プレイヤーが気軽に遊べるTRPGシナリオの回し方
「TRPGシナリオ書きたいサーバー Advent Calendar 2022」閲覧中の皆様、メリークリスマス!
12/08の記事は、私、マッチ棒こと山内(@match_bo)による
TRPGコラム。
お題は「プレイヤーが気軽に遊べるTRPGシナリオの回し方」です。
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TRPGとはプレイヤーがゲーム内世界の人物になったつもりになって考えて、あれこれものを言い合ったり争ったりして、プレイヤー皆でいい時間を過ごす遊びです。
いい時間を過ごすのが目的なので、短くても3時間ぐらいかかってしまいます。でも、やったこともない人に、たかだかの遊びに3時間くれ、っていうのは難しいですよね。
そこで本記事では、クリスマスパーティの前祝い(ゼロ次会)でも遊べる、短い時間でも遊べるTRPGと、その遊び方を紹介します。
「プレイヤーをやったことない人向けTRPG(商業のみ、どれも一時間程度。GMは経験者が望ましい)」
・クトゥルフ神話TRPG
・トンネルズ&トロールズ
・Aの魔法陣
・クトゥルフ神話TRPG:
1920年代(第二次大戦前夜の前夜、アメリカ白人社会が絶好調だったころ)の、陽気で明るい西海岸のアメリカ人のふりをしながら、殺人マシンと出会って狂ったり死んだり殺されたりするゲームを遊びましょう。
クトゥルフ神話TRPGで短い時間でぱっと遊べる設定といえばデスゲーム(ホラーゲーム)です。別売りの追加データ集を加えることで、昭和初期な日本で帝国軍人したり、暗黒中世の無学な村人を演じたり、戦国時代後期でノブナガと戦ったりもできます(そして死にます)。
繰り返しになりますが、短時間ゲームセッティングでのクトゥルフ神話TRPGでは、ちょくちょくキャラがひどい死に方をします。が、これはチャンバラの端役がすぐ死ぬようなもので、いわゆるお約束です。
お約束をゲラゲラ笑いながらひどく死んでくゲームだと割り切るとすごく早く終わります。(遊び方にもよります)
・トンネルズ&トロールズ:
ハチャメチャファンタジー世界で地下迷宮に挑んでギリギリの集団戦に勝て! といいつつ、主に自分が殺人マシンとなって出会った敵を殺したり、逆に殺されたりするゲームです。
別売りの追加データ集を加えることで、モンスターと呼ばれる理屈の通じないヒャッハーな異種族になって善人たちの住む街をヒャッハーしたり殺されたりする遊びもできます。
どちらにしても、何でもありの殴り合い合戦(単に戦闘、と呼ばれます)が楽しい、スカッとするゲームになっていますので、すぐ終わります。(遊び方にもよります)
・Aの魔法陣:
「ゲーム世界の主人公はあなた自身、ゲーム世界を支配するルールは世間一般の常識です。でも無茶しましょう」という無茶ブリをどうにかヤリクリしてヒャッハーするゲームです。
プレイヤーは出されたお題に対して、「自分(キャラ)の置かれている状況説明と、そこからどうしてお題にトライする羽目になって、実際どうクリアする。」というのを見てきたように語ることでゲームを進めます。
基本的にはこれだけなので、すぐ終わります。(遊び方にもよります)
それぞれ、ルール説明をはぶいた実プレイ時間で、1時間程度で終わるゲームなので、ちょっと時間が余った時にすぐはじめられ、すぐ終わります。
今やAmazonでルールブックもサイコロも気軽に手に入る世の中ですので、紙と鉛筆と少々のお金さえあれば、いつでも始めることができるでしょう。
共通点
上記3つのTRPGシステム(もしくは、その運用)に共通することとして、プレイヤーキャラクターの状況が確定しないとどうにも動きようがない。というのがあります。
多くのTRPGは、そこをゲームマスターが懇切丁寧に説明する(そしてだれる場合が多い)のですが、そこは今回、時短ゲームですから、うまくプレイヤーの知識を動員できるようにする必要があります。
卓参加者の持ち時間を調べよう
時短ゲームといっても、どのくらいの持ち時間を参加者達は持っているのでしょうか。
例えば、昭和初期な日本で帝国軍人する(クトゥルフ神話TRPGサプリメント「クトゥルフと帝国」)クトゥルフ神話TRPGを、上記のセッティングで一時間で遊ぶとしましょう。
プレイヤーが3人いるとします。「脳を缶詰に入れて持ち去る殺人マシン」が今回の敵だとします。
クトゥルフ神話TRPGですから、キーパー(GMのことです)がプレイヤーの倍喋るとして、一人当たりの持ち時間は、60分を5(プレイヤー人数3+キーパーがプレイヤーの倍喋るので2)で割って12分。
