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L.T.L. 通信教育講座    【月の満ち欠けを見て、時刻と方角を知る方法】

― 講義を始めるにあたって ―

昔々、渋谷の某アート系専門学校で、2クラス合同の74名を相手に「自己表現とコミュニケーション」と題して、2年間ほど講義をする機会を持たせてもらった。(更に少人数のクラスも、もう2つ受け持った)
その時の一コマで、「月の満ち欠けの様子と時刻と方角の相互関係を、アタマと身体で理解する方法」という演習を行ったのだった。

学生たちに、ロジカルな思考方法を教えるのが、毎回の講義の大きな目的であった。
「覚えること」でなしに、「理解すること」について考えさせるのが、目的であった。
講義を通じて、「俺」という一表現者のパフォーマンスを観せるのが目的であった。
ひいては、たいへん広い意味で、「自分」を表現することにより、他者との「コミュニケーション」をとる方法について教えるのが、その目的であった。
(要するに、何でもアリの内容であり、なによりも、自分自身が楽しむためであったわけだが…。。)

 

発端は、ネットで知り合った、ナゼナゼ少女「るる」嬢との会話であった。

るるは好奇心の旺盛な少女で、あるときチャット中に、こんな質問をしてきたのだった。

「昼間なのに月を見たことがあるの。なぜかしら?」
「このまえ見た半月は、斜めに傾いていたの。それって変じゃない?」

一瞬答えにつまった俺は、月の満ち欠けについて、ほとんど何も知らない自分自身に驚いた。
『宇宙論と量子力学の研究』について研究すること(「研究」の研究だ。本物の科学者じゃないもの。)を趣味とする俺が、そんなこともわからんでどうするか?!

そこで、当時小学5年生であった息子の教科書(月の満ち欠けは小5で習う)を引っ張り出して見てみたのだが、複雑な図とあまりに安易な解説が載っているだけ。時刻や位置などの条件とその時の月の形の組み合わせの数が多すぎて、全てを覚えられるわけもなければ、また全ての状態が網羅されているわけでもナイ!

「覚えることは必ず忘れる。覚えられる量にも限りがある。」しかも「覚えなかったことについては分からない」ということではマズイ。
だから覚えちゃダメなんだ。少しの基本的な事さえ理解すれば、あとは「正しく」考えさえすればオノズと正解が得られるのが数学や物理といった「ロジック」の素敵なところなのだから。
常日頃、息子や学生たちにそういって「理解することの根本」を教えてあげたいと思ってる俺は、この「月の満ち欠け」の様子が、いつ、どっちの方角の、空のどの辺りに、どう関係して見えるのかについて、自分なりに考えてみたのだった。

そうして生まれたこの講義は、最小限の知識だけであとは自分の身体とアタマを使って、お遊戯みたいに、ダンスのようにくるくる廻りながらそれを理解しようという講義である。

(その後、当時小学校5年生だった息子の担任に掛け合って理科の授業時間を1時間ぶんもらい、子供たち相手にもこの講義を行ってみた。もちろん、大成功であったさ。)

 

3つの必要な基本的知識       
この講義を受けるうえで、あらかじめ覚えておかなければいけないことが、たった3つだけある。
それは次の3つだ!

●自分が南を向いたとしたら、
 自分から見て残りの東、西、北の方角はどっちになるか?ってこと。
● 地球は左廻りに(東の方向に)自転している。
 だから月と太陽は東から出て西に沈むように見えるってこと。
●「上弦の月」(月が沈む時、その欠けた側が上側に見える時の月のこと)が、「これから太って行く月」だってこと。


第1回 時刻と太陽との関係

よし、それではさっそく始めよう。まずは、時刻と太陽との関係を身体で理解することから始める。

 

部屋を暗くして、目の前の小さなランプをつけてみよう。眼の高さにある電気スタンドみたいな灯りがいいな。天井の蛍光灯じゃだめだ。
これがお日さまの代わり。

まず、自分が地球だと思ってちょうだい。
いいかい?

