「あの頃」を思い出す。
小学校から帰ると、ジグソーパズルに精を出した。
またあるときは、歩くクラゲ型のロボットづくりに。
休みの日はナルトの絵を1日中模写していた。
そうして何かに没頭しているあの頃は、他の一切のことを考えていなかった。
だけど、桜が散るのを何度も見送るうちに、視界に入るものが多くなっていった。
進路、部活、塾、人付き合い、恋愛、お金。
…果ては大人になったときの自分。まだ存在しない自分。
「あの頃」に家のお金や夕飯のことを気にしなくてよかったのは、きっと親のおかげなんだろう。
大人になって見えるものが飽和して弾けたときに、急に「あの頃」のことを思い出していた。
なにかに没頭できなくなったのはいつからだろうか?
物事を「やらなくちゃ」としか思えなくなったのはいつから?
自分を大事にしなくなったのは?
「あの頃」のことを思い出す。
あれだけピュアに興味に引っ張られることを、思慮が浅いとは思わない。
むしろ、大人になるとしがらみによって後ろ髪を引っ張られすぎる。
多くの人から高評価をされるような、キレイなストレートヘアを引きちぎってでも前に進んだほうがいい。
バサバサのウルフヘアで己が道を邁進していた、「あの頃」を思い出す。
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