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算数オリンピックファイナリストが、暗くて長いトンネルの出口にたどり着けたきっかけは、やっぱり算数だった【math channelメンバーインタビュー Vol.003】

こんにちは、math channelお手伝いライターのほんと申します。
math channelは、約40名のスタッフで運営しています。そのほとんどは、10代20代の大学生や若手社会人たち。
彼ら彼女らは、どんな子ども時代を過ごし、どんな道を歩んでmath channelで活動することになったのでしょうか。
そんなmath channelメンバーの「今まで」「これから」について、子育て・教育系フリーライターであり、小学生2人を育てる母でもある私、ほんが話を聞いていきながら、math channelの新たな魅力を紐解いていければと思っています。

* * *

メンバーインタビューの3回目に登場してもらうのは、東洋大学情報連携学部4年生の渡邉峻弘。math channelでは「ジョンソン」の愛称でおなじみです。
それでは、ジョンソンの「今まで」と「これから」の物語を、どうぞお楽しみください。

ジョンソン2

2020.03  math channel代々木オフィスにて

渡邉峻弘
<profile>
東洋大学情報連携学部情報連携学科2021年3月卒業
math channel設立前の2017年に明日希さんのメンバー募集に応募、以後自分自身も算数・数学の楽しさを伝えたいという思いで活動を始めた。
分野問わずに知識量や実力関係なしに楽しい・好きと思って堂々と言えるような環境を作りたい、その中で算数・数学が好きと思って言える人を増やしたいという思いで活動している。
2009年度の算数オリンピックファイナル進出、将棋アマチュア二段、JAPANMENSA会員

* * *

■算数への興味を爆発させた、2冊の本との出会い

math channel通の方はご存知かもしれませんが、実はジョンソン、小学校5年生と6年生の2年連続で算数オリンピックに出場し、6年生のときにファイナルまで進出した強者なのです!

算数オリンピックファイナリストって、初めて出会いましたよ……。
一体何がきっかけで、算数を好きになったのでしょうか?
「自分の記憶に残っていることで言うと、小3くらいのときに図書館で借りて読んだ『知識の王様』というシリーズの本かもしれません」
『知識の王様』! ポプラ社さんから出ていた、算数、歴史、漢字、ことわざなどを、学校の授業とは違うアプローチで楽しく読める全10巻のシリーズですね!

「そうです。今は絶版になってしまっているんですが、このシリーズを全部読んで、その中でも特に算数が面白くて。算数の奥深さ、面白さを、この本を読んで知ったんです」
なんだか、math channelに通ずるものがありますね! この本は、学校の図書室で?
「はい。図書室で偶然見つけて、なんとなく手に取りました。この本がきっかけで、気がついたらいろんな知識が溜まっていて。その後、『博士の愛した数式』を読んで、数字に興味を持つようになったんです」
『博士の愛した数式』って、普通の小説ですよね!? 何年生のとき読んだんですか!?
「小4か小5くらいだったと思います」
それくらいでも小説読めるんだ! 恐るべしです……。
「この本を読んで、数字についていろいろ調べるようになりました」
数字を? 調べる??? 一体何を調べるんですか?
「初めは『完全数』とか『友愛数』とか『素数』とか」
あぁ! 『博士の愛した数式』で色々出てきますよね!
「この辺りはけっこう調べました。あとは『社交数』とか『婚約数』とか。パソコンで調べていました」
パソコンで、『完全数』『婚約数』を調べる小学生……なんか、私の想像を絶しています……。
「ははは(笑)」
そこまで算数にハマるなんて、やっぱり幼い頃から何か幼児教室とかやっていたのでしょうか!?
「勉強は小学生になるまでほとんどしていませんでした。ただ、母親と一緒に図書館にはよく通っていたと思います。図書館で色んな本を読んでもらった記憶があります」
なるほど……。幼い頃からの図書館通いで読書の習慣がついていたから、学校図書館で『知識の王様』と出会い、それから『博士の愛した数式』にも出会えたのかもしれあませんね。
「それはあると思います。
ただ、僕も初めから字がたくさんある本を読めたわけじゃなくて、最初はやっぱり文字の大きい本から読み始めていました。
あと、学校で朝学習の時間があったので、そういう『本を読む機会』があったのは、大きかったと思います」

リスーピアイベント

■算数オリンピックでファイナル進出。でも、対策せず!?