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話しをわかりやすくするために、自分は地球の表面しかも真ん中の赤道直下にいると思うといい。ちょっとナナメの位置の日本じゃなくてね。
正確には、地球の赤道上から、真上の太陽を見上げていることになるな。
地面に寝そべって空を見上げていると想像すれば、なおわかりやすいだろう。
しかも、北の方角にアタマの側があるように大の字になって寝そべろう。(本当に床に寝そべっちゃだめ! 立ったままだよ、今はね)
すると足の先の方角は南だ。左手の方向が東、右手は西。 正面には太陽。

その自分の正面に太陽があるってことは、今はちょうどお昼の正午だってことだ。(しかも真上に太陽があるんだから、夏至の日に当たるな。これはどうでもいいけど)

初めに、「覚えなきゃいけないのは3つだけ」と云ったが、お日さまは東から昇るという事実さえ知っていれば、地球がどっちにまわっているかわかるわけだから、覚えるべきことは、これでひとつ減ったよね?


自分は地球の上にいる。だからゆっくり左まわりに回ろう。
左まわりにまわる自分が地球になったつもりで。

両手を横に広げて、東に向かってゆっくりまわる。ゆっくり、左まわりだ。

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時間がたつにつれ、正面にいた太陽は右手の方へ動いてゆく。 横に伸ばした右手の延長上に太陽が来た時、自分は地球の大地に寝そべっているんだから、太陽はその西の地平線に沈んで見えなくなってゆく。 日没だ
っていうことは、今は夕方の6時

さらに左に回転するよ。
ランプの灯り(太陽)を背にするところまで。

太陽は自分の後ろ、つまり地球の反対側だから見えない。 夜だね
しかも太陽は今、真後ろにあるわけで、今は真夜中の12時というわけだ。
目の前には夜空が広がっている(と思え!)。

よーし、さらに回ろう。

横に伸ばした左手(東の地平線のかわり)から太陽が見えてくる。朝だ~
ちょうど今は朝の6時というわけ。

さらに左へ回転すれば、お日さまはどんどん高くなってゆき、ちょうど正面を向いた時がお昼の12時で、これで最初に戻るね。

 

ここまで、どうだい?

●時刻に関してはかなり大雑把(6時間おき)だけれども、地球上の自分のいる所から見た太陽の位置によって、その場所の時刻が決まってくるんだ、ということ。
●そして、それぞれの時刻において太陽は、東と西と南(実際には南じゃなくて空の真上ということだけれどね)のどっちの方角の空の、どれくらいの高さに見えるのか?

このふたつは、これで確認できたよね?

 

まずはここまで。


第2回 月と太陽

じゃ、いよいよ、月の出番だ。

月はその時々で、まんまるの満月になったり、半月になったり細い三日月になったり、いろんな形に見えるね?
何故だろう? これは簡単。身体とアタマを使って、次のようにやってみれば、すぐわかる。

腕を前に伸ばして、大きめのまんまるのボール(白いとなお良し)を手に持つ。
そして、そのままの体勢でぐるぐる廻ってみよう。もちろん、左回りに!

このボールは、もちろんお月さま。
灯りは電気スタンド一個しかないから、ボールのお月さまには、いつも同じ側しか光が当たらない。ちょうど、ボールの電気スタンド側の半分だけが明るく照らされているはずだ。
それを横から見れば、ボールはその片側だけ、灯りの側だけが明るく見える。
光を背にすれば、ボールの明るい側だけが見える。
ぐるぐる回ってみると、その時々で、月の明るい面を、正面や真横から、またナナメやその反対や裏から見ることになって、三日月の形や半月、満月といろいろな形に見えるだろ?

ちなみに、ランプ/ボール/自分の目が一直線になるような位置にボールを持つと、ちょうどボール(月)で(太陽)が隠れる。これが「日食」という現象だね。
反対に、ランプ/自分/ボールと一直線に並ぶと、今度はボール(月)が自分(地球)の影に入ってしまう。これが「月食」という状態なワケだ。

