高校数学をプログラミングで解く(コラム)「1-3 『情報』の試作問題「第1問」」
はじめに
この記事では、令和7年度の大学入学共通テスト(旧センター試験)で新たな受験科目となる『情報』について、独立行政法人大学入試センター(DNC)が出している『情報』の試作問題を扱います。
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=511&f=abm00003277.pdf&n=6-2-1_試作問題『情報Ⅰ』※令和4年12月23日一部修正.pdf
令和7年度以降に大学受験をされる方は、本記事をお読みになる前に、是非一度この試作問題を実際にやってみてください。
試作問題「第1問」
今回は、『情報』の試作問題の第1問について考えてみます。
「第1問」の概要
「第1問」は問1から問4までで構成されており、配点としては20点になります。
独立行政法人大学入試センター(DNC)の
「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」( https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7/r7_kentoujoukyou/r7mondai.html )
のページに、『令和7年度大学入学共通テスト 試作問題「情報」の概要』(https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=511&f=abm00003141.pdf&n=6-1_概要「情報」.pdf)という資料があります。この資料のp.5にこの第1問の概要がまとめられています(図1)。
第1問 問1
図1の「各設問の概要」にある通り、問1は正しい情報を収集するための心構えを問うような問題ですね。きちんと文章を読んでいれば特に難しい問題ではないです。
第1問 問2
問2は誤り訂正の問題です。
この問題を解くためのポイントは、パリティビットのことをきちんと理解できるかです。 このパリティビットは教科書「高等学校『情報I』(数研出版、ISBN:9784410821219)」の「第4編 第1章 D 通信の信頼性(p.130-131)」に載っていますので、そこを読めばパリティビットの原理を知ることができます。ただ、原理を知るだけではこの問題を解くことはできません。パリティビットの原理を理解するだけでなく、それによってデータの誤り判定がどのレベル(判定できるビット数、どのビットか、など)まで行えるのかを考えなければなりません。
問2の「エ」の答えは、
「① パリティビットを含め、一つのビットの誤りは判定できるが、どのビッ トに誤りがあるかは分からない」
です。パリティビットを利用すると、複数のビットの誤り判定や誤ったビットの箇所がわかるのではないかと期待してしまいますが、パリティビットでは奇数個のビットに誤りがあることしか判定できず、また誤り箇所については全く分からないということです。落ち着いて考えればわかるのですが、「パリティビットへの期待」みたいなものもありちょっと惑わされる問題ですね。
まだ、よく理解できないという方は、問2の「エ」の選択肢の1つ1つについていくつかのパリティビットの誤りの例を出してみて、各選択肢の内容が実際に読み取ることができるかを少し時間をかけて考察してみてください。
あと、16進数を2進数にする問題もさりげなく導入されています。進数は数学Aでも学ぶことです。記事『高校数学をプログラミングで解く(コラム)「1-2 『情報』の試作問題をやってみる」』でもコメントしていますが、『情報』では『高校数学』に関連することがよく出題されますので、高校数学をしっかり学んで、情報の問題にも応用できるようにしておいてください。
第1問 問3
問3は論理回路の問題です。
問題文中の表1(図2)の論理回路の図記号を見て、「これは習ってない」と面喰ってしまった方もいるのではないでしょうか(※1)。でも、ここで焦らずに真理値表の方をよく見てみると、そんなに難しいことはないです。
例えば、スイッチAとスイッチBがあり、各スイッチはONのとき1、OFFのとき0で表されるとします。そして、Xをたとえば電灯として、電灯がついている場合を1、電灯が消えている場合を0とします。
このとき、論理積回路ではスイッチAとスイッチBの両方がON(値が両方とも1)の場合のみ電灯がつき(Xの値が1)、スイッチAかスイッチBのいずれか(両方でも可)がOFFの場合は電灯が消える(Xの値が0)という処理を行います。一方、論理和回路では、スイッチAかスイッチBのいずれか(両方でも可)がONの場合は電灯がつき(Xの値が1)、スイッチAとスイッチBの両方がOFFの場合のみ電灯が消える(Xの値が0)という処理を行います。また、否定回路は、スイッチAがONのときに電灯が消え、スイッチAがOFFのときに電灯がつくという処理を行います。
これを理解できれば、問3の(1)はすぐに分かるでしょう。また、問3の(2)は一見複雑な回路に見えますが、スイッチ(問題ではトイレ)A、B、CのONとOFFとの組み合わせをいくつか試してみることでどの回路を選べばよいかがわかってくるでしょう。
(※1)記事『高校数学をプログラミングで解く(コラム)「1-2 『情報』の試作問題をやってみる」』の追記に記載している通り、「論理回路」は数研出版の情報Iの教科書には載っていませんが、東京書籍、実教出版、日本文教出版、第一学習社の情報Iの教科書には載っているようです。
第1問 問4
問4も『アメリカのリチャード・S・ワーマン が提唱する「究極の5つの帽子掛け」』なんて知らないと思ってしまうかもしれませんね。でも、よく読むと『5つの基準で情報が整理・分類される』ということを言っているだけでやはりそんなに難しいことは言っていません。
ただ、「温泉がある宿の満足度評価ランキング」(図3)については引っかからないようにしないといけません。
長野や神奈川などの地名が出てきていますので、一見「場所」かなと思ってしまいますが、ちょっと考えると「地名でランキングされているわけではない」ことがわかります。惑わされないようにしましょう。
まとめ
今回は、令和7年度の大学入学共通テスト(旧センター試験)で新たな受験科目となる『情報』について、独立行政法人大学入試センター(DNC)が出している『情報』の試作問題の第1問を考えてみました。
第1問は、『情報』の4つの領域からそれぞれの内容を踏まえた独立した4つの小問が出題されています。それぞれの小問は基本的な事柄になりますが、一見すると難しそうに見えるものもあります。そんなときでも焦らず、問題文を丁寧に読んでいくことをお勧めします。実際、今回紹介した第1問も意外に解けると感じたのではないでしょうか。
ただ一方で、やはり問題文を読む量は多いと感じます。ですので、「丁寧に」だけではなく「素早く」読んで理解することが必要になるでしょう。これにはあまりテクニックを考えるより、数をこなした方がよいと感じますが、このあたりは個人差がありますので、自分に合ったやり方を探してみてください。
参考文献
独立行政法人大学入試センター(DNC)のWebサイト
「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7/r7_kentoujoukyou/r7mondai.html
高等学校『情報I』数研出版、ISBN:9784410821219
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?