ロン毛の男
「こんにちは」
男が予想に反して愛想よく声をかけてきた。顔をみると長い髪で隠れているが、案外若いということがわかった。
「どうも」女はあまりにも自然な挨拶につい返事をした事を少し後悔した。
「ここ座ってもいいかな?」図々しい。でも、ここまで強引なのは嫌いではないかもと彼女は思った。
「ごめんなさい。友達が来るの」
「じゃあ、友達が来るまでここにいるよ」
女は長髪の男は好きじゃない。けれど目の前の男は、良く似合っていた。少し付き合ってやってもいい気分になった。
「どうぞ」つい顔が綻んでしまった。
すると男はポケットから黒い手帳を取り出した。
「こういうものです。何の件かわかるね?」
やっぱり長髪の男は嫌いだ。
一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!