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自転する地球から見た太陽の見かけ上の回り方(見える位置と高さ)の軌道面と、同じく見かけ上の月の回りかたの軌道面は同じではなく、少し斜めにずれて重なっている。
だから、日食や月食のように、ぴったり太陽と月と地球が一直線上に並ぶなんてことは、そう滅多にあることじゃない。日食や月食は稀な現象というわけだ。(それでも地球上の何処かということであれば、年に1~2回くらいはチャンスがあるはず。)
真昼の新月は必ず太陽の近くにあるはずだけれど、普段はいつもフラフラと、ちょっと太陽より上か下のずれた位置にいるわけだ。満月も同様に、たいていは太陽と地球とを結んだ線の延長上より上か下にちょっとずれたところにいるから月食とはならずに、太陽の光をまともに浴びてまん丸に光って見えてるわけだ。

ただし今回は、月の代わりのボールを手に持ってぐるぐるまわり、いろいろな角度から見てみたわけだけれども、そんなふうに一日のうちに、三日月やら半月やら満月がいろいろ見えるわけはないよね。

さきほど、地球は太陽に対して1日に一回廻っていると言った。そして、そうやって廻りながら、さらに地球は太陽の周りを1年かけてまわっていると説明した。
月は月で、さらにそれらと関係なく地球の周りを廻っているのだ。30日弱に一回の割合で。
地球から見れば、太陽も月も動いて(廻って)見えるわけだけれど、その動き方は一日で一回転しちゃう地球の廻り方のほうが断然速い。
だから、とりあえず月と太陽は(一日のうちでは)同じように止まっているとして構わない。 今日のところはね。
だから今、動く(廻る)のは地球(自分)のほうだよ!


では、正しい月の見え方は、一日のうちではどんな具合になるのかな?

まず始めに、満月が見える晩のことを考えてみよう。

地球である自分が太陽を背にして立つ。
今は真夜中だね。太陽と時刻の関係を思い出そう。

さてここで、もうひとり友達に手伝ってもらって、彼に月の役をやってもらうことにする。 さっきも言ったように、太陽と月の位置を固定しておいて、自分(地球)だけを回転させて一日の様子を観察するためだよ!

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この友達には「月」を持ってもらって、太陽を背にして立った自分(地球)の正面に立ってもらう。
太陽、自分、月、の順だ。
この時、自分の影に月が隠れてしまってはまずいね。それは「月食」という状態ということだからね。
月にちゃんと太陽の光が当たるように、友達には、ちょっと月を高くして持ってもらうとしよう。

太陽の明かりを浴びて、月の明るい面が完璧にこちらを向いている。
まんまるの満月だ。


よし、じゃあこの状態、月が満月のときの地球での一日の様子を見てみるよ。

自分は地球だ。赤道辺りに頭を北に向けて、仰向けに大の字になって寝そべっているんだと考えよう。
前回、一回目と同じだ。
満月が、寝そべった自分の目の前、つまり正面の空高くに見える。一回目の時と同じく、両手を横に伸ばしたまま、ゆっくり左に回って行くと…。

時刻の説明の時と同じだね。
ただし、いま月は、地球を挟んでいつも太陽と反対側にいるよ。 そうでなければ満月に見えないからね。

夜が更けて、満月は西の空に移動しながらだんだんと高度を下げてゆく。

朝6時。左手の東の地平線から太陽が顔を出すと同時に、右手の西の地平線に満月は沈んでゆく。
さらに廻ってゆくと、昼の12時には太陽が上空高く正面に見え、もっと廻って夕方6時には、今度は西の地平線に太陽が隠れるとともに東から月が見えてくる。
満月がね。

地球の自転軸の傾きと、地球の公転によって、季節により太陽の見える高さが変わると言った。
実は、これは話しが逆。太陽の高さが変わるので、「季節」が生まれるんだけどね!

さらに、同じく自転軸の傾きのせいで、日本のように赤道からの緯度が高くなればなるほど(または反対に低くなればなるほど)、見かけ上の太陽の高度が低くなることになり、太陽の光が斜めからさすようになる。
だから、北極や南極は寒いんだね。
【補足の補足:月の見える高さと傾き】

地球は太陽に対して、一日に一回左まわりに「自転」している。
普通、地球上にいるぼくらには、自分たちが動いているという感覚は無いので、太陽の方が地球のまわりを一日にひとまわりしているように感じているけどね。
その地球は、そうやって廻りながら、さらに一年かけて太陽の周りを一周している(これを「公転」という)。

