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ついに膝痛克服宣言!?〜奥高尾縦走〜

3月最終日。
5:30。新宿駅は夜もすがら飲んでいたのであろうか、始発を待つ若者たちであふれていた。眠らない街、新宿。
若かりしころを思いだす。

この日の朝は少し緊張していた。
今回のルートはまだ私には早いかなと思っていたルート。なにせ距離が長い。前回の高水三山より5kmくらい長くなる。
累積標高も初めて1000mを超える。
ゴールまで無事にたどり着けるか不安があった。
でも、これまで積み重ねてきた力があるから、きっとゴールまでいける!そう信じ、まだ夜が明けぬ薄暗い時間にうちを出発した。

神奈川県と東京都の都県境にそびえる標高855mの陣馬山をめざすところからスタート。そして明王峠を通り景信山(標高727.3m)、城山(小仏城山・標高670.4m)、最後に高尾山(標高599.3m)と、アップダウンはありながらも基本的に陣馬山からはくだりのルートで3つの山をめぐる奥高尾縦走路だ。(標高は国土地理院参考)
ゴールはもちろん高尾山の登山口があるケーブルカーの清滝駅。総距離16kmのチャレンジがはじまった。

今回の目的は3つ。
①ロング縦走を膝痛なくゴールすること
②読図の練習
③桜を愉しむ
そう、ギリギリ桜が愉しめるのではないかという期待があった。疲れても桜をみればきっと元気になる!
読図では、地形を感じコンパスの使い方を覚えたい。
国土地理院の地形図をダウンロードし、磁北線を書き込み準備は万端。

新宿から中央線で高尾までは一本。座ることができたので、少し安心したのか眠気におそわれぐっすり眠った。あと10分くらいでつくころめざめ、バスの時刻を確認した。
高尾には6:25着。西東京バスで高尾駅北口バス停から陣馬高原下行きのバスは6:54発なので、ゆっくりお手洗いを済ませてと思っていたのだが、よくよくみたらこの時刻表は逆ルート、陣馬高原下から高尾駅行きだったのだ。
慌てて高尾駅発の時刻表を調べると6:47発。よかった、間に合う。
考えてみれば電車とのつなぎは考えて時刻表組んでいるわよね。
陣馬高原下行きのバス停は北口。
お手洗いを済ませてバス停へ。
バス停は駅の左斜め前にあったので迷うことはなかった。
ほっと胸をなでおろし列に並んだ。
ほどなくバスが到着。流れにのって乗ろうとしたら、あきらかに山のぼりスタイルの男性が見送っている。
よくみたらバスの行き先が違う。
ふり返って山のぼりスタイルの男性と目があうと彼はニコッと笑って「47分だよ」と教えてくれた。
あぶないあぶない。うっかり別のバスに乗るところだった。私も笑顔のおかえし。

高尾駅から陣馬高原下バス停までは36分。予定より早くスタートできるので、むしろよかった。

バス停にはお手洗いがある。
陣馬高原下バス停から陣馬新道登山口までは徒歩で25分。針葉樹の谷間をなだらかにのぼっていく。

陣馬高原下バス停の標高は330mほどなので最初の陣馬山のてっぺんまではおよそ500mちょっとのぼる。

陣馬新道登山口でさっそく地図を取りだし、途中の細かいところはさておき、コンパスで陣馬山のてっぺんに合わせてみる。
地図を片手にいざ!出陣!

陣馬新道のハイキングコースははじめからずっと急登だと聞いていたので覚悟はしていた。
確かに根っこの急登が続く道は多かったが、なだらかな道もあり、ひたすらのぼり続けるというほどではなかった。
この日は曇り予報だったので天気は期待していなかったが、朝のうちは日がさす時間帯もあり木漏れ日が心地よい。

急登をのぼった後に広がる緩やかな道。まるで白樺のように白く輝く幹に少しずつ明るい緑が加わっている。春は印象派の絵画を思いだす。

最後の急登はどうだと言わんばかりに長い直線の根っこの坂が広がる。

階段よりも私は根っこの坂のほうが好きだな。
キラキラ輝く朝日は山からの贈りもの。

急登をのぼり終え、てっぺん間近にひらけた場所があった。
そこは絵画の世界。まるで綿菓子のように木を包んでいる小さな新芽たち。

なんて美しいんだろう。
しばし立ちすくむ。

再びのぼりはじめ少しいくと、てっぺんがひょっこり顔をだした。
コンパスの向きはあっていた。

嘘のように晴れていた。
陣馬山のてっぺんは開放感にあふれ、原っぱが広がっていた。
のんびりくつろぐのにぴったりだ。
登山口からてっぺんまでは1時間弱で到着。まだ9時台だったけれど、朝あまり食べられなかったので、持ってきたサンドイッチをもりもり食べる。
筋力がついてきてから食欲が増したように思う。

ずっとここにいたいと思うほど気持ちよいてっぺんに、「また来るね」と挨拶し次の目的地、景信山へ。
コンパスはその前の明王峠に合わせた。

「今この辺かな」と地図をみてから登山アプリで確認する。
かなりの確率で不正解、、、
それでも、予想が的中するとこれが思った以上に嬉しい。
「右側が崖で左にはピークがある」
「送電線があるから、今ここだ」
子どものころ ”宝の地図” を作り、隠したお菓子をみつける遊びをしていたことを思いだす。
地図は冒険家のワクワクアイテムだ!

