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贋作ウラン硝子時計の実態を暴く!! ~ 後編

まえがき

ちまたで流通しているウラン硝子置き時計。
そんな時計を模倣したいわゆる”贋作ウラン硝子もどき置き時計”を入手したので、その実態を暴きます。
コピー商品とは言え、そのクォリティはどの程度か検証してみましょう。

入手した贋作”非”ウラン硝子置き時計

早速分解


ネジの頭が切り取られている

まずは裏蓋外し。
ここでいきなり問題に直面。なんとナットからはみ出たネジの頭がエンドニッパのようなもので食い切られていてナットが外せないのです。
ルーターでネジの頭を削り、何とかナットを外したのですが、今度はネジが時計本体から外れ、すっぽ抜けてしまいました。
なんと真鍮棒をL字に曲げただけのフックネジで時計の機械部を引っかけ、固定されていました💦

続いて、ゼンマイを巻くためのつまみ類の取り外し。針合わせのつまみは引っこ抜くだけ。ゼンマイを回すつまみは左ネジなので時計回りに回すだけ・・・・ゴキッ!

時計側ゼンマイラチェットがぶっ壊れました😅
さ~てどうすっかな???
裏蓋の隙間からピックツールを差し込んで軸に引っかけて固定して何とか撤去。
裏蓋を外して時計本体を取り出しました。


時計断面略図

取り出し後、フックと時計本体の位置関係を見たら、時計本体よりも裏蓋左右の固定穴の間隔が狭く、フックがベルに干渉している事がわかりました。つまり、ベルは鳴らない、いや、鳴らす前提で考えられていないのです。この設計には思わず苦笑い。。。

ここで確信!   Made in China!🐼

中央上が裏蓋と時計本体の固定用フック

そもそも裏蓋には、針合わせのつまみとゼンマイ巻き用のつまみ以外存在しておらず、ベルカバーから1センチほど離れた裏蓋からは、ベルのオンオフレバーや時計の進み遅れ調整用のレバーにはアクセス出来ないというポンコツ設計。

時計機械部(左)とベルカバー(右)

見ての通り、レトロ感を醸し出している裏蓋とは裏腹に何とも現代的なメッキとプレスマークのベルケース。メカも古さを感じさせません。
ベルのオンオフレバーや時計の進み遅れ調整用のレバーもあるのに、延長して操作できるようにもされて無い。
裏蓋にもわざわざスリットがあるのに? 

酸化処理されたケース(汚い!)

わざわざ時代感を出すために酸化処理していますが、あえて完全に後処理せずに酸化剤を残す事により、真鍮に緑青を発生させていたりスチール製のネジはブルー液で黒くしています。


機械分解・組み立て

時計側のゼンマイラチェットが壊れてゼンマイが完全に緩んでしまったので、これは後で何とかするとして、分解前にベル側のゼンマイを緩まないよう、針金で締め、四方八方から歯車や部品の位置関係を記録すべく写真撮影してから、裏板をそ~~~っと外します。

ばし!!☆

駄目でした(~_~;)
時計用バネがさらに、はぜました。
部品や歯車が飛び散りましたが、先ほど写真撮影したので何とかなるでしょう。

時計用ラチェット(左)を修理

まずは壊れた時計用ラチェット。巴型のバネ材が軸にカシメ固定され、歯車の穴に引っかかる事により反時計方向に回らないよう、戻り止めになっているのですが、軸のカシメ部分が完全に吹っ飛んでしまったので軸からバネ材が外れてしまいました。
試行錯誤の末、ステンレスワイヤーを骨材としてスチール製の軸とバネ材をスポット溶接して固定しました。
さらに安全を期して特殊フラックス入り半田で補強し、何とか修復できました。
各パーツの素材&加工クォリティはこの程度。決して良いとは言えません。

問題の裏蓋と時計本体を固定するフックは今後の事も考え時計ケースに半田付けして固定。一応ベルカバーに干渉しないようクランク状に軽く曲げておきました。

機械組み立て

何とか時計用のゼンマイを巻き戻しケースの縁に当てて組み立て。
事前に写真を撮影しておいてヨカッタ😄

組み立て後、一応、各軸受け、歯車、ゼンマイに注油しておきました。

問題だらけのクソ設計

組み立て後、動かしてみたらいろいろ機械部に問題点を発見。

  • ベルのゼンマイが緩むと時計用の歯車の軸を押し、時計が止まる。

  • ベルのゼンマイが切れてはぜると時計の歯車軸を直撃して曲げる。

  • ゼンマイの緩み、トラブル時の機械保護用のバネ止めが無いに等しい。

  • 時計用ゼンマイ側にもバネ止めが無い。

  • 進み遅れ調整用のレバーが固くて動かない。

  • 裏蓋を付けるとベルオンオフ、進み遅れ調整用レバーの操作ができない。

  • そもそもレバーの操作は考慮されていない、と言うか操作禁止!!   