地球の自転の軸は実は一定の方向へ少し傾いているので(この辺りは画での説明が必要だね!:あ、地球儀を見てごらん。斜めに傾いてるよ!)、そのまま太陽のまわりを地球が移動することで、地球上の一点から見た太陽の見かけ上の高さが変化する。
季節によって太陽の高さが変わって見えるのは、このせいだ。

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いつでも太陽は、南の空に来たとき、一番高度が高く見える。これを「南中」というね。
ちなみに北半球の中緯度に位置する日本では、太陽は1年のうちでは、夏至の日の正午、南の空に最も高く「南中」することになる。反対に冬の太陽は高度が低くなる。(だから冬は寒い)
上の図をよく見て、考えてみてくれ。

さて、月に関してはどうなるかな?
実は月の公転軌道面と地球の公転軌道面は、ほぼ等しい(正確には5度ほどずれているだけ)のだ。 つまり、見かけ上の月の動き方は、太陽とほぼ同じだということだ。

ただし、基本的に月を見るのは夜、つまり太陽と反対側にいる月を観測するわけだから、 太陽の場合の南中高度とは逆の関係になって、日本では冬(冬至の頃)に月は最も高い空に「南中」することになるよ。反対に夏の月は低いのだ。
これも上の図版で考えてみてね。

厳密に観測点の緯度のことも含めて考えてしまうと、このようにちょっと複雑でアタマの中だけでは想像しにくくなってしまう。
だから、この講座では、地球も傾いていないししかも赤道から眺めているという具合に、事を単純化して簡単に考えることにしているよ。


第3回 月の満ち欠け

ここでちょっと話しを飛ばして、次は月に場所の移動をオネガイする。
今度は、月を持った友達には、太陽と自分(地球)との間に立ってもらうんだ。
再び、月が太陽を隠さないようにしてもらってね。日食にならないように。

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さて、太陽の方を向こう。ということは、今はお昼の12時ということになるんだったね?
今は、太陽に照らされた月の明るい面は向こう側にあって、こちら側は暗い影の部分となる。
これが「新月」と呼ばれる状態の月だ。

新月は、ま昼に出ている月なんだ。
月のこちらを向いている側は太陽に対しての裏側となり光が当たらないから暗く、その上、太陽がまぶしいし昼の空はとても明るいので、ふつう、新月は見えない。

再び自分が地球の上にいるつもりで、左まわりに回ろう。 しつこいね。この講義では、しつこく何回もぐるぐる廻るよ。まるで、お遊戯してるみたいにね。

明るい日中が過ぎて夕方になる。
夕方6時には、右手の西の地平線に、太陽と新月(見えないけれど)が沈んでゆく。
更にもっと廻る。
夜中の12時。太陽と新月はどこかっていうと、背中の地球の反対側。見えるわきゃ、ない。
新月の夜は暗いね。だって、太陽はもちろん(夜だもの)、月も出てないんだ!反対側に太陽と一緒にいるんだもの!!

もっと、廻る。
朝の6時になって、ようやく左手の東の地平線から、太陽と新月(やっぱり見えないけど)が昇ってくる。

こんな具合だね。

何度も繰り返すが、地球は太陽に対して1日に一回廻っている。
地球から見れば、見かけ上、太陽は一日にちょうど一回り。
というか、太陽が一回転して見える時間を「一日」と呼んでいるわけだね。

同時に月は月で、地球の周りを30日弱に一回の割合で廻っている。ややこしいね。
地球から見て、月が太陽と同じように、ちょうど一日で廻るなら、いつも同じ所に見えるはずだ。
でも、そうじゃなくて地球が一回転する(つまり一日)たびに、地球の周り一回転分の1/30ずつ動くわけだから、同じ時刻で比べると、地球から見た月の位置は毎日、360度×1/30=12度ずつ、だんだんずれてくることになる!
ここがポイントだ!

