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憧れの人

20歳の時に、風変わりなアルバイトをした

結婚紹介所

バイトを探す為、情報誌をながめていた。
時給 480円…いつの時代の話し?
時間 9時から17時
募集人数 若干名
内容 営業サポートとチラシまき

面白そうジャン!
早速連絡し面接を受けた。

街中にある古びたビルの一階に、事務所があった。
成人式用に、買って貰ったスーツ姿で面接に来たことを伝え事務所に入る。

中に通され若い男性に、履歴書を渡し面接が始まる
職務の内容や給与の説明を受け、いくつかの質問に
答える。

いつからか、出社できますか?
その場で採用となった。

事務所内は、パーテンションで仕切られた簡易的な
応接セットと3つのデスク
全体に薄暗かったことが、記憶に残っている。

社長と呼ばれる人は、初老の男性で他に事務の女性
営業マンが二人だけの小さな会社だった。

初日は、簡単な自己紹介をしたあとに先輩と二人
チラシを手にして地下鉄駅へ向かう。
人が行き交う地下鉄駅の構内に立ちチラシの入った
ティシュを配る。

殆どの人は受け取らないが、受けとる人は男性が
多かった気がする。

新聞の折り込みも行なっていたようで、時折事務所に問い合わせの電話があった。
会費は、女性は無料 男性は数千円だったと思う。

会員は、圧倒的に男性が多く女性は足りていなかったので、事務のお姉さんがサクラとして友達を
呼んだりしていた。

時折事務所に会員の男性が現れ、サクラも含まれる
会員名簿から女性を物色していた。
営業マンが間に入り見合いをセッティングする。

何度か先輩営業マンに同行し、見合いを見守る場面に遭遇し他人の秘密を垣間見る事が、不思議と楽しかった事を憶えている。

ある日の昼時に、事務所の電話が鳴った。
皆んなは、昼飯に出かけていて一人で電話番をしていた。

◯◯結婚紹介所です!
相手は若い女性のようで、会員登録したいとのこと
会費が無理であること等を伝え、簡単な経歴書を
郵送するよう伝えた。

先日の女性から送られてきた経歴書に目を通す。
??!!
見覚えのある顔。経歴書の内容を読んでいくうちに
中学時代の同級生だと気がつく。

彼女は、目立たない地味な女子だった事を思い出す
後日、面談に来ると言うので私は、その時は席を
外したいと先輩に伝えた。
彼女が、何となく気の毒に思えた。

人の秘密を知るようで、仕事は楽しく事務所で一番若い私は皆から可愛がられた。

前振りが長くなったが、ここからが本題。

特に二つ歳上の事務のお姉さんからは、何かと世話を焼かれ
ネクタイが曲がってるよ!
( 近づき直してくれた 😍)
ご飯一緒に行こう!
( 奢ってくれた 😅)
映画の試写券あるから見に行こうよ!
( 心の中ではイェ〜イ 👍)

彼女は、私より少し背が高く髪は腰までの
ロングヘアー
どこかで書いたが、私は小学時代のトラウマで
自分より背が高く髪の長い女性には、苦手意識が
あり目を見て話せなかった。

若く恋愛偏差値が低い私は、勘違いと共に憧れと
淡い恋心を持つようになった。

二人っきりでの映画館🎦
大人な彼女とのデートに、スッカリのぼせ上がる私
彼女が気になり映画の内容なんて頭に入らない。

映画の後に、軽く食事をする。
なんだか本当のデートみたいだった。
彼女は、喫煙者だった。
タバコ🚬を細くて白い綺麗な指ではさみ
煙を吐き出す横顔には、大人の色気ムンムン

◯◯君はタバコ🚬吸うの?
彼女にそう聞かれて、中二病が発病した私は、
吸いますと答えたが、自分のタバコが無い。

私ので良ければと一本手渡される。
初めて吸うタバコ🚬をふかしながら
時折、むせ込む私を笑顔で見ていた彼女。

彼女の吸うタバコは[ プロムナード ] と言う銘柄
甘い香りが特徴の海外製だった。

仕事は、楽しかったが会員が思うように集まらず
会社の経営は、厳しかったようで二人の先輩が
辞めると言い出し私も辞める事にした。

彼女への淡い恋心が、最後まで辞める決断を
鈍らせたが、一人の先輩が彼女の恋人と知り
諦めて、キッパリと辞めた。

もう一人の先輩が言っていた。
彼女は、私が弟のように可愛かったと…

暫くの間 街でプロムナードの香りがすると
彼女を思い出し切なくなる僕だった。