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北野武「その男,凶暴につき」('89松竹富士)

視聴は一回のみ。

北野武第1回監督作品です。

捜査のためなら暴力も辞さない凶暴な刑事をビートたけしが演じます。これだけ聞くとクリント・イーストウッド「ダーティーハリー」みたいですが、コンセプトは同じでも、映画の「肌触り」がまったく違います。

ダーティーハリーはマグナム拳銃で撃ち殺しますが、たけしの刑事は拳銃も使います。しかし主として殴る蹴るの暴力で、その描写がとにかく「痛い」のです。

銃を使う時も、よくある銃を構えて「撃つぞ」と脅すのではなく、たけしの場合は予告なくいきなり撃つのです。一時が万事、北野武の暴力映画は従来のアクション映画・ヤクザ映画のお約束を外したところに成立しています。

北野映画の初期数作の暴力描写は「新しい」もので、映画界と映画ファンを驚かせました。それが国際的な評価にも繋がっています。海外の映画人も、北野武映画の暴力表現の新しさ・激しさに驚いたのです。

「その男、凶暴につき」は、当初は深作欣二が監督する予定でしたが、作品への方針が食い違って揉めていたところ、スケジュールのリミットが来て途中で降板。プロデューサーだった松竹の奥山和由は北野武に好きに撮っていいから監督をやらないかと依頼し、たけしは「脚本の手直し」を唯一の条件にこれを引き受けました。

現場ではお笑い芸人が初監督ということで、ベテランスタッフがあれこれ口を出してきましたが、撮影ラッシュを見てベテラン陣が黙ってしまい、そこからはたけしの好きに撮ることが出来たそうです。

完成した映画を見た奥山和由は、自分が見込んだ通りだと狂喜し、監督を降板した深作欣二も北野武の才能を高く評価しました。ここから、「世界のキタノ」の歩みがはじまったのです。

「その男,凶暴につき('89松竹富士)」


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