だから、月を、地球である自分の手から切り離して別な人に持ってもらい、独立して動くようにしなければいけなかったのさ。

だから、毎晩、満月だったり、毎日新月、というわけにはいかないんだ。
月の公転周期が、ぴったり「一日の整数倍」というわけではないから、だんだんずれてしまうんだね。
時刻は太陽の位置で決まっているから、同じ時刻で観察すると、月は毎日少しずつその場所を移動してくる=見え方(満ち欠け)が変わってくるというわけ。

更に一日のなかで見ると、月の出ている半日の間に地球は半回転する(というか、東から西の空へ180度月が動く)わけだから、 180度÷12時間=1時間に15度ずつ月は天空を移動して見えるね。
季節によって南中する高度(月が一番空高くなるときの位置)は異なるから見当がつきにくいかもしれないけれど、30度つまり2時間単位くらいになら見わけることができそうでしょ?ということは、2時間単位くらいの細かさでおおよその時刻の見当もつけられる、ということさ。


はい、じゃあ、今一回りして一日たったわけだから、月にはその場所をちょこっと移動してもらうとしよう。
具体的には、太陽を正面に見た少しその左側に移動していただく。 正確には一日分で12度だった。この際、3日分の36度ほど移動してもらおう。

新月の場合は、月の明るい側の真裏を覗いていたから見えなかったわけだが、今度は、ボールの右端の方から少しずつ、太陽に照らされて明るくなった面が見えてくるはずだ。

さっきは見えてなかった月の明るい側が、太陽と地球と月の位置の関係が変わるにつれて、少しずつ見えてきて、細く光った状態だ。

これは、三日月だね。

もっとわかりやすくするために更に何日か時を進めて、ちょうど太陽から90度の角度の所まで、月に移動してもらおうか。

さあ、地球が何回か廻って何日かが過ぎて(約1週間)、月が太陽と90度の角度を成す位置に来るときには、その月はどう見える?
右手、つまり西の方向に太陽が来るところに自分が向いて、その正面にお月さまに移動してもらうと、月は、ちょうどその右半分だけが明るく見えるはず。

これは、半月だね。

この時の時刻は、お日さまが沈む時なんだから、夕方の6時だってことを思い出そう。
何度も云うけど、いつでも太陽の位置が時刻を決めているんだよ!
夕方6時に、右半分が明るい半月は空の一番高い所に昇るんだ。


では、半月の見える一日を始めよう。

正面に、左半分の欠けた半月が見える今は、太陽が右手の西に沈もうとしている夕方の6時だったね。
さあ、ゆっくり東に廻れ、まわれ…

ちょうど90度左に廻ると、高かった半月も西の地平線に沈もうとしている。
時刻は?そう、夜中の0時だ。
さらに廻るよ?
太陽も月も見えない夜空の東の空が明るくなってきて、太陽が地平線から顔を出してくる。
時刻は?しつこいね。そう、太陽が昇るのは、朝の6時。当たり前だよ!
さらに地球はどんどん廻って、正面に太陽が見えたら今はお昼の12時。
おやおや、東の空から、丸い側を上にして、半月が昇ってきたじゃないか。

三日月や半月のように「欠けた月」を見るときに、その形を弓矢の弓に例えて、「上弦の月」「下弦の月」という呼び方をする。
●「上弦の月」は、月の東側が欠けているときの呼び方。半月の形で考えるとわかり易い。半月が西に沈むとき、弓の弦を張った側が上を向く。
「下弦の月」は、その逆。

●「上弦の月」は、新月の状態からだんだん太ってゆき満月になるまでの呼び方。
「下弦の月」は、満月の状態から、西側が欠けていってだんだん痩せてゆき、新月になってみえなくなるまでの呼び方。

これも実は、一生懸命覚える必要はないんだ。
半月が沈むときの様子は、以上の方法で身体を使って廻ってみたときに、ボール(月)の明るい側がどのように右手の地平線に隠れていくかを考えてみれば簡単にわかるはずなのさ。


第4回 ぐるぐる廻る

そうやって一回転して一日が過ぎるたびに、お月さまにはちょっとずつ、東の方へ移動してもらおう。

そろそろ、まとめなくちゃね?
では、ちょっと中途半端で難しいやつ、三日月の見える一日を始めよう。
お月さま役のおともだちには、ここんとこ(太陽のちょっと左のほう)に立ってもらおうか。約45度のところだ。

この三日月が地球(自分)の正面に見える時刻は、どうなる?
一周360度を45度で割ると、答えは8。つまり、45度は一周の8ぶんの1。
一日24時間の8ぶんの1は、イコール、3時間。
太陽が正面に見えるお昼の12時から、3時間たった午後3時ころに、この東側が丸く西側に「弦」のある「三日月」が南の空高く「南中」するんだ。

さらに地球が廻って夕方6時に太陽が沈んでも、まだ三日月は西の空低くに見えているね?

