虹の橋のたもとに
「はじめに神は人間を創り給うた。そして人間がかくも弱いのを見て、神は人間に犬を与え給うた」この動物学者の至言によると、犬は人間とともに暮らすための生き物だということになる。
作者不詳ではあるが世界中に広まっている「The Ten Commandments of Dog Ownership (犬の十戒)」という英文の詩によると、人間と暮らすことになった犬は以下の様なメッセージを人間に伝えたいらしい。(小生拙訳)
(1)私の一生はだいたい10年から15年。あなたよりずっと短いです。その
時間をなるべくあなと一緒にいたいです。あなたと離れるのが一番つ
らいことです。どうか、私と暮らす前にそのことを覚えておいてくだ
さい。
(2)あなたが私に何を求めているのか、私がそれを理解するまで気長に待
ってください。
(3)私を信頼してください。それこそが私の幸せです。
(4)私をしつこく叱ったり、罰として暗い所に閉じ込めたりしないでくだ
さい。あなたには他にやることがあって、楽しみがあって、友達もたく
さんいるかもしれない。でも私にはあなたしかいません。
(5)私に話しかけてください。言葉はわからなくても、あなたの心は十分
私に届きます。
(6)あなたがどのように私に接してくれたか、私は決して忘れません。(7)私を叩いたり、いじめたりする前に覚えておいてほしいことがありま
す。私が鋭い歯であなたを傷つけることができます。でもそんなこと
しません。あなたを傷つけないと決めているからです。
(8)言うことをきかない、頑固だ、怠けている、と叱る前に私が何かで苦
しんでいないか気づいてください。もしかしたら、食事に問題があった
り、日に当たりすぎて消耗してたり、あるいはもう体が老いて、弱って
きているのかもしれません。
(9)私が年をとっても見捨てないでください。あなたもまた同じように齢
をとるのですよ。
(10)最後のその時まで一緒にいてください。「もう見ていられない」「居
たたまれない」などとは決して言わないでください。あなたのそばで
最後の日を安らかに迎えたいです。忘れないでください。私は生涯あ
なたを一番愛しています。
愛犬が逝った後の、私の心の穴はなかなか塞がらない。街で柴犬を見るたびに、今でも立ち止まり、振り返る。毎日そばにいたのに病の進行に気づいてあげられなかったこと、もっとたくさん遠出して楽しい思い出を作ってあげられなかったこと、悔しくてたまらない。
【2020年(令和2年)3月13日】
新型コロナウイルス騒ぎもどんどん大ごとになってゆきます。中国に端を発して、アジアだけではなく全世界に拡大しています。未曾有の人類危機という言葉もあながち大げさではなくなってきた感ありです。母さんも外出は控えて、極力家にいてください。
昨日、愛犬チェリーが息を引き取りました。2月16日未明に痙攣をおこし、救急病院に連れて行ったのですが、血液検査で白血球値が高いと言われたもののすぐに回復し、何事もなかったかのように帰宅しました。25日の未明に再び痙攣をおこし、27日、28日と嘔吐を繰り返し、近くの病院につれていきました。レントゲン検査の結果、肝臓の腫瘍が転移し、それにより胃が圧迫されて嘔吐したり、痙攣が生じているという診断がくだされました。先生は「犬の病気の進行は早いです。なんとか3月を超えることを目指しましょう」との診立てでした。
3月5日に右の後ろ足がマヒし、病院で痛み止めの注射を打ちました。その後は左の脚も経たなくなり、流動食もほとんど受け付けなくなり、痛みがひどいのか、断続的に悲しそうな鳴き声を上げるようになりました。それでも、何とか自力で立ち上がろうとし、トイレも自力で庭の芝生の上でし続け、一週間後には数歩を歩けるまでになりました。「チェリー、もうすぐ大好きな花桃が咲く。丘をまた散歩しよう。その後は駅前の桜並木の道を歩こうね」私は祈るような気持ちで、膝の上の彼女に語り掛けました。
息子達が懸命にネットで検索して、体に良い流動食、キノコエキスや山羊の乳などを取り寄せ、チェリーも頑張って少しずつ体を動かして、何とか自分で寝返りを打つまで回復したのですが、3/12の夕刻、長男が仕事から帰ってきたときには、もう冷たくなっていました。自力でケージを出て、数歩歩いて、息子を迎えに玄関に向かおうとしていたようです。
