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【農業・芸術・食をテーマに3ヶ月でヨーロッパ6カ国(12)】 イタリア-トリノ スローフードについて

「農業」「芸術」「食」をテーマにヨーロッパを6ヶ国周ったシリーズです。

イタリア3ヶ所でのWWOOFを終えた後、スローフード発祥の地であるトリノを観光して来ました。今回はトリノで見て来たものや「スローフード」というキーワードで記事を書きます。大きなテーマなため、色々調べて出会った情報をまだ私自身も咀嚼しきれていませんが、今後見直すメモとしての気持ちも込めてまとめたいと思います。

スローフードとは

スローフードとは
1986年にイタリアのピエモンテ州でファーストフード fast foodによる食の画一化に対する危機感に対して起こった社会運動。食材選び、調理法、食べ方等のその土地の食文化や食材を見直し、本来の自然な姿に立ち戻ろうという運動、またはその食品自体を指す。より広い概念の「スローライフ運動(Slow movement)」の一部として提唱された。
スローフード協会というものがあり、日本も2004年からSlow Food Nipponという協会を発足させている。

「スローフード」というキーワード、ここ何年かでよく聞くようになりました。私自身も現在、農業に関わる生活をしていますが、国や言語をまたいで様々な活動や情報がある中、理解を深め自分の意見を持つことは難しいです。自分の言葉で一言で言うなら「人にも生態系にも無理のない自然な形で生産・消費のサイクルが上手く回ること」かなと今は考えています。

トリノで訪れた"EATALY"

EATALYとは、食品販売とレストランを併設したスローフードの精神をかたちにした総合フードマーケットです。第一号店は2007年にトリノで生まれました。商品セレクトからコンセプトまでスローフード協会のコンサルティングを受けており「食教育」をテーマにしています。1980年代半ば、ローマにマクドナルドが出来たり添加物の入った食品が多く出回るなど、大型流通による味覚の画一化や安全が危ぶまれて来た時代に、食に精通したイタリアの文化人たちが起こしたスロフード運動の中、3年の準備期間の後生まれました。青空市場を集合させたような健康的な場、売り手と買い手がコミニケーションを取り、納得した上で食品をを手にしてほしいという思いがあるそうです。
実際に訪れた感想は、広い敷地で高品質で見た目も可愛いの食品があり楽しいです。お値段はそこそこします。私も実際、お土産をいくつか買いました。レストランには行きませんでしたが、食品売り場の中にカフェ的なeat inスペースもあり楽しめます。お店の前には、野菜の苗が植えられており自然に優しいスローフード感も演出されています。つまり感想は、「お洒落、楽しい、少し高い、ナチュラル」。創業時の立派な信念、「一つ一つの商品を理解し納得した上で買う」などの気持ちにはあまりならず、もっと商業的な印象の方が強かったです。
そして私が思い出したのは、代官山にあったEATALYのこと。もう閉店しましたが、代官山の店舗の前にもトリノと同じような植物(野菜の苗)のディスプレイがあったことを思い出しました。何度か代官山の店舗を訪れたことがありますが、その時「スローフード」なんて全く意識していませんでした。野菜の苗のディスプレイが表現したいことなんて伝わらなかったし、高いけどお洒落で品質の良い「イタリアの食材」が買えるお店として認識していました。今も丸の内や日本橋に店舗がありますが、スローフードのお店と言うより、イタリア食材のお店として見える気がします。どういう戦略かは分からないので、良し悪しは言えませんが、根本の理念が伝わっていないのは事実。ライフスタイルに対しても意識が高い人が多い代官山という地で展開しても根付かなかった理由は、スローフードという理念よりもイタリアという異文化の方が先に見えてしまうからだと思います。それに対して青山で開催されているファーマーズマーケットが長く続いているのは、日本の生産者の顔が見えるからだと思います。
やはり、スローライフって、そこの土地の文化と繋がっていないと意味がないよねと感じました。

