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お笑いマスタリー フルメタルマダム益村インタビュー 後編

(本稿は緊急事態宣言以前に撮影・取材をおこなったものです。)

芸歴2年目を迎えたフルメタルマダム。前編では駆け抜けた1年目での出会い、苦悩…様々な思いを赤裸々に語ってくれた。後編では養成所時代の挫折、相方との出会い、そしてこれからを訊いた。益村康平、彼の眼鏡に映る未来とは如何なるものなのだろうか。

NSC東京24期生として。

ーーー益村さんはよしもとのお笑い養成所、NSC東京校の24期生として2年前にお笑いの門を叩きました。

益村:懐かしいですね~(笑)北海道から初めて上京したので毎日緊張しかしてなかったです。

ーーー今回はNSC時代のお話をお聞きできればと思います。

益村:やだなあ(笑)

ーーー尖っていたという噂ですが、NSCの春はどのようなものだったのでしょうか。

益村:相方探しの会というお見合いみたいなイベントが教室で始めにありまして、そこで先輩MCからの「自分が一番面白いと思ってる奴~」っていうのっけのぶっかましポイントがあったんです。今思うと完全に罠なんですが(笑)そこで手挙げました。同じく手を挙げた者達が前に出されて、各々自己PRなり先輩からのおイジリ頂くんですけど…そこで僕の自己紹介カードに書いてあった「特技・手汗がよく出る」「短所・頻尿」が原因で先輩からおイジりによってなぜか手がおしっこ臭いキャラみたいになってしまったのが僕のNSCデビューでした。「手おしっこ臭いこいつと組みたい奴~!」っていう呼びかけにも誰も手を上げるはずもなく…。僕のスタートダッシュはおしっこ臭かったです。今思うとひどいな!?

ーーーなるほど(笑)でも臭いのは本当ですよね?(笑)

益村:ちょっと(笑)意外に清潔感あると評判なんですよ!ったく(笑)

ーーーその相方探しの会で大石さんと組むんですか?

益村:いえ、まだですね。そこで同じく「自分が一番面白いと思っている」元引きこもりの眼鏡で青ジャージの人と組みました。もう辞めちゃいましたけど。

ーーーなるほど

益村:手汗とか自分のコンプレックスを笑いにしてすごい!!みたいな感じでコンビ組まないかって言われて、早々に相方の探し会を抜け出しましたね。これが最初のコンビ「お花ウォーズ」です。

裸の王様

ーーー最初のネタ見せでとてもウケたという「お花ウォーズ」ですね。

益村:ちょっとやめてください(笑)最初のネタ見せで、人生初の人前での漫才を披露しました。めちゃくちゃ緊張して、僕緊張すると無限に鼻水出てくるんですけど...ちょうど隣に座ってた当時別のコンビだった大石から、話したこともないのに「めっちゃ鼻かむじゃんw」ってクラスの陽キャが気まぐれに隅っこの奴おイジりする感じのマウントいただいたの覚えてます。

ーーーネタを飛ばすコンビも多くいる中、益村さんのローなツッコミがハマり続けハイレベルな漫才を披露したとか。

益村:ハイレベルって(笑)そんなことはないですよ(笑)でも当時の相方と鬼のようなスパルタネタ合わせの成果が出たという感じです。ネタ合わせにストイックな漫才師に憧れてたし尖ってたので、当時の相方に他の同期と話すなとか、ギャグ考えてこいとか色々押し付けてた結果、解散になるんですが、他の人と組んでもそういう事を繰り返してました。

ーーーヤバい奴ですね…。

益村:講師に「お花ウォーズ」に達しているコンビがこのクラスにいないとか言われたり、NSCのライブでウケたりして…。かなりスケールの小さい話なんですけど完全に調子に乗ってましたね。いっちょまえに他の同期のネタの台本にアドバイスしたりして(笑)

