婚活の余談
だいぶ前に(8年ほど前?)村上春樹さんに期間限定でメールで質問できるサイトが開設されて、4万通弱の質問が寄せられたうち、3か月以上の日数を要して一割近くの回答を村上さんご本人が読者にされた企画があったんですね。
そのなかに「結婚の決め手はなんなんだと思いますか?」という質問があって、それにたいして村上さんは「僕の考える結婚の基準は、この人といたらぜったいに退屈しないだろうな、と思えること」と回答しておられました。
私自身、その回答自体に深い感銘は受けなかったのですが、そうですね、もちろんその人といることに退屈しないことは魅力的な要素だけど、必要な条件かというとそうでもない気はします。
ともかく、私は4年ほど前に横にいる奥さんにたいして、よしこの人と結婚して家庭を築こうと決断したし、うまくやっていけるかもしれない、という直感が経験則かわからないけど、そうやって結婚できたし、いまのところ大きなトラブルもなく(小さなトラブルはいくつかあって、じつは一昨日まさに勃発してしまったことについては静観中です。詳細は割愛します)結婚生活は継続できています。
婚活をされている皆さんがだいたい直面すると思われる問題、とりわけ、結婚相談所経由で知り合ったお相手にたいして「よし、この人と結婚しよう/結婚したい」とどういった基準でのぞむのかというのは、悩ましい問題であると想像します。
今回は、その「退屈しないこと」ほど明確な基準ではないけれど、結婚後にいっしょに生活したら共有しなくてはならない価値観や生活習慣のようなものを取り上げてみたいと思います。要するに、場合によってそれにうまく馴染めないと長いこといっしょに生活するのがしんどくなる側面についてです。必須ではないけれど、あるに越したことはない、余談のようなものですね。
食べ物の相性
うちの奥さんは食べることが大好きで、人生で一度も二日酔いになったことがないほどの胃腸と肝臓?の強さをもつ人なのですが、彼女との食べ物の好みはかなり一致します。美味いかな、と思って連れて行ったレストランで食べた料理にたいする感想もおおむね一致するし、なに食べたい?、なに食べよう、と考えるときの相性もとても良いと思います。
これが味の好みが一致しなかったり、偏食でないものの極端に好みが違ったりすると、それはそれで生活しづらいですよね。
肌の相性
この相性を結婚や恋愛の一番大事な要素にする人は案外少なくないと思います。ふだんの生活のなかでイチャイチャして、寝室のなかでもまたより深くイチャイチャする、この部分の感覚は、お相手によって持てる人と持てない人があると思います。理由もなく手をつないでいたい人っていますよね。本能的にスキンシップしていたい人。
金銭感覚
夫婦のどちらかがたくさん稼いでいても、二人のどちらかが浪費家であったならそれはそれで関係がギクシャクしてしまう、それです。節約家/倹約家でなくとも、同じような金銭感覚で「足るを知る」生活を送れる人と出会えることもまた大事ですよね。
テレビや音楽の相性
東日本で発生した震災当時、自宅周辺に電気が復旧するまでの1か月くらいの期間だったか、それまで私たち家族は(母と姉と私の3人家族は)テレビのないラジオの音声だけの生活を過ごしていたのですが、私はそれがある意味静かでとても好きな時間の流れ方でした。
当たり前ですが、テレビは映像と音声によるツールで、いっぽうラジオは音声だけです。発せられる言葉、その音声だけでリスナーに物事が伝わるようにできているので「ながら」がしやすい。掃除しながら、料理しながら、やさしい本を読みながら等々がしやすかった。
結婚前、私の頭のなかではちらっと、もし筋金入りの非テレビ視聴主義?の女性と結婚することになったら静かな生活を送れるんじゃないかな?と妄想したのですが、うちの奥さんはしっかり録画してテレビを観る人でした(笑)
また興味がないジャンルの音楽を日常的に近くで流されるのもまたしんどい。
趣味の相性
まあまあ多趣味だよな、と自負する私の趣味のなかで、同居する家族に一定の理解がないとやれないものに、ランニングと庭の芝生の手入れがあります。どちらをするにも、私がそれをしている間は、いまの状況では子供の面倒を奥さんに見てもらう必要があります。
ずいぶん前に読んだ、作詞家・音楽プロデューサーの秋元康さんの著書『趣味力』に書かれてあったことのなかに、秋元さんご自身は奥さまとの夫婦共通の趣味ではなく、奥さまが楽しめる特定の趣味、それで友人たちとでも一緒に外出してもらって彼女が家族を離れてリフレッシュする時間を過ごしてもらいたいというようなことたしか言っておられたと思うのですが、すごく共感できます。
たいていの人はやはり「あなたばっかりズルい」という感情はためこむものだし、相手に物事を押しつけて自分時間ばかりをたくさん過ごすと関係が悪くなる、と思う。うちの奥さんにもそういう時間を過ごしてほしい。
彼女には小物や工作やアクセサリー作りみたいな趣味が、私からみたら立派な趣味があると思うんだけど、なぜか彼女自身は私にとってのランニングや芝生の手入れほどの趣味とは思ってないみたいで、そのあたりのバランスをこちらでとる必要がありますね。共通する趣味が、美味しいものを食べることなので、そのあたりで。
友だちの数
ここで言う「友だち」とは、こちらの話を聞いてもらうために深夜1時でも電話をかけられる親しい間柄の友人のことです。実際にそういうことがあったら迷惑だろうけど、とにかく信頼できる、また甘えられる友人や同僚、親類のことですね。
私の見立てでは、うちの奥さんにはそういう友だちが最低5人はいる気がします。あくまで一方的な見立てなので真実はわかりませんが、仮にそうであるなら家族としてまた夫としてはすごく安心できます。なんとなく心強いですから。
と、まあいくつかあげてきましたが、最終的にはお相手とのそれ以外の要素で結婚を決断するのだと思います。私自身、妻との結婚を決めたときには、ちょっとマイペースに連れ回しすぎたかなと思うようなデートにも「今日は楽しかったです」と思いがけず言ってもらえたことや、彼女のプライベートな過去のこと(結婚を前提にしたお相手にたいしては先に言っておくべきこと)を誠実に話してくれたなど、それまでの私にしては珍しく、自分がどう感じるよりは相手がどうこちらの個性を受け入れてくれるのかに重きを置いて判断することができた。
自分で言うのもなんですが、人として成熟したってことですよね(笑)。物事がうまく行くときってそういうことなんじゃないかなぁと思います。
婚活する皆さんにも、そうした幸運が訪れますように。
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