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思い出ワインはなんですか。<フランス(ローヌ)/シラー>

みなさんの思い出ワインって、なんですか?


こんばんわ!3000円ワインの民、ますたやです(^^) さて今回は、『思い出のワイン』にまつわるお話です。

あらためましてみなさん、『思い出に残っているワイン』って、あるでしょうか。

たとえば、とっても感動するほどおいしかったワイン、とか。

旅先で出会った一期一会のワイン、とか。

めちゃくちゃ働いて手に入れた清水の舞台ワイン、とかーー

味わい、ロケーション、一緒に飲んだ仲間たち、目玉が飛び出るような値段・・・などなど、いろんな要素が組み合わさって、思い出のワインとなりますよね。

記憶のなかにキラリと輝く『思い出ワイン』、人生のなかでそんなワインと出会えることって、本当に素敵なことだと思います。

さて、わたしにもそんな、『思い出ワイン』があります。

そのうちのひとつが、今回の3000円ワインの作り手である、Paul Jaboulet Aîné(ポール・ジャブレ・エネ)のワインでしたーー


ポール・ジャブレ・エネ クローズ・エルミタージュ レ・ジャレ ルージュ [¥ 3430 ]

<ワインdata>

国:フランス(ローヌ) 種類:赤ワイン 品種:シラー ヴィンテージ:2017 生産者:ポール・ジャブレ・エネ インポーター:三国ワイン

<バランス>

酸味★★★☆☆ タンニン:★★★☆☆ 香り:★★★★☆


さて、ワインの感想の前に、まずは小話をひとつ挟みたいと思います。ときは2019年の春の終わりごろ、まだまだコロナのコの字もなかったあの頃へと、時代を遡ります。

当時のますたやはといえば、ワインは好きだったものの今ほど常飲はしておらず、基本的には外食のおとも、まれに洋食にあわせて自宅用に買うものの、3000円ワインなど当然高くてめったに手を出さない、だいたいそのような日常が、わりと数年ほど続いているところでありました。

ただ、ワインは好きだったんですよね。当時から。それで、ワイン1年生の本を楽しく読んだりなんかして、

なんとなく、葡萄の品種くらいをほそぼそと(本当にほそぼそと)、覚えはじめていた頃だったと思います。

でも、正直「おいしいワイン」がどんなものかなんて、実際にはよくわからなかったんです。だって、どのワインも、飲めば普通においしい。

レストランでいただくハウスワインなんか、どれも普通においしかった。カルディで買ってきたワンコインのワインだって、全然普通においしかったんです。

ちょっと冒険して、そのへんのスーパーで「すっごいおいしい」と噂のピノノワールとやらを買っても、これが果たして「すっごいおいしい」のかどうか、当時のアルパカには、どうもいまいちピンと来ない。おいしいかと言われたらまあおいしいし、でも「すっごいおいしい」って、これでいいのか・・・?

とにかく、好みを聞かれたら濃くて、重くて、果実味しっかりの赤ワイン!と答えとけ、っていう、そんなワインビギナーだった当時のますたや。

そんなますたやがある日おもむろに手に取ったのが、このポール・ジャブレ・エネの作る、『シラー2016』だったのでした。

▶かろうじて残っていた写真。謎の画角。

のちに行きつけとなる近所のワインショップに、『2本2000円コーナー』という超魅力的なコーナーがあります。

2本2000円なのにときどき1本の金額が2000円を超えるワインが置いてあったりする、謎の最強コスパコーナーなのですが、そこにひっそりとたたずんでいたのが、他でもない、こちらのシラーだったのでした。

この頃のわたしの「シラー」のイメージは、ざっくりと『重くて、タンニンがしっかりあって、ちょっと笑っちゃうくらい荒々しいやーつ』というもの。

要するに、どちらかというとシラーというよりはオーストラリアのシラーズ、それも、ワンコインデイリー級のごつごつシラーズのイメージが、強くあったんだと思います。

「そちら、けっこう、エレガントな作りですよ」

ソムリエが声をかけてくれたのも、このときが初めてだったのではないかと思います。2本2000円なんて安ワイン、しかもこちらのお店、実は基本グランヴァンを取り扱っているお店で、全体的に「いいお値段」のワインがゴロゴロしているんですが、そんななか結果的に1本1000円になっちゃうこんなワインのことまでも、こんなしっかり説明してくださるなんて…