ーーー益村さんは1組というクラスで育ちました。

益村:っていうのも、正直1組ってユルめなんですね。女子もいてワイワイしてるし、第2の人生のために来たおじさんおばさんもいてほんわかしてるし。そんな中でネタの王様気取ってました。講師の人に「僕、ネタを自分の息子だと思ってるんです。」って激寒意味不明な供述してたの早く脳から取り除きたいです。

ーーー自称1組の精鋭の益村さんですが、選抜発表(ネタ見せの授業で、各講師が選んだ生徒がその講師の選抜授業に参加できるようになるメンバーの発表が夏頃に行われる。それ以降は月ごとに昇格降格が行われたり、行われなかったりする。)でとても悲しいことが起こります...。

益村:そうです。あれだけ大口叩いて選抜クラスになにひとつ入れなかったんです(笑)いつもつるんでた同じ1組の奴らとか、僕から離れていった人達が何かしらの選抜に入ってて、今じゃ選抜が全てじゃない事も分かるんですけどキツかったですね。最初の選抜発表が土日の朝にあったんですけど、その日の朝がバイトの面接に行くために電車に乗ってて、電車で泣いてましたね。帰りの電車でまた別の選抜クラスが発表されてて帰りもまた泣いたの覚えてます(笑)

ーーーえぇ...。

益村:自信があった演技の授業も最初の選抜に入れなくて、選抜発表の瞬間、スーパーの棚卸しの夜勤のバイトの休憩時間だったんですけどその後の作業に全く力が入らなくてそれこそ泣きながら冷凍庫で無数のアイス数えてました。余談ですけどその日は出勤前に公園で休んでたら知らん黒人に「お前見てただろ」って因縁つけられて本場の「ファ●ク」言われるという散々な日でした。その黒人が去り際に「考えるな!!」って叫んでたんですけどDon't Think.Feel的な僕へのエールだったんだと拡大解釈してます。

ーーーなるほど(笑)

益村:はい(笑)

結成

ーーーこの時期はどのような心境の変化があったのでしょうか。

益村:ここらへんで、ぶち抜けてた自己評価の血糖値が一定水準以下まで下がるんです。俺大したことないじゃん、って。相方の大切さというか、俺なんかと組んでくれるだけでありがたかったな、と思うようになります。ピン芸やって無限に滑ってたのも一因ですが(笑)

ーーーフルメタルマダム結成に繋がるわけですか。

益村:そうですね。大石とは元々同じクラスで仲良くて、ちょうどネイビーポップ(大石の前のコンビ)が解散するかもということでタックル気味に全力で背中を押して「組まない?」と声掛けた次第です。これまた余談ですが彼らが解散報告ツイートした時、2人でモンエナ乾杯してるさまをモノクロに加工した写真あげててプチゲロ吐きそうになった記憶がありますね。

ーーーなるほど(笑)

益村:なんかだいたい組むの確定ので感じだったんで、大石と組むためにネタ5本くらい書いていつでもネタ見せに挑める万全の状態だったんですが、土壇場で「100パー組むとは言えない」とか言われて必死にご機嫌伺ってました(笑)

ーーー大石さんと組んだ理由はなんだったのでしょうか。

益村:きっかけというか、組む前に2人でなんかやったのが演技の授業でのエチュード(即興演技)なんです。演技の授業といえば月に1回やってくる激烈ハードな授業なのですが、その日が特殊なエチュードで。

ーーー人1人しか通れないような1本の狭い吊り橋の両側から人が渡ってくるシチュエーションで即興演技して、そのやり取りでどっちがこのエチュードを盛り上げてたか審査されて勝ち抜いてく通称「橋エチュード」ですね。とにかく面白いシーンにしなければ2人とも負けという。

