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工藝とは趣味を含んだ実用品

山本鼎 著『世界工芸美術物語』(昭和57年)を入手しました。
装丁からして、この本自体が工芸品のようで愛でたくなってしまいます。

若い読者向けの優しい口調。工芸が何なのかわからない私にはうってつけです。少々昔に書かれたものですが読んでみましょう。
旧仮名遣いなど表記できないものは変換して引用してみます。

「工藝とはどんなものか」という章の冒頭。

工藝とは趣味を含んだ實用品のことです。

p.3

趣味を含む
というのがイメージしやすい言葉遣いで嬉しくなりました。
さらに、

びるでぃんぐをも品物扱ひにするくらゐの意気組みでかかるほうがよろしい。

p.3

とあります。
建築も何でも、身の回りは工芸品だらけ。
意気組みでかかる、というのが気に入りました。
この前のめり感、嫌いじゃない。むしろ好き。

章の終わりは以下の文で締めくくられます。

諸君は学校で植物のことを教はった。そこで植物の世界の廣大無邊なことを悟つたでせう。櫻、薔薇、牡丹、百合等々の所謂鑑賞植物のみが植物ではないでせう。工藝についてもまた同様の悟りをもつて戴きたいのです。

p.8

なるほどなと感じました。
植物に例えると、あれもこれも工芸、とする思想にも違和感がありません。
観賞に耐える伝統工芸だけでなく、趣味など周辺の諸々も工芸である。
と、かなり広くとらえる考え方を紹介しています。

引き続き、前のめり気味に読み進めて参ります。

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