三日月が沈むのは、夕方6時から3時間たった、夜の9時くらいになる。

あとは、またぐるぐる夜の側を廻って…東の空に三日月が見えてくるのは何時?
左手の先に三日月が見えてくるとき、身体の角度は太陽から45度右の方を向いているはず。
そう、午前6時と正午のちょうど中間、つまり朝の9時ごろというわけだね。

さあ、廻れ、まわれ…、どんどん廻れ…。

月は30日弱で360度一回転して元の場所に戻る。
ということは、その半分、約15日で新月から満月に変わる。
満月のことを「十五夜お月さま」って言うでしょ?新月から数えて15日めの月のことをそう呼んでいるんだね。

すると新月から満月の中間、つまり半月になるには、新月から数えておよそ7日強、だいたい一週間。そのさらに半分、つまり新月から45度移動した所に月が移動するまではおよそ3日と半分かかることになる。ほら、新月から数えて3日めの月だったら、これが本当の「三日月」というわけ。ね?

だから正確には「三日月」とは、向かって左側が欠けてる「上弦の」細い月のことをいうんだ。向かって左側が欠けている、ということは右側が太陽に照らされているということだから、三日月は太陽の左側にいるんだよ。
反対向き(下弦)の細い月は、満月の時を過ぎて太陽の右側に来たときの状態というわけで、「27の月」ということになるかな。

おっと、あともうひとつだけ。

月が東の地平線から昇るとき、あるいは西の地平線に沈むときのことを考えてくれたまえ。半月か三日月の時が判り易いな。欠けた月の形が回転することに気をつけて欲しいんだ。

例えば上弦の半月が東の地平線から昇ってくるのは、正面に太陽がある(昼の12時)として、月が太陽に対して90度左側に位置しているときだったね?
このとき、太陽の在る側半分が照らされて、その反対側は影になって半月に見えているのだった。
しかも太陽に向いた丸い側を「上」として昇ってくることになるよ。 きみは地球の上に仰向けに寝転んで左手の方向へ回転しているんだから。
そして6時間後の夕方6時には、きみはその半月を正面に見るところまで回転する。
このとき、半月はどう見える? 月の出の時よりも90度回転して、右側が丸くちょうど左半分がすぱっと切れた半月の形で南中しているはずだね。太陽はちょうど90度右手の方向、西の空に沈んでゆくところだから。

この半月が右手の西の地平線に沈むのは、さらに6時間後の真夜中0時ということになるが、そのとき太陽は背中の後ろ側、地球の裏側の方角にいるのだから、西のほうを見たときには月の下側が照らされてる状態のはずだ。
丸い側を下にして沈んでゆくんだね。
この6時間でまたまた90度、月の形も回転したわけだ。

月は(太陽も星もそうだけど)そのままの形で夜空を動くわけではないんだね。

これは実際には上下の感覚を作っている地球が回転しているからなのだけれど、出から入りまでのあいだに、月の欠けた部分は180度回転して行くように見えるというわけだな。

ということは、月のどっち側がどういう角度で欠けているかを見さえすれば、どこら辺に太陽があるのか、つまりおおよその時刻もわかるという寸法さ。
昼間はともかくとして、まん丸の満月は回転しても形が変わらないから、満月の時には残念ながらこの方法は使えないんだけどね。
(※その日の月がいったい南中時に空のどれくらいの高さまで移動するのか、見た目の高さを一瞬見ただけでは分からないから、比べ難い)


さあ、後は自分達だけでやるんだよ。
真っ暗な新月から三日月になって、どんどん太って半月になって、さらに太って満月になって、今度は月の西側から欠けていって下弦の半月になって、さらに欠けて27の月になって…新月になって、またまた…。

どんな月の形の時、何時にどの方角のどれくらいの高さの空にその月が見えるのか?

