日の出をめざして
車窓の向こうを、飛ぶように流れていく夜景。
車輪とレールが擦れる音。
「大学生活でいちばん楽しかったことは?」と聞かれたら、きっとこの旅のことを思い出すのだろう。寝台列車に揺られながら、そんなことを考えた。
気心知れた友人たちと共に、私は四国と広島を巡る旅行に出かけた。徳島で古民家に泊まり、香川でうどんを食べ、愛媛で宇和島鯛めしと温泉を楽しんだ。その後しまなみ街道を渡って尾道へ。尾道ラーメンを堪能し、最終日は広島でお好み焼きを頬張った。思い返すと、食べてばかりな気がする。
楽しいことばかりの旅行だったが、いちばん印象に残っているのが、帰りに乗ったサンライズ出雲だ。カーペットが敷かれた「ノビノビ座席」で、友人たちとおしゃべりに興じるのは、修学旅行の夜を思わせる非日常感があった。
駅で買っておいたお酒とおつまみを楽しみながら、夜景を眺めた。これは、修学旅行では楽しめない、大人だけの特権だ。
ところで、私はお酒にすこぶる弱い。体調を崩すことはないが、コップ一杯飲むか飲まないかで、すぐに眠くなってしまう。アルコール分3%程度のお酒でも、一人では一缶空けることもままならないので、私がお酒を飲むのは一緒に飲んでくれる友人がいる時だけだ。この時も、友人が飲んでいるお酒をちょっとずつ紙コップに分けてもらって、私なりにほろ酔いのひと時を楽しんだ。
下戸のくせに(?)、私は飲み会の雰囲気が好きだ。私の周りには節度のある呑兵衛しかいないため、飲酒を強要してくる人間はいない。それどころか、私の酒量の限界値を私よりも把握していて、お酒の入ったグラスの代わりにリンゴジュースを渡してくる。お酒の助けもあって、ほどよく弾む会話と友人たちの笑顔を楽しめる時間が好きだ。
「ここで飲むしあわせ」。私にとっての「ここ」は友人たちがいる場所だ。彼らがいれば、アパートの一室も、寝台列車の一角も、たちまち「ここ」になる。
旅好きの友人のひとりが、窓の向こうを指差しながら、今列車がどこにいるのかレクチャーしてくれる。アルコールで火照った頬をガラスに押し付けるようにして、静かな街並みを見つめた。
旅の思い出を語らううちに、少しずつ日の出が近づいてくる。楽しかった旅がもうすぐ終わる。
次は、みんなとどこに行こうか?