そして、小学5年生で算数オリンピックに出場されたんですよね。きっかけは何だったんでしょうか?
「当時、学校で算数を担当していた先生が、母にそういう話をしたそうです」
学校の先生経由で! 相当算数好きが有名だったのですね(笑)意気込みはいかがでしたか!?
「実は対策とか何もしなかったんですよ」
え! 算数オリンピックなのに!?
「はい(笑)」
難しくなかったんですか!?
「結構難しかったです。小5のときは予選敗退でした」
それで、次の年はがんばるぞ! とリベンジマッチだったんですね!
「いやそれが、小6のときも特に対策してないんです」
してない。
「はい」
2年連続してない。
「はい(笑)」
算数オリンピックなのに対策してないということなんですね。
「そうですね(笑)」
それでファイナルまで出場したと。
「なんか、運が良かったみたいです。実際に点数もギリギリだったし」
それでもファイナル進出でしょ~対策もしないで~。すごいなぁジョンソンは……。
「いえいえ(笑)」

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算数オリンピックの問題って、やっぱり刺激的だったりするのでしょうか……?
「当時はそんなことは思っていなかったですね。でも問題は面白いなとは思いました」
算数オリンピックでファイナルまで進出したことは、その後の人生に影響はありましたか?
「math channelに入ってからは影響している感じがあるんですけど、実はそれまでは全然なんとも思っていなかったんです。中学高校のときは、周りにも言っていなかったくらい」
え! そうなんですか! なんか、もったいない……。
「そういう雰囲気じゃなかったんですよね」

■ 中学3年生、気がついたらトンネルの中にいた

お母さんからの勧めもあって小4から塾に通って中学受験をし、中高一貫校に入学したジョンソン。
志望校を決めた動機は、意外なものでした。
「家から遠くないということと、剣道をやってみたかったので、剣道部があるところというのが理由の一つにありました」
そうやって第一志望の学校に進学したジョンソンですが、実はここから、少し苦しい月日が始まります。
「周りの環境に、馴染めなかったんです。共学なんですが、男子クラスと女子クラスに分かれていて、男子クラスがかなり騒がしい環境だったんです」
男子クラス、確かにうるさそう……。
「もともと騒がしいのが苦手で、ゲーセンとかに入ると気分が悪くなるくらいなのですが、学校のクラスがずっとそんな感じだったんで……。
中3あたりから、ストレスで体調を崩してしまったんです」

中3で! それは高校まで続いた?
「タイミング的に他の高校に行くのも考えたんですが、それもそれで自分への負担が大きすぎるのでやめたんです」
確かに、次に通う高校が騒がしくないという保証はありません。
高校に進学してからもクラスの騒がしい雰囲気は続き、その環境がストレスでメンタルを崩してしまったのです。
「高校のときは落ち着いて勉強する感じにならなくて、高3のとき一応受験はしたんですがやっぱり難しくて」
浪人して、もう1年がんばることになったジョンソン。卒業したらメンタルは回復したのでしょうか……?
「いえ、なかなか改善はできず、浪人している間もあまり勉強できなかったです。母親の勧めでカウンセリングに通ったりしていました」
そんな中でも1年がんばって、大学に見事合格。志望校はどうやって決めたのでしょうか?
「基準としては、選択肢が多いところを選びました。情報連携学部というところで、プログラミングやビジネス、デザインなども学べる学部なんです。選択肢が多いというとこは選択を先延ばしにしているだけということでもあるのですが、その時点で決めるよりはいいだろうと思いました」

ジョンソン1

■深夜のテンションで送った、一通のメール

いざ入ってみると、大学生活はちょっと予想と違ったものでした。
「新設された学部で、新しいキャンパスもその学部だけしかなくて。
キャンパス内にサークルもまだ全然なかったりと、イメージしていた大学とは違った雰囲気だったんです」

確かにその環境だと、想像していた夢のキャンパスライフとなんかちょっと違うぞ!?って感じになるかもしれません。
「サークルも特にやっていなかったし、バイトは塾講師を辞めたところで。1年生の2月ごろ、何かやらないと!と思っていたんです」
このまま大学1年が終わっちゃうぞ!って焦りますね。そんなとき、math channelに出会った、と。
「まだmath channelという名前もなかったころですね。それ以前から明日希さんのTwitterは知っていたんですが、ちょうどメンバーを募集していたのを見たんです」
明日希先生のTwitterに講師募集の告知があったんですね!
「講師というか、イベントの裏方の募集でした。僕、実は最初、完全に裏方で応募したんですよ。
募集のTweetを見て、応募しようかどうかずっと悩んで。
何度も保留にしながら、夜中の2時か3時くらいに深夜のテンションでメールを送ったのを覚えています」