オープニングフェイズと、ミドルフェイズ(調査過程を描く本編)と、エンディングフェイズ(殺人マシン登場とそのワンアクション対応)とに分けたとして、割合はオープニング:ミドル:エンディング=2:4:1としたとしましょう。
この割合で、それぞれ喋られる時間は最大で以下の通りです。
フェイズ分け|プレイヤー|キーパー
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オープニング|3分25秒|6分51秒
ミドル |6分51秒|13分42秒
エンディング|1分42秒|3分25秒
聞き取りやすいしゃべりの速度は、1分間に300文字といわれていますから、オープニングでキーパーが喋られる文字数は2055文字。
判定とその結果を喋るのに文字数の6割を持って行かれるとして、描写や状況説明に使える文字数は822文字です。822文字で昭和初期の日本と現代日本の違いを説明できるでしょうか。厳しいですよね。
説明時間を圧縮する方法
そこで時間を圧縮する手段がいくつかあります。
まず第一に、ぶっちゃけて頼む。シナリオの大まかな所を喋ってしまった上で、プレイの過程を楽しんで貰う、とするものです。(※1)
次に、現代日本との差分のうち、今回のシナリオに関係するところのみ紹介し、基本的にプレイヤーは現代日本の常識でキャラクターを動かして良い。とする手です。(※2)
さらに、プレイヤーキャラクターの状況設定はプレイヤーに任せましょう。プレイヤーに質問して、回答をオウム返しに(多少の補正を入れつつ)返して設定を確定させます。(※3)
407文字。ここまで(オープニングフェイズの冒頭)で1分強ぐらいです。大分圧縮できましたね。
もちろん、これをノー準備でできるかというと難しいので、事前準備をしておくのはとても大事です。シナリオの描写文というのの存在意義とは、実はこれです。
プレイヤーが決めた状況設定を拾う際の注意点
※3でしめした、「プレイヤーキャラクターの状況設定をプレイヤーに任せる」を実行する際には注意点が一つあります。
それは、プレイヤーの設定が、卓参加者がフォローできるものかどうか、きちんと判断する必要がある、ということです。
フォローできうるかの判断には、他プレイヤーがフォローできるか、というものと、GMが対応できるか、というものも含まれます。
また、GM側が無理くりに、無限にキャッチアップすればその分おもしろくなるか、というと、そういうこともありません。
GMは用意した状況にそぐわないもの、対応しきれないものについては、その行動が面白い、正しいという尺度とは別の判断で、対応する必要があります。
楽な対処
こうした場合の「とても面白いけどフォローできない」プレイヤー設定について、どう回答したらいいでしょうか。
GMとして有効で、かつ楽に適用できる技術としては、
「うん。それは面白いね。だが申し訳ない。僕には対処できません」
と素直にあやまることです。
描写についての対処
同様に、描写についても、「こういうのはあり?」と聞きながら、描写を重ねていく姿勢が大事です。また、無理なときは、「ごめん、それは無理!」と、先に言う姿勢もまた大事です。
キャラクター描写や情景描写の、暴力性、残酷性とかの耐性、好みは人それぞれです。そうした、世間にあまたある性癖を全部挙げて、アレは大丈夫、コレは地雷。と挙げていくのは実際無理ですよね。
もちろん、事前にシナリオの解説冒頭である程度のセンシティブ要素は列挙できますが、全てを列挙することはもちろん不可能です。
なので、「(無理の時の)はやめのお詫び」はとても大事です。
究極のマインドセットとは
このへんがプレイヤー・GMの双方にあると、TRPGは気楽に遊べると思います。
とはいえ、卓の参加者は別にあなたを取って食うわけではないので、お互いが「ゲームの時間中、僕は皆の楽しい友人である」と思ってフレンドリーに接すれば、基本的には何とでもなります。エンジョイしましょう!
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以上、マッチ棒こと山内の「プレイヤーが気軽に遊べるTRPGシナリオの回し方」の紹介でした!
「TRPGシナリオ書きたいサーバー Advent Calendar 2022」
明日の記事は、窟竜サルド@東方&TRPG解説Vtuberさんの、
「D&D5eでホード・ミミックのシナリオを書く予定です」だそうです。
楽しみですね!
リンクはこちらから!→https://adventar.org/calendars/7376
それでは明日も、メリークリスマス!
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