夏祭り 2
夏祭り 2
さて
見世物小屋を出て屋台を観て歩く。
[ 部活はなに? ] [どこの高校を受験するの? ]
[ どんな音楽聴いているの? ]
グイグイ質問してくる彼女に、戸惑いながらも
うつむき加減で小声で答える。
他愛ない会話をしながら時折、彼女の横顔を見つめる。
特別に可愛い訳ではないが、小柄で少女らしい仕草
歩く度に揺れる束ねたポニーテール
楽しそうな笑い声
異性と二人で会話などした経験は無く
なにをどう話せば良いのか分からずに、緊張と混乱が続く。
[ デート攻略法 ] [ 女性を喜ばせる会話の仕方 ]
ハウツー本を事前に、読んでおけばと後悔した。
そのままいくつかの屋台を通り過ぎると、少し広い
場所に出た。
大きな樽の中をオートバイ🏍️で、グルグル回る曲芸が披露されていた。
轟音と真っ白な煙を吐き、巨大な樽の中を走るオートバイ。
残りのお小遣いを考えると、諦めるしかない。
ましてや、女子が興味を持つとは考えにくく
スルーした。
奥に定番の( お化け屋敷 )が現れた。
[ ◯◯君入る? ]
彼女は、微笑みながら問いかけてきた。
そう!
ここで中ニ病が発病したのである。
[ きっと彼女は、私を試しているのだ ]
[ ここで男らしく振る舞えば、カッコいいと思われる]
お化けや幽霊は、苦手である。
しかし、彼女にカッコいい姿を見せたくて
[ 入ろう! ]
覚悟を決めて入り口へと向う。
料金を支払い入場する。
入り口の両脇には、白い着物姿の幽霊👻とガイコツがディスプレイされていて入る前から恐怖が、私を襲う。
入り口のすだれをくぐり中へと入る。。。
二人並んで歩くのがやっとの狭い通路を奥へとむ
真っ暗で足下もよく見えない狭い通路を更に進む。
突然、灯りがつきガラスの向こう側にお化けの人形
[ きゃ~ ] [ おわ〜 ]
先行する他の客の叫び声が、聞こえてくる。
私は、お化けを見ないように下ばかり見ていた。
[ ドン! ] 突然の大きな音に驚く私
[ キャッ ] 彼女も驚き声をだす。
バサ〜 バサ〜
目の前に突然現れた白い着物の幽霊が、無言で生首のおもちゃを振り回す。
[ やっ やだ〜 ◯◯君怖い〜 ]
私の制服の後ろをつかむ彼女。
私 [ おっおわ〜◯?☓〜%#… ]
私は、恐怖のあまり雄叫びをあげた。。
行く手を遮る幽霊
自然と彼女の手を握る。
幽霊の脇をすり抜けて急いで駆けだし出口に向う
彼女も強く握り返す。
二人で駆け出した。
手を繋いだまま無事に脱出に成功。
彼女 [ ありがと ]
二人は、我に返り手を離す。
彼女 [ ホント怖かったね! ]
私 [ 意外と平気だったよ ] 雄叫びをあげたくせに…
彼女の手は、なぜだか温かかった。
集合時間が迫る中、人混みの中を公園入り口に向かう。
[ ◯◯君 今日は、ほんっと楽しかったよ! ]
[ ◯◯さん、僕も楽しかった! ]
[ ◯◯君さ〜、記念にお揃いでなんか買おうよ? ]
集合時間が迫る中、屋台で売っていたキャラクターのボールペン🖊️を色違いで購入
[ 来年、受験だね。] [ 私、頭悪いからな〜 ]
[ お互いに、受験がんばろ!]
記念品を購入し、集合場所に向かうと他のメンバーは、既に全員集まっていた。
彼女は、待っていた友達の中へと走り出す。
彼女の左右に揺れるポニーテールを、ぼんやりと見ていた。
[ バイバイ👋〜 ]
[ またね〜 ]
互いに手を振り地下鉄🚇️の駅へと向うのであった。
彼女とは、それっきりであった。
今ならラインやメアドを交換するのだろうが
あのころは、自宅に電話☎するしか無い時代。
互いの連絡先は、知らないままで初デートは終了。
唯一の連絡方法は、女子のリーダーに聞くしかないしかし、その後に友人が女子リーダーと喧嘩して関係は終了した
記念品のボールペンは、暫く使用していたがインクが無くなり使わないまま放置。
やがて、行方不明となる。
小心者の私がなぜあの時、咄嗟に彼女の手を握り
夢中で出口に向かったのかは、未だ不明であり
ボールペンのキャラクターが、何だったのかも
未だ不明のままである。