そんな風に、ソムリエからのコメントに、ちょっと感動したことを覚えています。

申し訳ない、ってなんとなく思ってたんです。安いワインしか買えなくて、って。でも、ソムリエは本当に親切だったんです。それに、こんな安ワインでも、ちゃんと語るべきことがあるんだ、と。それで、あ~、こんな感じでもいいんだなぁって、嬉しくなったのを覚えています。

今ならわかる。きっと、しゃべりたかっただけに違いない

「シラーという品種なんですが、こちらはとても綺麗な作りなんですよ」

「エレガントで、綺麗な作り…?」

「こちら、女性醸造家が作っているんです。これを言うと時代的にあれですが、女性らしさが感じられるワインですよ」

いいですか、思い出してください。シラーに対する当時のアルパカの脳内イメージは、『重くて、タンニンがしっかりあって、ちょっと笑っちゃうくらい荒々しいやーつ』だったんです。それが、エレガントとは、一体なんぞや?

もちろん当時は「エレガント」の意味するところなど、まったくわかっていませんでした。でも、とにかくエレガントってことは、きっと、まあ… エレガントなんだろう、と。

エレガントだし、きっとピースフルかつヘブンリー、そしてマーベラスでファビュラスなんだろう、たぶん。と。叶姉妹の姉が脳裏を横切りながら訴えて来ましたので、

「じゃあ、これください。あともう1本は、このなかの一番高いやつを…

と、ちゃっかりコスパワインへの執着の片鱗をすでに見せつつ、エレガントファビュラスワインとして、こちらのシラーをうちに連れて帰ってきたのでした。


さて、このワインについては、当時夫が書いたVinicaのコメントを引用します。

リーズナブルなシラーは渋みが強い印象があるけど、これはまろやかで飲みやすい。肉料理と合わせるとまろみが増してコスパ感高まる◎ 南フランス行きたくなる。

うん、エレガントファビュラスかどうかはわからないけれど、とにかく当時わたしたちが持っていた「シラーのイメージ」が、見事にくつがえったことは間違いありません。

おいしかったんです。本当に。

今思えば、ローヌらしい果実味とふくよかさ、それを支える綺麗な酸味のバランス、それらのどれもが主張しすぎることなく、綺麗なバランスだったんだと思います。

たぶん肉料理を食べたんだと思いますが、肉料理とこのシラー、いいマリアージュだったろうと思います。

そしてこのあとしばらくポール・ジャブレ・エネのいろんなワインを買うようになっていくのですが、それはまた別のお話。


このポール・ジャブレ・エネとの出会いは、私のなかでじわじわと引っ張られていくことになります。

そうか、エレガントなワインって、こういう感じなんだ。女性醸造家がつくる・・・そうか、「醸造家」っているんだ。なるほど、えー、おいしいな。なんだこれ。シラーってこんないろんな味があるんだ、へえ。なになに、生産地は… ローヌ?ははー、ローヌね、知ってる。きいたことある。あれだ、ワイン1年生に書いてあったぞ、ローヌ。そうかー、ローヌ・・・ふーん・・・ほかの「ローヌワイン」も、こんなにエレガントファビュラスなのかな…

そう。このときわたしは言語化できていませんでしたが、このワインによって、はっきりといくつかの概念に出会うこととなりました。

(1)重いおいしさばかりではなく、軽やかなおいしさというのがある
(2)葡萄品種がおなじでも、全然違うタイプのワインができる
(3)地方によって、ワインの味わいに特徴が出る

