見出し画像

オーソン・ウェルズ「偉大なるアンバーソン家の人々」('42米)

オーソン・ウェルズが「市民ケーン」に続いて製作・脚色・監督を務めた監督第2作です。前作とは違いオーソン・ウェルズは役者としてはナレーションのみを担当。前作に続いてウェルズ主催のマーキュリー劇団からジョセフ・コットンが出ています。

19世紀アメリカ中西部の町で栄華を極めた富豪アンバーソン家が、20世紀の到来と共に時代の変化について行けず没落していく悲劇を描きます。

没落は、かつての栄光が輝かしいほど、プライドが高いほど惨めなものとなります。豪華な馬車で移動するアンバーソン家の人々は、ジョセフ・コットンが発明した自動車の非力さを笑いますが、馬車から自動車の時代になり、ジョセフ・コットンが大金持ちになるのと裏腹に、アンバーソン家は没落の途を辿っていきます。

「市民ケーン」で映画会社はウェルズに自由に作らせた結果、映画は傑作になったもののメディア王の逆鱗に触れ、多大なトラブルに見舞われました。会社は、今回はウェルズの自由にはさせませんでした。撮影が終わり、最初の編集時点では131分あった作品でしたが、ウェルズがブラジルに旅行中、会社は当時編集マンだったロバート・ワイズに命じてフィルムを大幅にカットし、ウェルズのオリジナルには無かったエンディングを勝手に撮影してハッピーエンドにしました。

帰国後、事態を知ったウェルズは激怒しましたが、契約上どうすることもできませんでした。作品を思うがままに作っていた天才は、初めて現実の壁に突き当たったのです。

それでも「偉大なるアンバーソン家の人々」は見るべき映画です。気位が高かった叔母が、かつての栄華を誇りつつ途中から言葉が意味不明になり、唐突に泣き崩れる演技は圧巻で、女優の演技力も凄いですが、ウェルズの高い演出力を物語っています。


https://jp.mercari.com/item/m30526333353
↑【メルカリ売り場】★


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?