  等々・・・

いかにも中国製贋作らしいクソ設計の数々💢💢💢

古いオリジナル文字板のカラーコピー(文字が茶色く滲んで不鮮明)

文字板なんか見ての通りテカテカの光沢紙にプリントされた、ただのカラーコピー。
オリジナルの文字板をコピーして、摘発逃れのためか、6時側に記載されているはずの”SEIKO” ”JAPAN”などの記載を消してプリントしたのでしょう。

でもね。12時側の”○◇S”マークは精工舎の意匠なのよ。

機械部の組み立てを終え、ゼンマイを巻いて一日ほど放置してみましたが、とりあえず時計としての機能には問題なさそうです。
そりゃあ、再度私が調整、組み立てしたのですからね😎

ただし!

  1. ベル側のゼンマイはある程度巻いておく事!(時計歯車に干渉する)

  2. ベルは作動しないようレバーはオフ!

  3. ベルは鳴らそうと思うな!ただの飾りで無いと思え!

  4. 部品のクォリティはオモチャレベル。長く使おうと思うな!

  5. 裏蓋は外した状態で進み遅れを確認して調整後、取り付ける!

はっきり言って「ゴミ」である❗🧺♻


外装の分解

機械部の組み立てが終わったので、次は外装を分解してみましょう。

酸化処理された鉄製パーツ(当然、後処理は手抜きだらけ)

傾いた頂部のボディビルダーみたいな変な飾り🔱をねじって回し、外すと屋根の硝子、各部品が外れます。こちらも時代感を出すべく酸化処理されていますが、まー、酸化液が残ったままで結晶化してるしシミなのか錆なのかわからないひどい処理。
パーツの仕上げも雑で、バリは残ってるわグラインダーの研削痕は残ってるわ・・・手抜きだらけです。

へこみ、歪みだらけの型硝子

硝子部品も見た目は良くても、細かい仕上げは雑でへこみや歪みはあるし、エッジの面取りも線が合っていないなど、丁寧な仕事をしているとはとうてい思えません。
むろんタダの色つき硝子なのでウラン硝子のように紫外線で発光したりしません。

(左)水平に研磨されていない (右)全体が捻れている
錆びた支柱の高さ合わせ用ワッシャー

極めつきは隠れて見えない支柱の高さ合わせ用ワッシャーまで錆びているあたり、わざとなのか、手抜きなのか理解不能🤔

水平調整のために脚が削られている。(右手前のみ未加工)

時計の収まっている硝子は白く濁っているので、てっきり研削して梨地になっていると思ったら、良く見ると白い塗料のようなものが付着しています。

時計の収まっている部分・・・塗装?

削ってみたら明らかに後から処理した事がわかります。
つまり、

”無理矢理取り付けた時計部分を外部から見せないための加工”
”贋作と見破られないようにする苦肉の策”

な訳です。

清掃・洗浄・組み立て後

こんな「ゴミ」レベルの時計に何千円も支払ったと思うと、怒りすら覚えますが、まあ、検証のためですから仕方がありません。
皆さんも「贋作非ウラン硝子ゴミ玩具置き時計」には十分注意してくださいね。

<参考資料>本物と贋作の違い

これが正解かわかりませんが、一応、自分が調べてみた範囲での本物と贋作の違いについて特徴の比較です。

画像は左が本物、右が贋作です。

注)画像はヤフーオークションより引用

「これは違うよ!」 「このほかにもあるよ!」 など、情報がございましたらコメントください。

◆時計が収まる本体硝子部分◆

本物はメカが透過して見える     贋作は白く濁って見えない

◆飾り脚◆

本物は脚の外周に模様がある           贋作は削りっぱなし

◆支柱・支柱飾り◆

本物は支柱の模様が太く、根元の飾りもなで肩  贋作は支柱の模様が細かく根元の飾りが厳つい

◆文字板◆

本物(左と中央)は6時側に記銘あり。文字も鮮明。  贋作は記銘が無く、いかにも!な茶色
硝子の色も本物は鮮明で硝子のエッジが透過しにくい  贋作はやや暗く硝子のエッジが見える

※文字板については精工舎のマークあり、なしバージョンがあるようです。

◆価格◆
過去の落札価格も含め、自分の調べでは本物は数万円程度の価格で取引されています。
贋作については大抵初期価格は数千円から始まり、落札価格は1万円程度ですが、中には5万円前後の即決価格をぶっ込んでくる不届き者もいますので、ご注意ください。
なお、いくら本物といえど、時代が時代ですから程度は様々で、エッジが欠けている、傷がある、時計が不動・すぐ止まる。。。。など難ありの状態である事が多い事を承知の上で入手してくださいね。

判断が難しい場合は入札、購入しないのも得策です。

★★★★ 皆様、くれぐれも贋作にはご注意を!!! ★★★★


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