Spin_GOのすすめ2

Spin&Goのすすめ(2/2)

 こちらの記事の続きです。

 前の記事ではspinの基本事項と、勘違いされがちなspinの分散について述べました。この記事ではspinの良いところ悪いところについて述べます。


spinの良いところ

 spinの良いところは以下の四点です。

・分散が低い(特に実力がわかりやすい)
・時給が出やすい
・時間制約がない
・(作業が苦手で無ければ)勉強がしやすい


分散が低い(特に実力がわかりやすい)
 これについては前回の記事で述べたので割愛しますが、しっかりと立ち回れるならば、spinはcashgame以上に収支を安定させられるゲームです。


時給が出やすい
 下記の二つの時給はどちらも$20/hでほぼ同じです。

・50NLzoomで4bb/100 (or 100NLzoomで2bb/100 or 200NLzoomで1bb/100)
・$25 spinでROI2.7%

 上下どちらが達成しやすいと思われますか?完全に個人的な意見にはなりますが、私は下のspinの方が簡単だと思います。
 私はSharkScopeのリーダーボードや2+2等で、様々なゲームのレギュラーの成績をかなり調べました。そして十分ハンド数がこなせて成績を収束させられるゲームの中では、ringgameとMTTを除けば、Hyper系のSTTこそが最も高い時給が出るゲームだという結論に至りました。これが私がspinを選んだ最も強い理由です。

 (時給という点ではringgame,HyperTurboSatellite+MTTも有力だと思いますが、次で述べる時間制約の面から私は見送りました。ライブキャッシュについては現在自由に海外に行ける状況ではないので考慮していません。)
 (なお、時給という面で考えると、zoomは相当に厳しいゲームだと思っています。それに加えて上の選択肢の中では100NLzoomで2bb/100が一番現実的な気がしますが、自分の実力の把握に数か月かかるのは流石に面倒です。)


時間制約がない
 zoomが人気なのは、いつでも手軽に始められて、いつでも止められるという点が大きいでしょう。実際私も、ゲームセレクションの際にringgameやMTTを本気でやるならば深夜か朝方に起きなくてはならないのが面倒で、これらのゲームは避けていました。
 しかしspinであればzoomと同様に、好きな時間に好きなだけプレイできるのです。また、時間制約がないおかげで隙間時間にプレイができるため、稼げる額も増えます。専業ではないプレイヤーにとってはこの時間制約がないという点はかなりのメリットです


(作業が苦手で無ければ)勉強がしやすい
 これがメリットになるかは個人差があると思いますが、spinは基本的にGTO戦略を覚える→相手を分析する→戦略を調整するといった作業をひたすら繰り返すことでいくらでも上手くなります(プリフロップゲーなので)。
 cashgameにも勿論そういった側面はあるとは思いますが、GTOだけでは限界があるという話で述べたように、spinよりもターンやリバーのアクションが増えるcashgameでは、GTOから学べないことも強く求められます。

 それらを効率よく身に付ける方法を知っているならば、spinというゲームを選ぶことはお勧めしません。その方法でcashgame等を攻略していけばいいと思います。
 しかし、私を含む多くのプレイヤーは、GTOや相手のハンド分析等から学べないことについて、こういう勉強をすれば成績が上がると確信を持って言えないのではないでしょうか。
 (例えばどういうボードなら相手は降りやすいか、どういうサイズなら相手はコールしやすいか等について、ヒストリーの頻度分析無しで自信をもって回答できるでしょうか?または自信をもって回答できるようになるための勉強法を知っているでしょうか?)

 もしあなたがその勉強法に心当たりがなく、しかしGTO戦略を覚えたり相手を分析する努力ができるならば、あなたはプリフロップやフロップに強みを持ち、ターンやリバーに弱みを持つプレイヤーということになります。その場合、プリフロップやフロップの重要度の高い(そして時給が出やすい)spinをプレイするというのは非常に合理的な判断なのではないでしょうか。

 長くなりましたが、ここで言いたいことは結局、いわゆる感覚的なプレイに自信はないけれど、GTO戦略の暗記や分析の努力ができる方はspinに向いているよということです。
 (分析は他の人が既に行った結果を貰えれば、ある程度の成績までは自分で行う必要ないとは思いますが、トップを目指すなら自身で分析して勉強できないといけないでしょう。)



spinの悪いところ

 spinの悪いところは以下の4点です。

・将来的に厳しくなるかもしれない
・リアルのトーナメントやライブキャッシュに活かしづらい
・暗記と作業を求められる
・(本気で勝ちに行くなら)ある程度の初期費用がかかる


将来的に厳しくなるかもしれない
 ソルバーの台頭により、ショートスタックのゲームはかなり解析しつくされてきています。今のところはまだ全員がレーキ負けといった状況にはなっていませんが、将来的にプレイヤーが成長した場合、全員がレーキ負けという状態に最も早くなるゲームがHyper系のSTT(spin含む)である可能性は高いです。
 また、いずれリアルタイムでGTO戦略を教えてくれるようなサイトやツールが登場するかもしれません。cashgameではベットサイズを複雑化すれば何とか対応できるかもしれませんが、spinではベットサイズに工夫する余地が少ないので、そういったものが出れば一瞬でゲームが壊れてしまう可能性があります。(Starsはこういったものをプレイ中に使用していないか、かなり力を入れて監視している印象ではありますが。)


