「セルゲイ・ボンダルチュク「ワーテルロー」('70イタリア・ソ連)
人類史上最大の製作費約7億ドルを投じた超弩級ウルトラ超大作「戦争と平和」のボンダルチュク監督が再びナポレオンを扱い、「ワーテルローの戦い」を映画化しました。
ただし今回は資本主義国との合作ということもあり、動員されたソビエト軍兵士は2万人と、10万人もスケールダウンしております。ソ連一国製作のような金に糸目を付けないやり方は取れなかったようです。
「戦争と平和」では見せ場のボロジノの戦いは実際のボロジノで撮影されましたが、この映画ではベルギーにあるワーテルローの地形をロシア国内のロケ地で完全再現するため、周囲の山の稜線をブルドーザーで削るなど、あり得ない無茶苦茶なことをやっています。
イタリア側のプロデューサーは大作映画ならこの人ありと言われたディノ・デ・ラウレンティス。フェリーニ「道」のプロデューサーですが、70年代以降は「キングコング」「フラッシュ・ゴードン」など底抜け超大作を作るようになっていました。しかし、「戦争と平和」のセルゲイ・ボンダルチュクが監督ですから、底抜けにはなっていません。
西側と東側のトップクラスのキャストとスタッフを集め、莫大な製作費をかけて製作された「ワーテルロー」でしたが、ボンダルチュクによるディレクターズ・カットは240分の上映時間がありました。これでは西側の映画館で興行できないので、ラウレンティスが134分にカットしたものが公開されました。ソ連では240分版が公開されたそうで、是非こちらも観てみたいものです。
短縮された映画の興行成績は惨敗に終わります。このあおりを受けて、やはりナポレオンを映画化しようとしていたスタンリー・キューブリック「ナポレオン」の製作が無期延期になりました。すでに製作準備が始まっていて、18〜19世紀の衣装まで作り始めていたキューブリックでしたが、急遽企画を変更、やはり同じ時代を舞台にした「バリー・リンドン」を製作することになりました。「ナポレオン」の準備を無駄に出来なかったからです。
ナポレオンを演じたR・スタイガーの顔がそっくりさんで笑えます。演技も熱演。そのほかルイ18世をオーソン・ウェルズが演じています。米国版のBlu-rayが出ていますが、日本語字幕が付いていないのでご注意下さい。
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