【読書録】民主主義とは何か(宇野重規)
こんにちは。文系脳の数学教員です。
今回は『民主主義とは何か』(講談社現代新書)です。
この本は、2020年10月に発行されました。
著者は、東京大学社会科学研究所教授の宇野重規氏。専攻は政治思想史、政治哲学です。
この方は、昨年大きな問題となった日本学術会議任命拒否問で、任命拒否された6名のうちの1人です。
宇野氏の民主主義論は大学入試における小論文でテーマとして取り上げられることも多いです。
#小論文対策に是非
#受験生必読
さて、著者はこの本の冒頭で読者に以下の3つ問い(2択?)を投げかけます。
A1
「民主主義とは多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある。」
A2
「民主主義の下、すべての人間は平等だ、多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければならない。」
どちらが民主主義を正しく捉えていると思いますか。
では、次の問いです。
B1
「民主主義国家とは、公正な選挙が行われている国を意味する。」
B2
「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たちで自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない」
民主主義を選挙という視点でみるとどうなのでしょうか?
3つ目は、この問いです。
C1
「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意思を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」
C2
「民主主義とは理念だ。平等な人々ががともに生きていく社会をつくっていくための、終わることのない過程が民主主義だ」
制度か、理念か。さて、いかがでしょうか。
この本では、古代ギリシアから現代までの民主主義の変遷を丁寧に辿り、再解釈することで、これらの問いに答えようとしています。
これまで民主主義という言葉は、(少なくとも日本においては)比較的ポジティブな意味で用いられてきました。
しかし、歴史的に見れば、常にそうであった訳ではなく、むしろネガティブな意味を持っていた時代の方がほとんどなようです。今の民主主義が歴史の流れの一部にしか過ぎないことに気付かされます。
昨今、民主主義の危機といったことを耳にすることも多くなりつつありますが、そんな時代に私たちが考えなければならないことは、盲目的に民主主義を肯定することでも否定することでもないように思います。
こうして丁寧に歴史を学び、時代に合った形を模索することが必要なのでしょう。
これからの時代を考える意味でも、とても学びの多い一冊でした。
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