そういう深夜のテンションが必要なときってあります! 2月3日の節分に行われた説明会を経て見事採用され、ジョンソンのmath channelでの活動が始まりました。
「イベントの裏方を1回手伝って、そしたら次、ワークショップをやるという話になったんです。その内容を考える話し合いの中に、僕も入ってて」
あれ、なんか話変わってますね!?
「そうなんですよ(笑)。みんなでコンテンツを決めて、そしたらなぜか僕が一番にワークショップをやることになって」
裏方で入ったのに。
「はい(笑)。なぜか急にやることになりました。でも、良い経験になったかなと思います」

リスーピアイベント2

それから、math channelメンバーとしてがっつり関わるようになったジョンソン。
中学3年生から始まり、高校の3年間と浪人の1年間、そして大学に入ってからも続いていたメンタルの不調は、気が付けば少しずつなくなっていったと言います。
「math channelでメンバーたちと一緒に算数や数学の話をしていると楽しくて、気がついたらだんだん調子が良くなっていました。
今思うと中高は体育会系が強い学校だったから、算数や数学に興味がある人が全然いなかったんです。算数の話なんて、中高時代は一度もしたことがなかった」

中3から始まったジョンソンの長い長いトンネルは、math channelで算数と「再会」し、ここで出会った仲間たちと算数を共にすることで、出口へと辿り着くことができました。

math channelの講師として、マーケティング担当として、そして動画編集担当としてなくてはならない存在として3年間活動してきたジョンソンはこの3月に大学を卒業し、4月からエンジニアとして新しい一歩を踏み出すことになります。
ジョンソンがいないmath channelはちょっと想像できない!という方、安心してください。就職しても、引き続きmath channelメンバーとして活動は続けるとのことですよ!
「この3年間は、大学に通いながらmath channelで活動していたんですが、大学での活動とマスチャンの活動が3:7くらいの割合で(笑)。
算数に関することだけでなく、ミーティングの進め方とか人とのコミュニケーションとか、明日希さんが目の前でやってくれているのを見て、たくさんのことを学ぶことができました」

得難い経験ができたと語るジョンソン。きっと、math channelにとってもジョンソンにとっても、幸せな3年間だったのだと思います。
「言葉だけじゃわからない、その場にいてこそわかることを実践してくれて、その環境にいられたことは本当によかったです。
この先、『あれをやりたい』という明確な目標はありませんが、死ぬときに『人生楽しかったな』と思えればいいなというのが今の目標ですね」

社会人として一歩を踏み出すジョンソンの「これから」が、ますます楽しみになってきました。

ジョンソンprofile

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仲間って、大切。
そんな言葉、何度も聞いたことがあるし、マンガでもアニメでも映画でも、もはや常識のように使い古されている。
でも、ジョンソンの話を聞いて、改めて言いたくなりました。
仲間って、大切だ!
同じものに興味を持ち、同じ志を持って、同じ時間を過ごす仲間たち。自分が自分であるためには、そんな仲間の存在がいかに必要なのか、気づかされた気がします。


たまたま進んだ道の途中で、もしかすると仲間と思える人と出会えないゾーンがあるかもしれません。
でも、自分の好きなこと、大切にしたいこと、興味があることを忘れずにいたら、きっとまた、仲間と出会えるゾーンがやってくる。
そのとき、勇気を出して一歩踏み出せるか。
深夜のテンションでメールを送れるか。
それはきっと、あなた次第です。

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【次回予告】

次回は!
math channel取締役の才津葵さんが登場します!
いつもニコニコの笑顔が印象的な葵さんですが、実はものすごーくディープな人生を紆余曲折しながら、今ここにいます。
新しい生活が始まる春に読んでほしい葵さんの物語、どうぞお楽しみ。

【math channelメンバーインタビュー
back number】

これまでのメンバーインタビューはこちら

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『「わかった!」と「おもしろい!」の感動を広げよう』を理念に掲げ活動中! 幼児から小学生、大人まで算数、数学の楽しさを届けます。

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