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イントネーション間違い

しょうみ

関西では、正味(しょうみ)という表現をします。
「しょうみ、まだできてへんわ」
だと、「本当のことを言うと、まだできていない」という意味になります。

正味とは、元々の意味は「余分なものをとった本当の中身」という意味です。
例えば、段ボールに入ったミカンの重さの場合、段ボールの重さを抜いた中身の重さだけの事を正味と言います。

それが関西では、正味(しょうみ)というと「本当のところ」とか「実際のところ」という意味で使います。

大学生の時です。
中越地方から関西にきた同級生は、関西弁に慣れていませんでした。
理由はわかりませんが、彼は積極的に関西弁を使おうとしていました。

「なんでやねん」とか「あかん」とかベタな言葉を、おかしなイントネーションで言うので僕は違和感を覚えていました。
多分、お笑い番組に影響されていたのだと思います。

そんな彼が、「しょうみ」という表現を使いだした時です。
明らかにイントネーションがおかしいのです。(関西人はエセ関西弁に敏感なのです。)
ただ、彼の「しょうみ」は勢いが強くて、何を言っているのかよくわからないぐらいの変なイントネーションでした。

「ショーミィ!テスト勉強してへんねん」

もしかしてと思いました。

僕たちが通っていたのは外国語大学です。
彼は留学経験があるので、英語の発音がいいのです。
あきらかに「Show me」の発音です。

彼は変なプライドの持ち主だったので、関西弁の「しょうみ」の意味を誰かに聞くのが嫌だったのでしょう。
そうなので、自分なりに関西のノリに合わせようとしたのだと思います。

彼はいじられキャラだったので、しばらくは誰も彼に指摘しないことにしました。

滅多に言わない表現ですが、意識すると彼の「Show me」はよく聞こえてきました。
「Show me 今月金ないねん」
「Show me 消しゴムなくした」
「Show me 今日って何曜日やったっけ?」
わざと言ってんのかなぁと思いました。

その度に、笑ってしまいました。
「なんで笑ってんねん」
と彼は言ってきましたが、ずっと指摘しませんでした。
しばらくして、彼はどこかで気がついたのでしょう。

「関西人は、注目を集めるためにShow meというものだと思った」

とのことでした。

しょうみ、後にも先にも、Show meと言う奴は、彼以外に僕は見たことありません。
しらんけど。

一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!