削られた山〜武甲山〜
5月上旬。
北東は埼玉県横瀬町、南西は秩父市にまたがっている標高1304mの武甲山は
地図をみると、北側と南側ではまったく異なる山容だ。
ー 武甲山の成り立ち
武甲山の成り立ちを調べてみると、海底火山の噴火で隆起したところに堆積したサンゴ礁が石灰岩となり、海洋プレートに乗って移動し陸のプレートと接触。そのとき堆積物が剥ぎとられ陸側に付加し、次々に押しよせた付加体により隆起しできた山だそう。
ことばで書くとなかなかわかりにくいが、ジオパーク秩父の資料にイラストで詳しく書かれてありわかりやすかった。
武甲山ができるまで①
武甲山ができるまで②
武甲山ができるまで③
武甲山ができるまで④
*2019年5月8日の資料です。
北側が石灰岩で、大正時代から採掘が始まり今の姿に変容している。
武甲山の石灰岩は良質らしく、高度経済成長を支えたセメントの主原料であり、現在も採掘は行われている。
この山はもっと姿を変えてしまうかも知れない。
今の姿をみておきたい、と今回のぼる山に選んだ。
ー ルート
選んだルートは武甲山御嶽神社一の鳥居からスタートする表参道ルート。
一の鳥居登山口の最寄り駅は西武秩父線の横瀬駅になるのだが、駅から徒歩だと1時間半かかるとあり、初めて車で登山口までいくことにした。
一の鳥居には30台ほどとめられる駐車場がある。
私が到着したのは7時過ぎで、平日にもかかわらずすでに15台とまっていた。その後も続々と車がやってきて、下山した11時半には満車で路駐している車もあった。
ー 山のぼりスタート
スタート地点の標高は518mなので、てっぺんとの標高差は786m。
最初は川沿いをゆったりのぼる坂がつづく。
前に男性が歩いていて、なんとなく安心しながらついていっていたら、シラジクボに向かう分岐で別れてしまった。
ここからはひとり。さっそく熊鈴の登場。
熊鈴はひとりを感じるととりだすのだが、チリンチリンと鳴っていると誰より自分が安心できる。
しばらくいくと今回の目的のひとつでもあった、歩荷のためのペットボトルがたくさん置かれた場所にたどり着く。
てっぺんのトイレは水が不足しているため、ペットボトルに水を入れて運んでほしいと看板にある。
事前に知っていたので、荷物はできるだけ軽くし「よし、運ぶぞ!」と意気揚々と手にしたのは弱気の2L。。
5Lがたくさんあったのだけどその大きさにたじろぎ、数少ない2Lのボトルにたっぷり水を入れる。
さあ、山のぼり再開。
ひたすら樹林帯をのぼる。
ニョキニョキのびる新芽に応援されながらひたすらのぼる。
そこまで険しくはないがずっとのぼっている感覚。平らな道はあまりなかった印象がある。
途中、5Lを3本ザックにぶらさげ10L(かな?)のプラスチックケースを手にひとつ持っておりてくる人がいた。
「え?すっすごい」心の声がもれる。
すでに持ってあがって、空のボトルを持っておりているところだという。
しかも2Lでへこたれてる私にその方は「持ってあがるだけで充分ですよ」と天使のようなやさしい微笑みをくれた。
「鍛えます」心の中で叫び、太ももに力を込めた。
のぼっているときに、おりてくる方と何人かすれ違った。
私も結構早いほうだと思ったが、いったい何時からのぼっているのだろう。
ひたすら樹林帯をのぼると広いところにでた。
大杉の広場だ。
このあとは休憩できる場所がないので、ここで休むのがいいと思う。
大杉の広場のあとは木の根っこの道や石の道が続くが、森の中をみわたせるので狭い感じはなかった。
しっかりとした休憩をとることなく、山のぼり開始から1時間50分、武甲山御嶽神社鳥居に到着!
まずは運んできたペットボトルをおろしたい。
「水は上へ」という看板どおりに進んでいくとそれらしき場所にたどり着く。
オレンジ色のケースがあり、ここに置くんだな。そう思った。思いこんだ。
そして看板をちゃんと読まなかった。
「マンホール」という文字がちょっと気になったが、思いこんだ通りにオレンジのケースに置いてきた。
これが間違いだと気づいたのは下山してこの記事を書いているときだった。
そう、看板に「升のふたをあけ、水を入れてください」とちゃんと書いてある。その下には「水はマンホールに」って矢印まであって。
そう、看板の下にあったマンホールのふたを開けて、そこに水を入れなければならなかった。
あ〜、、、痛恨。どなたか気づいて入れてくださっただろうか。。。
最後が間違っているとものすごく残念な気持ちなる。
ごめんなさい。。。
気を取り直して(この段階では間違いに気づいていないが)軽くなったザックで軽快にてっぺんにあがる。
てっぺんには秩父の街が広がっていた。
セメント工場もみえた。
てっぺんは狭いので、お昼は少しおりたところの広場でとることにした。
お昼ごはんはセブンイレブンのカップラーメン。
サーモスの山専用ボトルを試したかったから。
自宅で入れてから5時間弱ほどたっていたが、ちょうど良かった。やけどしそうな熱さではないが、フーフーしないと熱いくらい。ちょうどいい熱さでおいしかった。
低山の山のぼりにはちょうどいいと思う。
カップラーメンは普段まったく食べないのだけど、山だととても欲するときがある。
塩っけが欲しくなるからなのかな。
750mlあると食後のコーヒーも飲める。
贅沢な時間。
30分ほど休憩し、下山はシラジクボ方面へ。
最初激くだりがあり、そのあとゆるやかな道がつづく。
緑に包まれてなんだかかわいらしい道だ。
するとあたり一面にバイケイソウの群生が!
舗装されている道ではないからちょっと道に迷いそうになるけど、ロープがあるので間違えることはなかった。
シラジクボを超えたらゆるやかな細いくだり道。ちょっと狭いので注意しながらくだる。
分岐までテンポよい足どりでおりていく。
合流地点からは広い林道もあり軽快に進む。
最後の分岐についたとき、これからのぼるおじさまたちと出逢う。
「もうのぼってきたの?どっちから?」
私がのぼってきた道をさすと、
「どっちのほうがきつい?」と聞かれたので
「私がのぼったほうがきついと思いますよ〜」というと、もうひとりのおじさまが、私がくだってきた道を指さし
「そう〜?こっちは最後がきついでしょ〜」
そんなたわいもない会話が山ではとても心地よい。
川をみながらもときた坂をくだる。
休憩をはさみ約4時間の山行。
のぼっているときはもちろんキツイししんどいのだけど、このくらいだと疲れも残らなくなった。
満車の駐車場を出て、工場の間をすり抜ける。
経済の発展と心の癒しをくれる武甲山。
どんな想いでそこにいるのだろうか。
削られた岩肌をみて、私はごめんなさい、ではなく、ありがとうございます、といいたい。
偉大なる山。人生を考えさせられる山。
5L運べる筋力をつけて、また戻ってきます。
距離:6.7km
累積標高(のぼり) 837m
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