僕の持っていないもの

子供達を見るたびに思う。彼は彼女はなぜあんなに楽しそうなのかと。僕には見つけられない宝物をいとも簡単に道端から見つけてくるまなざしを。

母親達を見るたびに思う。人類の仕事の中で最も重要なことを成し遂げた人々は、なぜあんなにも自信に満ちているのかと。生命を生み出すという営みの畏れ多さを。

父親達を見るたびに思う。命を懸けた闘いに、なぜ毎日向かえるのかと。しぼんでいくこの国で、背骨尽きるまで立ち続ける偉大さを。

老人達を見るたびに思う。人生を走り終えようとする時になぜ感謝できるのかと。この世を怨まず、なぜ穏やかに眠れるのかと。

僕について思う。僕がこれらのものを手にすることは叶わないだろうと。彼らの欲しがらないものばかりを手にしていくのだろう。それでも生きていくしかないのだろう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?