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「君と世界が終わる日に」は和製ウォーキングデッド?

 (多少のネタバレを含みます)
 日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ「君と世界が終わる日に」(以下、キミセカ)。
元祖ウォーキングデッドならびにフランク・ダラボン作品のファンである筆者にとって非常に興味を惹かれた本作、調べてみるとなんと舞台が私の故郷・三浦半島であったことから「これは観るしかない」と意気込み、公開済みの第2話まで視聴してみました。
結果、、、「キミセカは和製ウォーキングデッド…ではないかな(;^ω^)」という結論に至りました。
 一番大きいと思った理由はズバリ「リアリティの欠如」です。
 本作はゾンビものでは定番の「サバイバル劇」です。ゾンビサバイバルといえば

「ゾンビから身を守る武器を探さなきゃ!」
「食糧はあとどれくらいもつだろう…」
「離れ離れになったあいつは無事だろうか…」

 そんなシーンが定番ですよね。時として飢え、喉は乾き、大切な仲間を失い、非現実の世界の中で主人公たちがそれぞれ一人の人間としてあがく姿にリアルを感じ、作品にのめり込めるのだと思います。

 しかし「キミセカ」ではリアリティがあまり重視されていません。

 第1話冒頭5分、主人公の間宮響(演:竹内涼真)は同棲中の彼女・小笠原来美(演:中条あやみ)に「今夜早く帰ってこれない?大事な話があるんだけど」とプロポーズを匂わせます。その後バイクでの通勤中にトンネルの崩落事故に巻き込まれて閉じ込められてしまい、仕事に持っていくはずだったお弁当を少しずつ食べ、飢えをしのぎながら瓦礫を掘り進め脱出を試みます。ここまではサバイバル感がありました。

 シーンが切り替わり「4日後」というテロップが出たところで驚きました。

 4日という長い間、わずか1食分のお弁当と天井からポタポタ垂れるわずかな水滴を溜めてそれを飲むという生活。おそらくはもうフラフラで立っていることすら辛いですよね。
しかし響は全く弱った様子もなく瓦礫を掘り続けています。ちょっ、お前どんだけ体力あるねん!と(笑)

 そして瓦礫の隙間からついに外が見えます。4日ぶりに外の日差しを浴びれば、眩しすぎて目を開けるのが辛そうです。
ところが響は日差しを全くものともせずひたすら掘り進めます。そしてトンネル脱出成功後、何事もなかったように歩き出します。

 もし響がフラフラになりながらそれでもプロポーズするはずだった彼女の元へ行こうとすれば「がんばれ!」と応援したくなりますが、大丈夫にしか見えません。主人公・響に感情移入がしづらく、没入感が得られないのです。

 その後なんやかんやあり、彼女とは会えなかったものの、「消防署に立てこもる生存者グループ」と合流を果たします。
 そこでは助けがなかなか来ず、備蓄にも限りがあるという理由で次の日の朝に全員で避難所である高校へ向かおうという話になります。
話の中で引っ越し業者で中間管理職をしている甲本洋平(演:マキタスポーツ)が感情的になり、
「こんなところに閉じ込められて、ずっとまずい飯ばかり食ってたら誰だってイライラしますよ!」
と叫ぶのを聞いた響は鯖缶などからけっこうな量の料理をつくり全員にふるまいます。
 備蓄に限りのある状況、避難所へ向かう途中何があるかわかりません。少しでも多くの食糧を残しておきたいでしょう。美味しいものを食べれば気も和らぐかもしれませんが、一人くらい
「大切な食糧を使いすぎるな」と怒る人間がいてもいいような…

「こんな時にのんきなもんだ」とさきほど切れ散らかしていた甲本洋平が呆れた様子で言いますが、響は
「でも、飯は生きる基本ですよ」とちょっとカッコつけて言います。
しかし響は4日間わずかな食糧だけでもピンピンしている男です。あまり説得力がありません(笑)。

 第1話の終盤、避難所がゾンビの巣窟と化していたため、今度は避難所からも脱出することに。響は学生時代弓道をしていたようで、弓を使い活路を見出します。皆が脱出できるかと思いきや、小学5年生の女の子・三原結月(演:横溝菜帆)がゾンビに捕まりそうになります。コノセカには所謂「走るゾンビ」が登場するのですが、走るといっても人間のように規則的な動きではなく、やや姿勢を崩しながらカクカクと走るので命中させるのは難しいはず。ゾンビもののシューティングゲームなどをやったことのある方なら共感していただけるのではないでしょうか(笑)
しかし超人・響にはそんなセオリーは通用しません。頭に綺麗に命中させ、結月を見事救います。

 このように、あらゆるリアリティを排除し、響という主人公を引き立てストーリーを進行させる形をとっている「キミセカ」。まあ響がなんとかするだろう、というシーンが多く、サバイバルものとヒーローものがごちゃ混ぜになってしまっているという印象。主人公・リックが極限状態で時にはボロボロになりながらも力強くグループを率いるさまを描いたウォーキングデッドとは作りが違いました。

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