・・・もはやこれは、今のわたしが楽しんでいるワインの楽しみ方の、ほぼすべてを網羅しているといっても過言ではありません。

そうです。わたしはポール・ジャブレ・エネと出会うことで、ワインの楽しみ方と出会ったんです。

こんな風に、わたしとワインを新しく出会わせてくれた1本、それがこのポール・ジャブレ・エネのシラー2016、きっとこれから何度でも思い出す、わたしの大切で大好きな思い出ワインの1本です。


さて、今回飲んだのは、そんなポール・ジャブレ・エネの3000円ワイン。さすがにローヌの3000円ワインともなってくると、いちおうAOCほにゃほにゃがつきはじめます。

ということで、こちらはクローズエルミタージュ、シラー100%でございます。

グラスにそそぐと、若さの特徴である「紫色」が際立ちます。2017年ではありますが、熟成のオレンジ色が入りはじめるにはまだはやい様子。ローヌシラーはよく「紫が強い」と言われますが、ご多聞に漏れずこちらのシラーも、けっこうしっかりとした紫色です。

グラスに鼻をちかづけると…「おっ♡」 あらやだ思わず声が。つい笑っちゃうくらい、うーん、いい香りです。柔らかな樽香に、黒系果実の豊かな香り。そして、これだけでもわかる、あー、もう、綺麗な酸が…!

待ちきれず、くちをつけます。はー、うまい!やっぱりうまい…

柔らかなタンニンと、ひかえめなのに豊かな果実感。時間がたてばたつほど、どんどん香りが深まっていきます。その背景を支える綺麗な酸と、こんなに個性が出ているのにも関わらず、柔らかにまとまった全体のバランス。

それから、ローヌワインにときどき感じる、実はちょっと苦手な動物感、要は ”ブレッド香” のようなものも、薄っすら感じないわけでもなかったです。ただ、ある意味ではこのかすかな野性味こそが、ローヌらしさとも言えるのかもしれません。

するする飲めるだけじゃない、ちょっとした味わいのつかみどころがある感じ。ただ綺麗なだけじゃなく、ちょっとした癖のある美人の感じ・・・なんていうか、イモっ子女子の最高峰、みたいな・・・褒めてますからね、これ、完全に。

なんかもう、嬉しくてちょっと泣けてきます。おいしいワインって、ほんとにおいしいなあ…;;ああ、ありがとう、ポール・ジャブレ・エネ。ありがとう、ワインの神様…!;;


コロナがひと段落してフランスに行けるようになったら、ローヌ地方を訪れたいと、ますたや家は常々考えています。

そして、ポール・ジャブレ・エネの醸造所に立ち寄りたい。立ち寄って、心からの感謝を伝えたい。できればあの看板に向かって、神への感謝を伝えたい。(二礼二拍手一礼)

▶もはやハリウッドのアレと同じくらい興奮するに違いない。

▶ アレ


きっとこれからワインを飲み続ける限り、いくつもの思い出深い『思い出ワイン』と出会っていくのだろうと思います。

でも、どの出会いも、一期一会。

たとえば、そう。ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドで、回生の祠から出て世界を見渡した瞬間の鳥肌を、もう二度とは経験できないようにーー

▶ あの瞬間を体験するだけで払ったお金の元が取れる、コスパ最強の最高ゲーム。もはやそのあとは実質無料です。

いつだってその瞬間の出会いを大切に味わいながら、いつか思い出になるすべてのワインたちを、これからもおいしく楽しくハッピーに飲んでいきたいと思います!

みなさんの、思い出ワインは、なんですか?ーー


ぜひみなさんの思い出ワインについても、コメントやnoteの記事で教えてもらえるとうれしいです^^

それではここまでお読みいただいて、ありがとうございました!次の3000円ワインでまたお会いしましょう。ますたやでした(^O^)♪

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ますたやとは:

関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)。夫婦で1本を分けあって飲みます。3000円ワイン以外のワインについては、Vinicaにて夫が更新中。2021年、夫婦でJ.S.A.認定ワインエキスパート取得。これからもおいしいワイン、いっぱい飲むぞ~!

twitter:@3000wine_tami
Instagram:@3000wine_no_tami

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