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「メリーポピンズ」('64米)

戦後になってディズニーはアニメーションだけでなく実写映画製作とディズニーランド建設に乗り出しました。「メリーポピンズ」はディズニーの実写作品を代表する作品だと言えます。 

とはいえ、この作品はアニメーションと特撮をふんだんに駆使したファンタジーで、まさにディズニーでなければ作れなかった作品と言えるでしょう。 

この作品の特撮(光学合成)はナトリウム・プロセスと言う特殊な合成技術が用いられていますが、これはディズニー特殊技術部のアブ・アイワークスが開発した撮影法です。

アブ・アイワークスは元々はディズニーと共にアニメーションを作り始めた親友同士でした。アニメーターとしては天才で、ディズニーは絵ではアイワークスにとても敵わないと、早くから演出、そしてプロデュースに回りました。 この2人が共同で生み出したキャクターがミッキーマウスなのです。

ミッキーの誕生はディズニーの運命を変え、これが生み出した莫大な利益でディズニーは「白雪姫」など長篇作品に進出し、誰も追随できない「アニメ王」になることができました。 

一方のアイワークスは、絵は自分が描いているのに作品の手柄をディズニーが独り占めすることに耐えられず、2人の仲は険悪になります。アイワークスは自分のアニメ会社を作りますが、アニメーターとしては天才でも会社経営は素人で、アイワークスのスタジオは数年で倒産します。 

その後、アイワークスはディズニー社に戻りますが、その時には若い優秀なアニメーターが沢山登場しており、彼の居場所は無くなっていました。

アイワークスは特撮技術者に転身し、ナトリウム・プロセスを始め画期的な特撮技術を次々に開発しました。「メリーポピンズ」は、実はアイワークスの、特撮マンとしての代表作でもあるのです。 

ナトリウム・プロセスがあまりに優れていたので、アイワークスはヒッチコックに呼ばれて「鳥」の合成技術を担当しました。あの人間を襲う無数の鳥の群れは、アイワークスによる合成画面なのです。 

特撮もそうですが主演のジュリー・アンドリュースの演技と存在感が素晴らしく、音楽も最高です。 2枚組DVD視聴は各一回のみ。 「メリーポピンズ-スペシャル・エディション-('64米)」 ジュリー・アンドリュース / ディック・ヴァン・ダイク / ロバート・スティーヴンソン


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