!」

マツお母さん「あとね、ウメ子のおこづかいが3千円だってこと、お友だちには言わない方がいいとお母さんは思うんだ」

タケお父さん「え?それは別にいいんじゃない?」

マツお母さん「おこづかいもらっていない子もウメ子のまわりにいるじゃん?」

ウメ子ちゃん「うん、いるよ!」

マツお母さん「おこづかいはないんだけど、結構なんでも親に買ってもらってたりするじゃん。ウメ子は自分のものを自分で買ったりするから3千円ってことだね。みんな、家によって色々違うんだけどね。何か欲しいものがあるときに、お父さんの『メルカリ』を利用するってこともできるからね」

ウメ子ちゃん「うん。ウメ子、大事につかうよ。千円札はとっておくのも好きだから、貯金箱に入れておく。小銭だけ財布に入れておこうっと!」

マツお母さん「好きにやってみたらいいよ」

その後のウメ子ちゃんはず~~っとしゃべりっぱなしで、ツル美ちゃんとも布をかぶったりして遊んで、布団に入ってからもずっとマツお母さんに話しかけていました。

そして、「あぁ、もう話すのやめようっと」と言ってから眠りにつきました。

タケお父さん「ウメ子、そう鬱のそう状態みたいになってたね・・」

マツお母さん「うん。めっちゃしゃべってたね・・。でもさ、よく考えたら、もともとはあんなだったんだよ。うるさいくらいに『お母さん!お母さん!』って、よくしゃべる子だったんだよ。それが最近あまり話さなくなってたんだなって、今日気づいたわ」

タケお父さん「ふ~ん」

マツお母さん「あ、そうそう。今日もRちゃんと遊びに行ったんだよね。小銭入れ持って行くって言うから『お父さんのお金でしょ?』って言ったら、ウメ子は『拾ったお金だ』って言ってたよ」

タケお父さん「あ、そこはつめなかったんだ」

マツお母さん「うん。でも、ウメ子のお金じゃないと思うんだよね」

タケお父さん「まぁ、でもさ、もう証拠はないんだから。拾ったとか、買ったんじゃなくてもらったんだとか言って、どうやったって言い逃れができるんだから、そこをつめても仕方ないよね。これからのお金の使い方をどうするかってことを考えていかないと」

マツお母さんは、こっそりウメ子ちゃんの小銭入れを持ってきて、中をあけて見ました。「あ・・。小銭が千円以上入ってたのに、すごく減ってる」

タケお父さん「200円はあるね」

マツお母さん「1日に800円使ってたらさ、おこづかい3000円でも足りなくなっちゃうね。まぁ、毎日じゃないんだろうけどさ。でも、ウメ子は習い事何にもしてないし、携帯もスマホも持ってないんだから、周りの同級生に比べたら全然お金がかかってないんだよ。だから、いいのかもしれないね。というか、もっとお金をかけてあげてもいいのかもしれないね。なんか寂しいんだけど。あぁ、『あなたは物語が豊かで幸せね』ってだけの時代は終わりつつあるんだなぁ。もうさ、ツル美ちゃんが可愛くて仕方ないわけよ」

タケお父さん「あぁ、可愛いよね」

マツお母さん「『子育ち』の前半は、夢みたいな時間だったなぁ」

タケお父さん「もうこれからはさ、ひとつひとつウメ子に何かあるたびにベストを尽くしていくしかないよね」

マツお母さん「そうだね」

(つづく)

「子育ち」という育児方法をどんな親でも使える形で表現したいと思っています(^_^)