この家に引っ越してきて、大半の時間を一緒に過ごしたワンコとのお別れ。さすがにこたえました。
柴犬好きな人たちのグループ。そのFacebook に私が投稿した記事です。
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【私とチェリーの物語 最終章】
本日、チェリーが息を引き取りました。
桜の季節にわが家にやって来た小さな柴の仔犬。桜の花弁をくっつけた様なピンクの鼻が可愛いその女の子は、チェリーと命名され、息子達の可愛い妹、そして、私の「自慢の娘」となりました。
病気らしい病気をしたこともなく、1月29日に12歳の誕生日を迎えた後も食欲も相変わらず旺盛で元気そのもの。毎日の散歩では息を切らす私をリードで引っ張るように花桃の丘や、公園に続く石段を軽々とのぼっていました。
2月16日の未明に突然、痙攣のような発作を起こし、救急病院で抗生剤を打ってもらい、22日にはひどい嘔吐が始まり、近所の獣医さんでレントゲンを撮ったところ「肝臓の癌が転移している。なんとか3月を越すことを目標にしましょう。」という診断でした。その後はみるみる足腰が弱り、食欲もなくなり衰弱が進みました。
それでも何とか流動食を自分で食べ、いったんは下肢がマヒして立てなくなったのですが、やがてよろめきながらも自力で立ち上がることもできるようになりました。懸命に病と闘いながら、少しずつ元気を取り戻しているように見えたのですが、残念ながら楽しみにしていた桜の開花を待たずに旅立ちました。
チェリーが病魔におかされていた事にも、ひとりで闘っていた事にも私は気づいてあげられませんでした。いつもそばにいて、抱っこして、あの仔の事は一番理解してるつもりだったのに。無念です。悔しくてたまりません。
この世の向こうには、天国に繋がる虹の橋があり、その虹の橋のたもとに「さと」と呼ばれる場所があるそうです。そこは現世での寿命を終えたワンコたちが集まる場所で、緑の草原や丘を大勢の友達と一緒に駆けまわり、じゃれあって、楽しく遊び過ごす処です。美味しいごはんときれいなお水、そして優しい太陽の日差しに溢れていて、暑くもなく寒くもなく、ワンコたちはのんびりと穏やかに暮らしています。
現世での病や傷はすっかり癒え、年老いた者は若さを取り戻し、昔のように、そしてまるで夢のように、元気で幸せに過ごしているのです。残念ながら人間は「さと」の中に入ることはできません。
チェリーは今そこにいます。近所の公園で遊んだ懐かしい友達とも再会し、耳をピンと立て、丸く巻き上がった小さな尻尾を振りながら、草原を飛びまわっています。
残された時間、私たちと過ごす時間を少しでも長く、と頑張ったチェリーの姿を決して忘れません。とても立派でした。彼女を勇気づける私たちが逆に励まされるほどまっすぐに病気と闘いました。チェリーと暮らしたこの現世で、私は彼女のパパとして恥じることない人生を、一生懸命生きようと思います。誠実に、誰にも迷惑かけることなく。そして、いつか命の灯が尽きたら、私は虹の橋のたもとの「さと」の入り口に行き、ピンクのリードを手に大きな声で叫びます。「チェリー、おいで!待たせたね。」
彼女は全力で駆け寄り、私の腕の中に飛び込んで、顔中にキスしてくれるでしょう。私は頭を撫でながら首輪にリードを繋ぎます。そして二人で虹の橋を渡って、別れのない永遠の世界へと向かいま す。小川の流れる花の小径を散歩した頃のようにゆっくりと景色を見渡し、いろんな草花のにおいをかいで、一緒に笑いながら。
「柴いい」の皆様、長い間ありがとうございました。私とチェリーの物語はここでおしまいです。これからは読者として皆様とワンコの画像や投稿楽しみに読ませていただきます。とても素敵な方々をこうして繋がってこれたことでずいぶん励ましていただきました。チェリーともども心から感謝しております。ありがとうございました。
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母さんもこれまで何匹ものワンコを見送ってきましたね。こんなにつらいものなんですね。
心が押し潰されそうです。
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