陣馬山から30分ほどで明王峠に到着。
展望用の丸太が置かれていて、おじさまがそこで何かをみていた。
私に気づいたおじさまはニコニコ顔で「富士山がみえるよ!」と教えてくれた。

「ほんとだ〜!!」
景色を期待していなかったのに、てっぺんの青空と富士山までみれて幸せいっぱい。
明王峠では休まずに景時山をめざす。

陣馬山から歩くこと1時間50分。ようやく景時山に到着。
思った以上に長かった。
道は険しくなかったが、まだ半分くらいかと思うとどっと疲れを感じる。
ここはゆっくり休もう、とアルコールランプでお湯を沸かし、無印良品のオニオンスープとコンビニのおにぎりでおなかをうめる。

写真に撮るとなんだかひもじい食事だ。
でも、温かいスープが疲れたからだにしみわたり、みるみる元気を取り戻す。温かいものは山のぼりに必須だと改めて思った。
腹ごしらえをしてから、のんびり景色を眺める。
景時山のてっぺんには山の向こうに関東平野が広がっている。なんだか山が浮かんでいるみたい。

40分ほど休憩して城山へ。
少し歩くと、ほんのわずかだけどミツマタが咲いていた。

ミツマタの群生地にいきたいと思っていたけど、時期が遅いかなと諦めていたので、ここでみることができて嬉しかった。
他にもすみれや名前がわからないけど、花が咲いている木などがあった。

縦走路は地図読みの練習にもってこいだ。
のんびり歩きながら位置を確認したり、地形を感じたり。
読むほどではなくとも、山をちょっとだけ身近に感じられた。

アップダウンも少なく、城山には40分ほどで到着。
てっぺんはひらけていて人もたくさんいた。
そして、ふと見渡すと花花花!
ユキヤナギに木蓮、桜に、椿に彩り豊かな光景が目の前に広がっていた。

大興奮で撮りまくる。
紫陽花の枯れた花とのびゆく新芽。めぐる季節を教えてくれる。

どのてっぺんものんびりできてよかったけれど、城山は花にあふれていてテンションは爆あがり。奥高尾の山たちのてっぺんは魅力がいっぱいだ。

城山から高尾山までの道はとても整備されていて歩きやすかった。

桜にもたくさん出逢えて、ハイキングコースとしては最高に気持ちがいい。
城山から高尾山のルートは春夏秋冬で訪れたい。

るんるん気分で歩いていきいよいよ高尾山の香りが近づいてきたころ、迎えてくれたのは階段地獄。
最後の最後でのぼる階段はほんとにつらい。

そして待望のファイナルてっぺん、高尾山!
何度ものぼっているので写真を撮るのを忘れてしまい、あわてて一枚。

平日だけどやはり高尾山は混んでいた。
少し休憩し、最後のゴールをめざす。
2月にのぼったリベンジ高尾山ではくだりを緩やかなルートにしたので、今度は1月はじめてのソロ山のぼりで膝が痛くなった下山のルートを選択。
4号路から吊り橋を渡り、2号路経由で6号路に入ってゴールするルートだ。

吊り橋を渡ったあと出逢えるこの風景がとても好き。

4号路を終えてケーブルカーの高尾山駅につき、近くのお蕎麦屋さんに立ちよった。
カロリーを消費したわりに食べた量が少なすぎ、おなかがすいていた。
どうしても天ぷらそばを食べたかったのだけど、とろろそばで有名な高尾山のお蕎麦屋さんにはなかった。
せめて雰囲気だけでも、と選んだのはたぬきそば。
天ぷらそばとはだいぶん違うけど、外のテラスで景色を眺めながら食べるお蕎麦は格別だった。

いよいよ問題の2号路。
そう、この場所から膝に激痛が走り断念したのが2ヶ月ちょっと前。
あの時は6号路からのぼって降りるだけのシンプルな山のぼりだった。
ところが今回は違う。陣馬山から13kmほど歩いてからの高尾山の下山だ。
景色に後押しされ、いよいよラストスパートにはいる。

おりはじめて「うん、いける」と確信し、ゆっくりゆっくり降りていった。
ところが半分くらい過ぎたところで、ちょっと左膝に違和感をもった。
痛くはなかったが、痛くなる気配を感じたのだ。
この日はじめてずっとザックに刺さったままのストックを取りだした。
ストックで体重を分散させ、左膝への負荷を減らした。
ストックをつきながらもせっかくだからと琵琶滝にもよった。

かなり遠くからしか見えなかったが、滝の音に癒された。

険しいくだりを終え、なだらかになるともうゴールは目前。

距離16.7km、累積標高1121m、時間休憩を含み8時間、歩数35,000歩。
見事、陣馬山から高尾山の縦走を踏破できた!

迎えてくれた緑がまぶしい。
なだらかな道に入ると膝はまったく痛みがなく、これは宣言させていただこう。
『脱!膝痛』
疲れが吹っ飛ぶ瞬間だった。喜びの舞を踊りたいくらいだ。
ゴールのケーブルカー清滝駅では満開の桜が待っていてくれた。

目標の3つはすべてクリアすることができた。
山のぼりは心もからだも強くしてくれる。
8年もいい訳して遠ざけていた山のぼりを復活できたのは、やはり山が好きだという気持ちにほかならない。
山のてっぺんにいきたいという気持ちがトレーニングを継続する意志を生み、強いからだを手にいれることができた。
なんでもやればできる、とは思わない。
だが、なんでもやらなければできない。
山のぼりは私の生き方そのもの。

目標はアルプス。
画面で見た絶景をこの目でみるまで、私の挑戦は続く。


距離:16.7km
累積標高(のぼり) 1121m



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