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エッセイ 渡る世間は鬼ばかり
新型コロナウイルスを巡る政府の緊急事態宣言が今月31日まで延長となった。ただ、新規感染者の減少が続けば、地域によっては、動物園や映画館などの施設の休業要請を解除するとのこと。
そろそろ、上映延期となっていた新作アニメ映画も見られるだろうか。その作品の名は「鬼滅の刃」。迫力ある鬼との先が読めない戦いにいつもハラハラさせられる。日本中で最も話題となっている作品の1つと言えよう。しかし、安易にワクワクできない自分もいるのだ。
4月のある新聞記事。新型コロナウイルスが襲いかかる前から、アニメ業界が過酷さを極めていることを伝えている。増加する作品数への対応、フリーランスや下請け会社を総動員しても足りない人手、長時間・低賃金労働といった働き方の問題など。その苦労は枚挙に暇がない。また2015年に日本でサービスを始めたネットフリックスなど海外配信大手が、日本の制作会社や日本のスタッフとのアニメ制作に参入したことで、人材確保がより一層困難な状態となっている。
人手不足だと仕事が回らないほか、若手の育成もできない。ここ10年でアニメーターの技術は目に見えて低下したと言う人もいるほどだ。
いくらアニメが好きだからって、過酷な環境で仕事を続けるのは辛いものがあるはずだ。好きなことを仕事にすることを全て自己責任で片付ける訳にはいかないだろう。
だが制作現場とは異なり、「鬼滅の刃」の主人公竈門炭治郎はどんな逆境でも跳ね除けようと努力する人物だ。諦めず果敢に鬼に立ち向かうその姿に日本中を魅了している。
当作品に、恋人を鬼に殺された男に炭治郎が優しく声をかける場面がある。
「失っても失っても生きていくしかないんです。どんなに打ちのめされようと」
渡る世間は鬼ばかり。
優しい炭治郎のメッセージにも鬼の気配を感じる自分がいる。
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