多くの人がGで曲を作るわけ
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先日とある記事に
「なぜSpotifyで最もストリーミング再生される曲の
ほとんどはト長調(G)なのか?」
という記事が出ていて
興味を持って読んでみた
https://jp.starsinsider.com/music/682541/spotify
この記事はその理由を
「ト長調のピアノ・スケールを弾くのは、
#も♭もないハ長調のスケールを弾くのと
同じくらい簡単なのだ。」
とある
そんなら#がひとつあるG(ト長調)より
白鍵だけで弾けるC(ハ長調)で弾けば
もっといいじゃんとも思ったが
作曲はきっとギターでも相当数されている訳で
記事にもあるように
ギターでの作曲の場合もピアノ同様
やはり弾きやすさによる偏重というのは
やはりきっとあるだろうと思う
キーGが多いのはむしろ鍵盤ではなく
ギターで作曲した為と言えるのではないかと思った
検証する
ギターコードで面倒と言えば
オンベースや吹っ飛んだテンションノート
はたまた押さえ慣れないジャズコードなど
ギターの弾き難さの尺度にも
そりゃ色々あるが
初心者をフルイに掛けるあのコードFの存在が
おそらく代表ではないだろうか
人差し指1本でフレット全体を押さえる形
これをバレーコード(せいは)という
バレーコードこそが面倒の第一歩だろう
だとすれば
ギターの場合キーがCだと
その主要メジャー3コード(ダイアトニック)に
バレーコードのFが含まれてしまう
キーがEやDかGやAの3コードなら
バレーなしにオープンコードでいける
多分ギターで作曲する人の場合
このeやDかGやAをキーにして作る可能性は
かなり高いと想像できる
これにダイアトニックのマイナーコードも含めると
一番バレーコードが少ないのがキーGである
少々私事になるが
僕の曲は圧倒的にAをキーにした曲が多い
それは恐らくロックというジャンルも関係する
つまりロックっぽいフレーズが弾きやすいのが
ロックギターにおけるAなのである
それと何より自分の声の音域に合っている
そう勝手に思っている
しかし実際はそんなはずはないのだ
どんなキーであっても
声の出る範囲内でメロディーは作れる
しかし真新しく作曲を始める時
ほぼ間違いなくAから始める
何故かと言うと
弾き慣れたダイアトニックなのだ
転調パターンも数種織り込み済みだ
作曲する際はなるべく
ギター演奏や理論に頭を消費したくない
勿論ギター上級者ならどんなキーでもパッと
Ⅵm6/Ⅱなんかも無意識に押さえられるのだろうが
コチトラそうではない
プレイヤーじゃないので
そうなりたいとも思っていない
出来れば可能な限り
そこんところに頭を使いたくない
だからキーを慣れたAに固定して制作し始める
ただそれには危険もはらむ
同じ人間が歌うのだから
声の出る範囲は決まっている
同じ人が同じキーで多く作曲すれば
どうしてもメロディーが偏る
偏ると言うより
キーに対する相対的なメロの響きが
どうしても変化に乏しい印象になる
どういうことかと言うと
周波数440hzのラの音で
「あ~~~」とロングトーンで歌った時
背景のキーがAの場合とそれ以外の場合では
そりゃもう全然印象が変わって来る訳で
個人的には出来ればキーは
バリエーションつけて作曲した方がいいと思う
例えばキーがCで
コード進行をCM7が2拍 Dm7が2拍
この1小節にメロが4分音符で
♩シ~ラ~シ~レ~
と歌った場合と
キーをAにしてAM7が2拍 Bm7が2拍
同じ♩シ~ラ~シ~レ~は
全然違って聴こえる
背景の和音と旋律の化学反応である
また一般的に男性ボーカルの最高音は
大体F(ファ)からA(ラ)あたりで
女性はC(ド)からE(ミ)で
どちらも2オクターブ内が良しとされる
生身なのでそれぞれ人の声域はほぼ固定する
男女では4度とか5度程度の差がある訳だが
これは楽曲制作のキーとは
実のところあまり関係がない
よくキーが高いとか低いとか言って
カラオケなどではマイナス3とか
プラス2でとかやっているが
あれはオリジナル曲があり
オリジナルキーがあるという事で
それを基準にした話である
ゼロから制作する分には
男性だから絶対にキーはGで作るとか
女性だから絶対にCで作るという事はない
分かりやすくキーをCにした場合
3 ドレミファソラシ
2 ドレミファソラシ
1 ドレミファソラシ
1のドレミは2のドレミのオクターブ下で
3のドレミは2のドレミのオクターブ上である
キーがCであればほぼ白鍵だけを使う
これで男性用の曲と女性用の曲を
それぞれ2曲違うものを作る場合
男性曲は1のミから2のソまでを使えばよい
女性曲は1のシから3のド辺りまで使えばよい
同じキーでも問題はない
キーがCでコードもCだった場合
メロディーの最後を考えると
最も完結しやすい音階はドであるので
女性は高いドの音で盛り上がって終われる
終わった感は半端ない
男性の場合は女性と同じドでは
高すぎて声が出ない場合がほとんどで
仕方ないのでオクターブ下のドか
ソの音とかで終わらせなければならない
終わった感は少々損なわれるが
終われない事はないし
それを狙う場合だって多くある
その楽曲にもよるので
一概にこれが答えという答えはない
ないがキーによりそういった差は
少なからずとも生じるという事
ではあるが
この様にグズグズ屁理屈並べても
実際はこんな事を考えながら
作曲している人はいない
上記は結果論的分析論的にこうである
というのが正しい
このSpotifyの話も結果的統計的に
こうであったと言うのであって
キーGへ少々の偏りがあるからと言って
そこに普遍的で数学的な理論や数式が
当てはまるという事にはならない
あくまで作曲は創造的な芸術である
芸術とまで言わずとも
計算では作り得ないものだし
もし偏りがあるなら
上記のような結果論的屁理屈ではなく
もっと人間的で精神的な世界
つまり人としての癖とか感情と言った事が
きっとそうさせたのだろうと思う
この記事にも書いてあるGのコードについて
「素朴で牧歌的で叙情的なものや、
穏やかで満ち足りた気分、
そして真の友情と誠実な愛に対する感謝の気持ち、
一言で言えば、
心穏やかで平和な感じのすべてが、
このキー(調)によって正しく表現される」
という表現は本当にその通りだなと思う
GにはFやAでは出し得ない
日なたのぬくもり感ある響きがある
それはずっと個人的な印象だと思っていたが
この記事を読んで
自分の感覚と同じ事を
欧州中世の人たちも思ったと思えば
なんだか嬉しい
そんなぬくもりのあるコードGだから
皆このキーで曲を作り始めるのかもしれない
他のコードそれぞれが持つ印象とその理由
これを考えてみるのも
きっと楽しそうだなと思いつつ
今回はこれまで