リアルのトーナメントやライブキャッシュに活かしづらい
 オンラインポーカーに収入を求めている方もいるとは思いますが、何かしらのトーナメントで一旗揚げるための、あるいは休暇の際に海外でライブキャッシュをするための練習としてオンラインをプレイしているといった方も多いと思います。
 しかし、spinのために覚えたante無しのショートスタックにおけるプリフロップ戦略は、それらにはあまり活かせない可能性が高いです。もちろんポストフロップについてはspinをプレイしていても鍛えられるのでspinのプレイに意味がないとは言いませんが、cashgame等よりはリアルのゲームとの繋がりが薄いため、オンラインポーカーを練習の場としている方にとってはspinは避けた方が良いゲームとなります


暗記と作業を求められる
 私がspinを教える際には、とりあえずプリフロップの戦略を完璧にしてもらうことから始まります。
 (オンラインでは手元にチャートがおけるのでレンジを丸暗記する必要はありませんが、タイムバンク内でプレイが行えるようにある程度は覚える必要があります。)
 また、ここではGTOを完全再現したプリフロップ戦略を取るというよりは、ハンド数によるプレイヤー分類と戦略の使い分けに述べたようなことに気を付けて、ある程度相手の傾向に合わせたプリフロップ戦略が取れるようになることを勧めています。(始めたての頃はとりあえずvsアンノウン用のレンジ一つを使えるようになるところからでいいと思いますが。参考記事)

 cashgameではマルチウェイが増えるのとサイズが複雑なこともあり、プリフロップを完璧にするのにはかなりの労力がかかるでしょうが、spinであれば現実的な時間で比較的完璧といえる形まで持っていけることが多いです。
 (これについては具体的な搾取戦略の求め方や、搾取について調べる際の注意点に書いた内容を読んでいただければ、納得していただけるかと思います。)
 しかし、お分かりの通りこれはポーカーの面白さとは全く関係のない、ただの暗記と作業です。私はこういった分析が好きなほうではありますが、それでも途中からはかなり面倒だと思いました。時間も相当取られます。

 こうした点から、ポーカーを楽しみながら実践を繰り返して上手くなりたい、あるいはツールとかソルバーとかを触るのは面倒くさくて無理、といったプレイヤーにはspinは向いていないです。おそらくこの理由で脱落される方は多いと思います。
 (上にも書きましたが、分析は他の人が行った結果を貰えればある程度の成績までは自分で行う必要はないです。しかし、トップを目指すなら自身で行う必要があります。)


(本気で勝ちに行くなら)ある程度の初期費用がかかる 
 詳しくは初心者がspinを始める際に何から勉強したら良いかという記事で書こうと思いますが、もしあなたがspinで本気で勝ちに行くならば、プリフロップの戦略を早期に習得する必要があります。
 HU時の戦略に関してはとりあえず私の記事の無料版でいいと思いますが、3way時の戦略に関しては、以下方法で何かしらのプリフロップのソリューションを手に入れ、チャートを作成してプレイ中に適切なアクションが行えるようになる必要があります。

・MonkerSolver(€499)を買い、サーバー(https://contabo.com/)(€110/month)を借りて自分で計算する。
・MonkerGuy(https://www.monkerguy.com/)(今spinのpackは表示されていないですが、確か昔は$800で売っていました)で買う。
・RangeConverter(https://rangeconverter.com/)($229+$189+$149+$129+$119+$119=$934)で買う。
※BUlimpがないためBUlimpからはじまる戦略はわからないことに注意。12bb以下のソリューションに関しては流石に割高なので、ここで買うくらいなら私に計算頼んでください…

 これらは今からspinを始める初心者にとってはあまりにも高いでしょうが、それでも最終的には必要になってきます。私も数日後に3wayのプリフロップチャートを無料版と有料版に分けて公開しようと考えていますが、これまでにかけてきた労力を考えるとそれなりの値段になるとは思います。

 将来的にこれらを買うということに抵抗がある方はspinは避けた方が良いかもしれません。(spinで本気で勝ちに行くのに、3wayのプリフロップを感覚でプレイするというのはあまりに中途半端です…ただ、やはり自分が勝てるかどうかわからないゲームにこの金額を早い段階で投資するのは厳しいという気持ちも分かりますが。)
 なお、バンクに余裕がないが買う気があるという方には、HyperHUSNGをプレイしてバンクを作ってソリューションを買い、spinに戻ってくるという方法がおススメです。(HyperHUSNGはspinとかなり近いゲームです。)


 ※他にPioSolver($250)、HM2orPT4(できれば両方)、spin用のHUD($100程度)もほぼ必須級です。こちらは他のゲームでも同様ではあると思いますが。
 ※LillianさんもTwitterで$949の6maxのソリューションを買ったと言っていたので、他のゲームでもお金がかかるのは同じなのかもしれません。
 ※私はコーチング類($2000~)、サーバー($2000~)、ソリューション($500~)、PioSolverEdge($1100)、Monker(€500)となんだかんだポーカーために70万以上使ってました。ポーカーお金かかりますね。



終わりに

 本記事で伝えたかったことをまとめておきます。

・spinは勘違いされがちですが、そこまで分散が大きくないゲームです。しかも実力がすぐにわかりやすいです。

・spinにはレンジを覚えたり分析したりといった地味な作業が求められるので、向き不向きがあると思いますが、時間制約がなく良い時給が狙えるといったメリットがあります。特に収入を求めている方にはお勧めのゲームです。

・ただ、将来性に不安がある、リアルのポーカーにつながりにくい、そして本気で勝ちに行くならある程度の初期費用が必要になるというデメリットもあります。

・以上を踏まえてデメリットよりメリットの方が大きいと判断された方は、是非一度spinをプレイされてみてはいかがでしょうか。

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