精神障害者、髪を染める

わたしには精神疾患がある。それによって行動が制限されることも多々ある。
でもわたしには夢があった。

それは金髪にすること。

でも病気を理由にずっとしてこなかった。お風呂に入れない日もあるし、メンテナンスに大金をかけられるわけじゃない。やめといたほうがいいだろうなって思っていた。

きっかけは2023年の始まりだった。柄でもなく新年の目標なんか立てちゃって、なんでもできる気がして、勢いで美容院の予約をした。
新しい年。新しい自分。なんだか一瞬だけ病気のことを忘れられた気がした。

当日。いよいよ薬剤を塗ってもらう。さようなら、わたしの地毛たち。きみのことも結構好きだったんだ。
ひんやりして気持ちがいい。痛くなる人も 多いみたいだけど、わたしはへいっちゃらだった。

シャンプーが終わってドライヤーをする前に鏡を見た。最初に思ったのは「ライオン……?」だった。なかなかいい感じ。わたしの中の野生が少しだけ表面化したみたいで嬉しかった。

足取り軽く帰宅。家族にはおおむね好評だった。(もっと反対されたりびっくりされたりすると思ってた)
昔のクラスメイトは真面目だけが取り柄のあいつが金髪で生活しているなんて思ってもみないだろうな。ざまあみろ。わたしは幸せだ。

新しい頭を手に入れて気分が上がって病気がよくなりました!なんて綺麗な結末では全くなくて、むしろヘアケアに時間をかけたり手間が増えたり大変なのだけど、それでもあの生まれ変わったような感覚を覚えている限りわたしはまた髪を染めるのでしょう。
やりたいと思ったことがやりたいと思ったタイミングでできることは当たり前なんかじゃないってこと、忘れないでいたいな。

生きます。