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クラウド導入で失敗する企業・成功する企業(前編)

クラウドの導入で混乱する理由は…


 世間では「DX」という言葉が呪文のように唱えられ、クラウドがもてはやされています。
 特に中小企業にとっては、イニシャルコストが抑えられ、導入スピードが速く、メンテナンスも不要…という謳い文句は魅力的に映るでしょう。まわりの企業が導入を進めると、「遅れてはならない」という焦りも生じるかもしれません。
 
 ただし、どんなに優れたクラウドシステムも、導入すれば必ず仕事がはかどるという訳ではありません。場合によっては、現場が混乱したり、かえって処理スピードが落ちたりすることさえあります。私たちもクラウドに関する相談を受け付けており、その数は日々増えているように感じます。理由は単純、使うのは結局“人”だからです。
 
 クラウド系のソフトは、一定のITリテラシーを持つ人に向けて作られています。例えばエクセルで関数やマクロを使いこなす人であれば「これは便利だ」と感じ、クラウドでつまずく人たちに対して「どうしてこれが分からないのか」といった反応を示すでしょう。
 
 しかし、まだ多くの人にとってクラウドはハードルが高いのも事実。私の知っている例では、社長が奥様に事務方を任せていて、PC操作に不慣れだった奥様が懸命に努力して、やっと市販ソフトを使いこなせるようになったところで社長が「クラウドを導入する」と宣言し、ストレスが爆発してしまった…ということがありました。 

他にもあるクラウドの落とし穴


 また、クラウド系のソフトは細やかなサポートが受けづらいという不安もあるようです。ベンダーは「万全のサポート体制」を謳っていますが、今は「持たざる経営」の時代。多くはアウトソーシングによるコールセンター対応になっていたり、チャットボットのQ&Aだったりします。問い合わせをしたものの、結局要領を得なかったというケースもあるようです。
 
 さらに厄介なのが、「運用中に管理者を変更した」といった場合です。管理担当者の変更は、IDやパスワードを引き継げばそれで終わりという単純なものではなく、初期設定のチェックや、クラウド使用における社内ルールの確認などにも手間がかかります。
 旧管理者が比較的高いスキルを持った人で、システムにカスタマイズなどを施していたような場合は、もっとややこしくなります。新しい管理者がより高いスキルを持っていれば解決なのですが、そう簡単にはいきません。
 
 このような事にならないためにも、導入前には社長やリーダーに的確な助言をし、導入~運用においては現場の実務面でのサポートができる“相談役”が必要になるのです。
(後編に続く)