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天国と地獄

題 天国と地獄


ここは天国の門の前。

誰もいない。


どうしてだ?ぼくはキョロキョロとあたりを見回す。

周りには何人か戸惑った様子で辺りを見回している人々。


門番もいない、どうしたらいいのか分からないでいると、下からザワザワと声が聞こえてきた。


雲の上にある天国の門。

その雲は巨大で真ん中に穴が空いている。

そこから声は聞こえてきているようだった。


行って覗き込んでみる。

下には天国とは比べ物にならないくらいの人々。


わいわいと門の前に並んでいる。

地獄、と門には書いてあるように見える。


何でこんなに地獄に・・・みんな悪人ってことか?


僕は呆然としていると、下の地獄行きの人の会話が耳に入ってくる。


「ねえ、地獄って現実世界とほぼ一緒の世界なんでしょ?」


「そうそう、しかもさ、噂では、お仕置きしてくる鬼を狩ったりするイベント開催中だって」


「え?リアルで鬼を狩れるの?凄っ」


「人間が多すぎて、鬼の勢力も落ちてるんだって。だからやりたい放題、現実世界より楽しいらしいよ」


「オススメしてくれてありがとう!ここに並んで良かったわ」


同じように天国から会話を聞いていた人たちが次々と下の地獄の階に降りていく。


みんな、現実に近いほうがいいらしい。

天国は、どうやら、食欲もなく、常に幸福で何もせずにぼーっとしていられるらしいけど・・・。


僕は考えた末、雲の穴を下に降りた。

何もしなくていいなんて退屈すぎる!

やっぱり僕は刺激が強い世界が好きなんだな。


そして、常時、天国の門の前には誰もいない閑散とした景色が続いていくのだった。

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