資本主義の中でのスローフード

トリノのEATLYでも感じた、テンションを上げて消費を促される感。そもそもスローフード運動は大型流通に対してアンチの動きだったのに、今やスローフードとしてブーム化されて資本主義の流れに乗っていることが多く、根本の思想から離脱しているものも多く見られる気がします。
アメリカで生まれた「ロハス」という言葉。昔は、ハワイに行ったらWhole Foods Marketに行ってオーガニックな食品を買う!みたいな憧れがあったけど、今はWhole Foods Marketの展開の仕方が本当に環境に優しいのだろうかと問題になっていたりもします。この「ロハス」という言葉に対して解釈が色々あり、問題視する声も大きくなっています。

ロハスとは
lifestyle of health and  sustainability(健康で持続可能な生活様式)
アメリアではオーガニック等を好むターゲットに当てて使われるマーケティング用語として使われるが、日本では健康と環境を大切にする生活様式として広まり、人によって解釈が違う。

「スローフード」と「ロハス」の違いに関して友人が参考記事を教えてくれたのでリンクを貼っておきます。

「ロハス」はもっと資本主義よりでビシネスで使われる言葉で、「スローライフ」の本質は違うという声がありますが、今回のイタリアの旅でも「スローライフ」も資本主義の流れに乗ってるじゃんということを感じました。特に北イタリアでは。
スローフードに関係して、2017年にオープンしたFiCOという施設が気になっていて、実際に訪れることはできなかったのですが、面白い記事を見つけたのでこちらも貼っておきます。

経済を回さないと継続できないので、資本主義が悪いとは思わないし、ブームが起きて多くの人が関心を持つこともいいことだと思います。
大事なのは偏らないこと。経済や利益に目を向けすぎて本来の意義を見失ってもいけないし、お金やマーケティングを悪と見なして頑固になり過ぎて衰退してもダメだと思います。

「食」に関して情報

「スローフード」や「食意識」に関して面白い記事を見つけたので、参考として貼っておきます。

「食」に対して今思うこと

勉強してもきりがなく掴めない「食意識」に関してのことですが、今思うことを書くと、
「スローフード」「スローライフ」「ロハス」の言葉の解釈に関しては、日本人が外国語を取り入れ展開させるのには限界があると感じます。もっと日本に住んでいる人の感覚に寄り添う言葉で展開していかないとと思います。あとは、感覚的にどういう買い物の仕方、ご飯の食べ方が気持ちいかという、自分のことを再確認することが大事だと感じます。私は、自分が作った野菜を食べたり、作り手が見える食べ物を買う方がも気持ちがいいと感じるし、自分でゆっくりと時間をかけて料理したものを好きな人たちと楽しみながら食べることに幸せを感じます。けれど毎日はやっていられないし、たまに出来合いを食べることだってあります。自分のいいと思う理想を認識をするけど、現実の時間やお金に限りのある生活の中でバランスを取って理想以外を受け入れること。これが言葉や社会に流されない一番大切なことだと思います。

その他トリノ情報

せっかくトリノを観光したので、その他の情報も書いておきます。
"Lingotto(リンゴット)"
リンゴットとは厳密には地名を指しますが、その地区にあるフィアットの自動車工場跡地を利用してできている複合施設を指していうことが多いです。せっかくジャコモ・マッテ・トゥルッコによる設計で面白いと言われている自動車工場跡なのに、なにも元の施設を活かせてない複合施設に変わっていて残念でした。
"aperitivo(アペリティーボ)"
アペリティーボとは食前酒のことで、夕食前の夕暮れの気持ちいい時間をゆっくりとお酒とおつまみで楽しむ習慣のことも指します。トリノはアペリティーボが栄えている町で、お店を選べば質のいいおつまみを安価で楽しむことができます。

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(↑これに後ほど温かいパスタや揚げ物がついて1000円ほど)

トリノはイタリア王朝最初の首都とあって歴史的なものも見れ、美食の町でもあるので美味しいものも食べれます。アーケードの街としても有名なので、雨でも濡れずに楽しめます。修学旅行生も多いせいか、お店の人も辛抱強く優しい対応をしてくれます。北イタリアは店員さんが冷たい印象がありましたが、トリノはゆっくり嫌な思いもせず楽しめました。

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