インハウスデザイナーが成果を求めないでどうする
この記事は 「Ateam Group Manager & Specialist Advent Calendar 2020」
20日目の記事です。
今回は、デザインで成果を出す際に悩んだこと + 成果を出すために行なっていることを書いていきたいと思います。
デザインの成果 = 数字なのか
「デザインの良し悪しは数字だけでは判断できない」
インハウスデザイナーの間では、こういった議題がしばしば上がってくる。自分もその一人だ。
この「成果 = 数字というモノサシ感」が好きじゃない。
私もデザインは数字で示せない感覚的なものを重視したい考えであったため、数字で合理的に測るべきじゃないと思っていた。
ただ、自身の美的感覚に反するデザインで数字成果が出たとき、たとえ美しと思えないものでも利益優先で採用されてしまうケースが多い。この事業数字優先の中、デザイナーとしてアウトプットの質を担保する役割は、どう向き合えば良いのだろうか。
納得感のない改修がつづくサイトを見ては、モチベーションが下がり→ ただ言われるがままのデザインをつくる→ 結果 成果を考えることも少なくなる。
これではいけない。
何のためのデザインか
・デザインは何のためにあるのか?
・自分は何のためにここにいるのか?
デザインが「どうユーザーに届いたか?」を知れるから、
知った上でよりサービスを成長させたいと思ったから、インハウスデザイナーになったのではないのか。
思うに、デザイナーが感じる美しさと、ユーザーが重視している/見ているポイントが異なっている。要は客観視できていない。
私はよくユーザーのためにと言いながら、ユーザーからの数字評価に対するギャップに向き合うのがイヤでだったのだ。この数字に向き合わないことは、デザインでサービスを成長させるという存在価値を自分で否定していることになる。
また畳み掛けるようだが、事業数字優先で、アウトプットの質を担保できないのは、単に数字を活用した上で「魅せるデザイン」を作れていない私のスキルの問題だった。
何をすれば成果インパクトがあるか
一向に数字に変化がない中、ふと思ったのが「ユーザーにとって」インパクトが小さいことをやっているのではないか?
デザインは、何をどう伝えるか(WHAT HOW)
今まで表層にあるビジュアルをどうにかしようと、HOWばかり見ていた私は、この「何を」がポッカリ抜けていたのである。このHOWの出どころであるWHATに触れないと、ユーザーの心や行動は変わらず、成果インパクトもないだろうと気づいた。
インハウスデザイナーが成果を求めるには、このコアな部分を掘り下げて、仮説検証していく必要がある。
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わたしなりの進め方
※ここからは少しテクニカルな制作フローついて書こうと思います。
ユーザーにとって成果インパクト(ニーズ)が大きいのは、表層を支えている「目的からの情報構造」にあるとして、その部分を具体的にどう進めていくと良いかを考えてみた。
以下原則を用いて、
・ジェームズ ギャレットのUX5段階モデル
・マスクウェル サックハイムの3原則
・デザインの4原則
・UIセオリーの活用
表層に出る前の"情報構造"をつくることにする。この構造がユーザーにインパクトのある「何を」伝えるかのコアになる。
今回の記事では、インハウスデザイナーが成果を求める際に重要な最初の「構造化」を中心に書いてみます。
○ 情報の構造化(戦略→ 構造)
・1-1 目的の明確化
・1-2 要件設定
・1-3 コンテンツ
・サックハイムの3原則
↑ 本記事ではここまで ↑
○ レイアウト(骨格づくり)
・2-1 デザインの4原則
・2-2 UIセオリー(学習効果)の利用
○ ビジュアライズ(表層)
・3-1 トーンマナー設定
・3-2 要素分解
・3-3 効果表現
情報の構造化
戦略→ 構造への落とし込み
ここでは目的設定と、目的達成に必要な情報を組み立てる。デザインをやる上でもっとも重要な部分だ。