こんな具合に太陽と月を置いて、自分が地球になったつもりで両手を拡げてぐるぐる廻ってひとつひとつ考えてみれば、ゼッタイにわかるはずなのさ。
もうキミにもね。

さあ、ぐるぐる廻って考えてみよう!
ぐるぐるぐるぐるぐる~~~~~~~~。



第5回(卒業試験)

さて、最終回である今回は、きみたちがちゃんと理解してくれたかどうかを判断するために、テストを行う。
こらこら、そこ、「エ~~ッ!!」なんて言ってるんじゃないよ。話しを聞いて、ちゃんとぐるぐる廻りながらしっかり考えてくれたならば、もうわかるはずさ。 

問題:満月の後、欠けていって半月になった月が、どっちの空のどの辺りにどういう形で見えるかを、

1.  月の出:「その半月が地平線から姿を現した直後」
2.  1. と 3. の中間の時刻
3.  南中:「一番空高く昇ったとき」
4.  3. と 5. の中間の時刻
5.  月の入り:「反対側の地平線に沈んでいこうとする直前」

の5通りの場合について、それぞれのおおよその時刻と共に、月の満ち欠けの形を、位置(見える高さ)に気をつけ、画に描いて示せ。
(紙に地平線を描いて、下に方角を書き込み、一枚でまとめること。)

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【オマケ】
この講義を受けたことのある高校生のお姉さん、ナホちゃんが、こんな俳句を教えてくれたよ。
超有名な、蕪村という人の作だ。

「菜の花や 月は東に日は西に」 by蕪村

なんとこの俳句には、この講義で唯一覚えておかなければいけなかった次の3つの知識、

●自分が南を向いたとしたら、残りの東、西、北の方角がどっちか?ってこと。
● 月と太陽は東から出て西に沈むってこと。
●「上弦の月」(月が沈む時、その欠けた側が上側に見える時の月のこと)が、「これから太って行く月」だってこと。


これらのうち、すでに最初のふたつが含まれているではないか!

スゴイぞ!蕪村。
(しかも月と日が反対側に位置しているということは、満月の時の場合のみだ。そしてその月が東に、日が西にあるということは、日没時。この句は満月の日の日没時の様子を謳ったものだったということまでが判る。  
スゴイぞ、俺! 笑)



― 番外編 (あとがき)―

【るるからのメール】
<中略>
………そうかぁ、メールde講義は無理か~。残念!

何となくは、わかるのよね。
満ちて行く時か欠けて行く時にに少しづつ右の方から登って、欠けて行く程遅い時間に月が登って、満ちて行く程早い時間に西に落ちて行くんだっけ?

石垣島にいた頃に見て覚えた程度なので理屈はわからないのよね。。
毎夜、日没から夜明けにかけて釣りをしていて月も法則で動いているんだと知ってからそういった物に興味をもったのよね。
こっちに帰って来てから、解説などを読んで自分が見た物を言葉で納得したりして規則性を知ったりしたんだけど、1年ぐらいサバンナみたいな所で生活しないときっちり理解できなそうだわ~。。

最近あまり夜空を見なくなっちゃった。
先日の台風の時に静かになってから外に出たら星がきれいだったので山に行くのはちょっと怖くて鎌倉まで車を走らせてみた。
いつもは時間帯かまわず車の多い134号線もトラックとタクシーと消防車ぐらいであまりの静かさに異次元空間だったよ~。

久しぶりに目線にオリオン座があった。
秋の星座なんだっけ?

去年は私の星座、乙女座のスピカを見つけられたの。
獅子座流星群の帰りに東の空に太陽の光にも負けないぐらいすごく光っている星があって家に帰って調べたらスピカだった。
自分の星座を見つけられてうれしかった~。


【俺の返信】
<中略>
………そうなあ、メールじゃすんげー大変なことになりそうだからなぁ。
でも、実際に身体使ってやってみるならとっても簡単で、けっこう楽しいんだよん。

あのね、覚えたものは必ず忘れるから、俺は「覚えなきゃならないことはなるべく最小限にして、あ とは考える」ってことを教えたいの。

例えば、この「月の満ち欠け」の講義では、覚えなきゃいけないのは、次のたったみっつだ けなのさ。

自分が南を向いたとしたら、残りの東、西、北の方角がどっちかってことと、地球が「左回り」に廻っているってことと、「上弦の月」(欠けた月が沈む時、その欠けた側が上側に見える時の月のこと。下を向いている場合もあるよ:下弦の月)が、「これから太って行く月」だってこと。

あとはその都度、自分の身体を使ってアタマで考えながら解くの。 そうするとわかるのだー。きっと、おもしろいぞー。


スピカ、ぴかぴか?

