太陽を輝かせてあげられてなかった
「幸太くんが気づいたら妄想しちゃうのって、ほんとホロスコープ通りだよね」
とあどけない表情で美緒ちゃんは言った。
ばあちゃんは、うんうんとうなずいているが、さっきハウスとやらを知った俺にはまだよくわからない。
「幸太とはこの家であったのは数えるほどやけど、いつも本を読んだり絵を書いたりして過ごしとったんよ」
とばあちゃんは懐かしそうに言った。
「そういえば昔から親父は本だけはよく買ってくれてたんだよな。俺が銀行に入ったのも小説に憧れてだったしな。」
「小説の世界に憧れて銀行員なる人も珍しいんやない?普通は、安定してるからとかそういう理由が多い気がする」
たしかに、周りの同期は池井戸潤の小説を読んだことのない奴ばかりで、入社直後は驚いてたっけ。
「最近はどんな本読んでるの?」
と聞かれた俺はハッとしてしまった。
「いや、実はここ1年くらい全然本読んでなかったんだ。せっかくニートになって時間ができたのに、スマホばっかりみてた…」
「そっか、じゃあ今から島の図書館連れてってあげるよ!」
え、でも、もう少しホロスコープの話も聞いてみたいんだけど、という俺の心を見透かしたように、ばあちゃんは
「一気に知識を詰め込むもんでもないよ。まずは自分の太陽を満足させてきたらええよ」
と言って、送り出してくれた。
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ばあちゃんの道しるべ
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主人公がどん底の状態から、自分のやりたいことを見つけていくお話
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