この流れは、ジェームズ ギャレットのUX5段階モデルを参考に、かなり自己流が入っているので参考程度に見ていただければと思います。
1-1. 目的の明確化
目的の抽象度が高いと、この先どんな情報を伝えるべきか?何を重視すべきか?の方向性やズレが発生してしまう。ユーザーのニーズや課題をしっかり考え、5W1Hなどを使って、以下A→ Bのように目的を具体化する。
A:FX初心者の女性向けのサイトを作る
↓
B:副業したいFX初心者の女性(主婦)向けに、気軽にFXを試してもらうサイトを作る
1-2. 要件設定
何が伝わっていたら、目的を達成していると言えるか?具体化した目的からコアになりそうな部分を抜きだし、要件を考えます。
1. 副業したいFX初心者の女性(主婦)
・全く知識がなく未経験だけど、私でも稼げると思えること
2. 初心者(主婦)向け
・分からないことを学習コストを抑え、感覚的に知る/学ぶことができる
3. 気軽にためす
・FXの安全さ / 平易さを伝え、心理的ハードルを下げる
─── まとめると ────
○ 目的
副業したいFX初心者の女性(主婦)向けに、気軽にFXを試してもらうサイトを作る
↓
○ 要件
・全く知識がなく未経験だけど、私でも稼げると思える
・分からないことを学習コストを抑え、感覚的に知る/学ぶことができる
・FXの安全さ / 平易さを伝え、心理的ハードルを下げる
1-3. コンテンツづくり
先ほど1-2であげた要件に紐づくコンテンツをつくる。ターゲットにヒアリングしながら何があると良いか考えたり、他サービスのコンテンツを参考にする。加えて、以下の「3つのNOT」を強く意識する。
3つのNOT
90年に活躍したマーケターのマクスウェル サックハイムが提唱した3原則を利用する。
ユーザーはあなたの広告を
・NOT READ:見ない(読まない)
・NOT RELIABLE:信じない
・NOT ACTION:行動しない
この3つのネガティブコンディションを前提として考え、それらを乗り超える工夫を盛り込むこと。(例:信じない→ 圧倒的な実績と証明をのせる)
私も過去の体験から、ユーザーは全く私たちのデザインに興味がない、もはやその辺に落ちている無数の石ころレベルだと思っている。だから希望的観測はすてて、客観視点に切り替えることが大切である。
以下一例
1. 私でも稼げると思えること
・先駆者の実績を3つ以上のせる
・どうやって稼げるようになったのかのストーリーをのせる
・講師の実績をのせる
・初心者専用のFX成功カリキュラムがある
2. 感覚的に学べる
・いつでも閲覧できるHOWTO動画を用意する
・チュートリアルをつくる
3. 心理的ハードルを下げる
・かわいいイラストを使ったキャラクターつくり親しみを与える
・申し込みはカンタン3ステップにする
・LINEでの相談窓口をつくる
ここまできたら、目的 / 要件 / コンテンツとターゲットニーズにあっているか?を誰かチェックしてもらうと良いかと思います。以下のようにツリー状にすると構造が見えるのでオススメです。
以上です。
さいごに
今回はデザイナーが成果を出すために、まずは表層のHOW(どうやって)ではなく「WHAT(何を)」伝えるかが、ユーザーにとって大事だという話でした。
レイアウト・ビジュアライズについては、また次回の記事で触れていきたいと思います
私が勤めている会社では、みんなが経営について考える文化があります。そこには事業KPI達成といったビジネスの視点は必ず含まれてくる。
私たちのデザインが「どうビジネスの成長に関係しているか」を何らかの指標で示す責任がある。逆に成果を求めないのは、私たちがデザインの価値を低くみていることになる。
デザイナーが一番自分たちのデザインの価値を信じて、ユーザー/サービスへの成果を求めていきましょう。
この記事は 「Ateam Group Manager & Specialist Advent Calendar 2020」
20日目の記事になります。まだまだAdvent Calendarは続きますので、引き続きお楽しみください。
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