太陽の光にも負けないくらいってそりゃ、言い過ぎだろ(笑)。
もう明け方近くになってきてたってことだね?

金星や木星が出てるときは、なんといってもこいつらが一番明るいね。

今週土曜は娘の保育園の運動会。そのあと、相模湖のチョイ先の山パーティ(道志村)に行く予定。


んじゃね〜。


【るるからのメール】
> 太陽の光にも負けないくらいってそりゃ、言い過ぎだろ(笑)。
> もう明け方近くになってきてたってことだね?

そそ さすが!
毎度毎度言葉が足りませんで。。申し訳ない。。


>地球が「左回り」に廻っているってことと、

地球は右回りだと思ってました。。


【俺の返信】
> 地球は右回りだと思ってました。。

太陽は東の地平線から昇る。
地球(自分のいる所)が東の方に向かって回って(動いて)いるからだよん。

これで~いいのだ~♪

でもなんでそれを「左まわり」と言うんだろうね。
上(北)から見ての話しだよな。
じゃ、南半球のオーストラリアの人は「右回り」って思っているんだろうか??(笑)


【るるからのメール】
> 太陽は東の地平線から昇る。
> 地球(自分のいる所)が東の方に向かって回って(動いて)いるからだよん。

まったく 形がみえない。。

東ってとりあえず右でしょ。
んー わかんないぞ。

模型でも作らないとな。。
理解出来たら報告します。


【俺の返信】
> 東ってとりあえず右でしょ。

お~い、ちょっと待てちょっと待てったら。
そっち行くと崖に落ちるぞ(笑)

ああ、地球儀を正面に見て「右」っちうことかいな。
「左」や「右」ってのは相対的な概念だからナ。あやふやに使うととっても危険。

日本から見て「東」はハワイのある方だ!
そっちに廻せ!


ほ~ら、そっち行ったら落ちるってば~…


【るるからのメール】
おおおおお!
なるほど 絵に書いたら分かった!!

朝が日本から中国の方に。。。ってあたまで考えちゃうと理屈が右回りになちゃってた。

絵に書いて納得。

ありがと~。


【俺の返信】
ふむむ…。
してみると、こんな具合で毎日ちっとずつだったら、メールででも講義できるだろうか??

「月の満ち欠けの様子と時刻と方角の相互関係を、アタマと身体で理解する方法」


るる、ついて来るかい?


【るるからのメール】
> ついて来るかい?

うん、行く行く~!


と、言うわけで…このページが出来あがったのでありましたとさ。

お子さんのいらっしゃる方、お子さんにこのページをぜひ見せてあげてください。 特に小五、中二。 ちょうど学校で教わるところですので。

大人の方も興味があれば是非。興味がなくても是非。
これを理解すると、とても便利です。楽しいです。夜空を身近に感じられます。 月を見ただけで、だいたいの方角も判ります。時刻ならおよそ1~2時間単位で判ってしまいます。何日後に月見をすればいいかも判るし、海や山で遭難したときにも役立つ!(笑)

その後も機会あるごとに、この講義をいろんなところでいろんな人々を対象にやらせてもらってます。オオムネ好評。
特に山の野外パーティの時など、実際に月を見ながらの講座は、よくワカルし楽しくてサイコ-。
でもね、かならずご自分の身体を使って、何度も何度も廻っていただきたいのです。そうしないと本当に理解がアタマに染み込まない。
かく言う私も、いまだに毎回ぐるぐる廻ってよ〜く考えないと分からない。
覚えられる事じゃないからね!

呼んでいただければ、学校でもイベントでも、どんな所でも手弁当で参りますよ。 交通費だけ、よろしくネ。(笑)

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