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【イギリスの学校農園で暮らす】 日々のこと-冬-

現在、イギリスの特別支援学校の中にあるファームでバイオダイナミック農法や治療教育を学びながら働いています。去年の10月に来て、今月で5ヶ月目となりました。予定としてはVISAの関係があり、今年8月まで。
最近は正直なところ、何かすごく問題がある訳ではないけれどイギリスのどんよりした天気も合間ってパッとしない気持ちで過ごしています。
私は、2017年までは東京でデザイナーとして働いていました。その時の生活とはもちろん大きく変わり、私自身も戸惑うこともあります。日本の友達と話しても大きなギャップを感じ寂しく思うこともあります。
最近色々と考えてパッとしない理由も少し分かったので、今回はここでの暮らしの日々のことや今の思いなどを、冬の記録としてまとめておきたいと思います。

まず、日々のルーティン

8:30〜 ミーティング 
ランドチーム(私も含めファームで働くメンバー)、先生達、セラピスト 40人ほど全員でミーティング 昨日の生徒の様子や連絡事項等
9:00〜 動物達に餌やり
ブタ30匹,5ヶ所,合計20kgの穀物を餌やり、ヤギ12匹を小屋から出して外の柵の中に連れて行って餌をやる,小屋掃除、ヒツジ10匹,2箇所,餌やり、ウシ10匹ほどの小屋前を掃除,干し草をあげる
10:00〜 曜日によって違う作業
月曜日 1時間半×3クラス 子供達が外で活動するのをサポート
火曜日 学校のすぐ横に新しく作り出しているガーデンの作業(ひたすら土を運んだり)
水曜日 午前:野菜を生産している大きな畑での作業(冬の間は剪定や新しい堆肥を運んで来たり)
    午後:バイオダイナミック農業に関しての勉強会
木曜日 朝8:00〜 知育教育に関して勉強会
    21万平方メートルほどある学校内の敷地のまだ手がついていない部分を整備していく(主に広場になる部分等の剪定)
金曜日 ファームに関しての雑用をこなす(今の時期は古いフェンスを外したり、これがかなり重労働)
12:00〜 食堂でお昼ご飯
13:00〜 午前中の続き
16:00 〜 再度動物に餌やり、明日の餌の準備

こんな感じで、17時までにはだいたい終わります。
ただ、動物がいるので夜中に出産に立ち会ったり、鶏が狐に襲われたり、羊が柵から逃げ出したりなど、イレギュラーなことが起これば時間も休みも関係なく出ていかないといけません。土日も交代で餌やりがあるため2週間に一度しか休めません。
ファームにいる動物は可愛いと思うこともあれば、ムカつくと思うこともあります。どんなに可愛がっていても攻撃されることもあります。やはり、ペットではないから距離感が大事。感情を入れすぎないこと。特別に可愛がりすぎることもダメだし、世話をできていないこともダメ。適切な世話を日々続けなければいけません。

また、ここにいる生徒達は6歳から19歳で30人ほど。重い障害の子が多く実際ファームで働ける子は少なく、ほとんどみんな話すこともできません。すごくおとなしい時もあれば、日によって暴れる時もあります。私も外での活動中、子供に急に叩かれて鼻と鼻の下から流血しました。今でも生徒に対しては、いつどう感情が大きく変わり暴れたりするか分からず怯えてしまうこともあります。

植物も動物も子供も全て自分の思うようにはいきません。前もって準備していても全部使えない時もあります。自分の理想と違っても何が起きても穏やかに対応しなければいけません。

「環境づくり」という点でも、大きなビジョンはあっても日々の作業は、ひたすら重たいフェンスを外したりなど地味な作業ばかりで、進んでいる実感がないことが多いです。

そんな毎日の中、高校の倫理の授業で習った「中庸」という言葉を思い出しました。偏らず穏やかな最善の状態ことでいること。

ここでの日々は、満点はいらないし、華やかな成果もいらない。例えるなら、大きなキャンプファイヤーも花火もいらないけれど、ろうそくの小さな火を消さず、日々続けて行くことを求められます。
デザイナーとして働いていた時は、人の為に作るからアーティストとは違うと思っていたけれど、やっぱりもの作りをするデザイナーは、花火を打ち上げるようなものだと思います。人が見たいものを綺麗な形として打ち上げてあげる仕事。
けれど今は花火は打ち上げなくていい、ひたすらろうそくの小さな火をキープすることを求められる。子供達が花火をしたいと言った時に、そっとそのろうそくを差し出すことの方が大事な日々です。

私はもともとすごく感情的な性格で、すごく明るい時もすごく落ち込む時も隠せず態度に出てしまいます。教育者と呼ばれる人には大人になった今でも注意されることの方が多いほどです。デザイナーとして働いていた時は、100点や120点をたまに出すので、どうかそれ以外は20点か0点でダメダメな私を許してくださいと思っていました。

そんな私が「教育」「環境づくり」という答えがなく結果もすぐには出ない事に、不向きながら向き合っています。日々移り変わって行くものだし、自分ではコントロールしきれない部分が大半で、人に託す部分が多く出て来きます。今は学校のメインビルディングの一室に住んで、いつも決められた時間にいつものメンバーと会い、平常心で動物や子供と向き合う日々。外出しようにも最寄り駅までドロドロの森の中の道を30分歩かないといけません。おまけにイギリスの冬は重い。晴れ間が少し見えていても1時間後には雨が降り出したりします。そんな環境の中、向いていないんじゃないかと思うことをひたすら続け、心も鬱々とすることが多い。はっきり言って息苦しいし、何に向かっていけばいいのか見失うことが多い。もはや苦行。なにかパッとしないと思う理由はこれでした。

ということで、新たに自分の目標を考えました。
「毎日60点でも40点でもいいから、日々続けること。満点でない自分が続いても堂々とすること。」
治療教育もバイオダイナミック農法も英語での生活も、私がいる短い期間では何一つゴールにはたどり着けないし、完璧にできる日なんて来ない気がします。けれど、100点が出せないと分かっていてもやる気を消さず今の自分を自分で肯定すること。

極端な性格の私は、中庸を心がけすぎて思い切り笑ったり楽しいと感じることもなくなってしまい、このままでは心や感性が死んでしまうんではないかと不安にもなります。まだバランスが取れません。けれど始めたばかりだし人生の中で見れば短い期間なので、もう少し不向きなことかもしれないけれど、続けてやってみようと思います。

今年のイギリスは暖冬ということで、少し暖かく感じる日もあったり、春の花が咲き出したりと2月でも春めいて来ました。冬の寒さが過ぎ去った後、また感じることは違うだろうし、夏にはもっと分かることがあるかもしれないと期待して、暗い冬を乗り切ろうと思います。



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