邂逅
「おはよう幸太。昨日はよく眠れたんか?」
ばあちゃんが作ってくれた味噌汁をすすりながら、俺は首を縦に何度も振った。
「小豆島でゆっくりするのは初めてやろ?ほんんまええところやで。車は自由に使っていいからしばらくは散策でもしたらええよ。
あ、でも、ばあちゃんの宿題も頭の片隅に置いとくんやで。」
「宿題ねえ。昨日考えたけどさっぱりだよ。銀行の稟議書書くのは時間なんて忘れてできるけどね。笑」
「まあ頭で考えているうちは出てけぇへんわ。ヒントとしては、昔からできたこととか、習ってないのにできることやな。まあ時間は腐るほどあるんやし、悩め悩め!青年よ!」
ヒントとばあちゃんは言ったけれど、余計分からなくなってしまった。
親父の期待に応えようと、いろんなことは努力すれば大体できた。けど、やりたくてやってたわけじゃないしなぁ。サッパリ分からない。
とブツブツ独り言を言っていると、玄関が勢いよく開いて明るい声が飛び込んできた。
「おはよう!聡子ばあちゃん!修くんのいとこ来てるんやろ?」
「あぁ、美緒ちゃん。昨日からおるで。幸太、修二の幼なじみの美緒ちゃんや。うちのお茶友達やで。」
「あなたのお祖父さんのお葬式で顔は合わせているから、初めまして、ではないんやけどね。分からんことあったらなんでも聞いてや。」
「あ、ありがとう。よろしくね。」
じいちゃんの葬式にこんな可愛い子いたっけ?親父の実家嫌いさえなければもっと早くから知り合えていたのに。
けれどこれから2ヶ月の田舎暮らし生活に、明るい光が差し込んできたことに間違いないと、少し元気が出た幸太だった。
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主人公がどん底の状態から、自分のやりたいことを見つけていくお話
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