益村:詳しいですね(笑)これで僕が対戦相手の中年白人女性の同期に「朝8時半なので橋を渡ってプリキュアを見たい男」というカードを切って挑むも相手が日本語分からなさすぎてとりあえず土下座して叫びまくって1勝するのですが、その次に僕への挑戦者に選ばれたのが大石で、大石という演技の授業のエースみたいな存在に僕は「目の前の目標をひたすら破壊する戦闘マシーン」を演じて、あっちがナルシストななんか強いヤツで来てくれて僕が華麗に倒されるみたいな。で途中で僕の戦闘マシーンが大石の改造された友達で「今だ!撃て!」って感じで感動のエンディングを迎えるみたいな。これがその日の授業のベストバウトみたいな扱いになってすごいウケたんです。大石の勝ちにはなったけど2人とも良かったみたいな。これきっかけでこいつとなんか出来たら楽しいだろうな、とは思ってましたね。

演技の授業

ーーー演技の授業が益村さんのきっかけだったんですね。

益村:そうですね。この時から二人で何かできれば楽しいかなとは思ってました。

ーーなるほど(笑)益村さんは演技の授業の選抜に遅れて加入します。

益村:演技選抜には、一軍と二軍があってそこに入れ替わりが色々あるみたいな感じだったんですが、そこにも入れてなかった益村が選抜昇格濃厚みたいな雰囲気の月があって、NSCの選抜が発表されるブログをドキドキしながら見たら「演技選抜二軍候補」という謎の存在に昇格して謎の感情になったのを覚えています(笑)そこから何やかんやあって正式に演技選抜となりました。

ーーーなるほどな(笑)

益村:ん?

ーーー演技選抜といえば、3月のNSC卒業公演「Virtual love 〜僕だけのアイドル〜」でアイドルの親衛隊のリーダーであり凄腕ハッカー「三木ヒデノリ」を怪演し、読み合わせの段階で大ハネしますが。

益村:それは愚問だよぉ〜、田中クン〜。

ーーーえ、本物!?ありがとうございます(笑)

益村:本物ですよ(笑)作家コースの同期が書いてくれたんですけど、かなりのハマリ役で楽しかったです。説明セリフがめちゃくちゃ多くて苦労しました。この稽古中、演技選抜の同期と仲良くなれた気がします。

大ライブ、そして

ーーー本日は貴重なお話ありがとうございます!そろそろ最後の質問に移らさせていただきたいと思います!

益村:こちらこそ(笑)懐かしい話が色々出来て楽しかったです!なんでもどうぞ!(笑)

ーーーそれでは(笑)日にちは前後しますが、大ライブ(その年で一番面白い芸人、首席を決めるライブ。予選と決勝で1年の総決算をぶつけ合う。)が2月に行われました。

益村:.....。

ーーー大ライブはどうでしたか?

益村:帰れ。

ーーーえ?

益村:話すことはないです。帰ってください。

ーーーお花ウォーズ時代のネタをやって激スベりした挙句、64位という大惨事になったお気持ちを聞かせてください。

益村:このインタビューは終わりです。帰ってください。

ーーー合う?(お花ウォーズ時代の漫才「UFO」での益村の最初のツッコミ。)

益村:いい加減にしろお前!かかってこいよお前!(エビアンを取材陣に投げつける)

ーーー今後の!展望を!教えてください!

益村:天下とってやるよお前!んなことより喧嘩しようや!(ジャブの構えで拳が空を切る)あ?あ?ビビってんのお前、ダッッセェなお前!お前弱いだろ?(下唇を噛んでいる)

ーーー今回はありがとうございました。

益村:はいはいはいありがとうございました。な?お前ビビってんだろ?(ミニテーブルを蹴り飛ばす)

ーーーバトルティンダーの構えありがとうございます(笑)

益村:(鬼の形相でこちらを追いかけてくる)

フルメタルマダム益村さんへの取材は思わぬ形で終わってしまったが、前後編で益村さんのルーツや初出しエピソードを聞くことが出来た。2年目を迎えた益村康平、そしてフルメタルマダムがどのような飛躍を見せるのか、見せないのか、それなりに注目していきたいところだ。

フルメタルマダムとは主に神保町漫才劇場で会うことができる。ぜひネタを見に行こう。

益村康平(ますむらこうへい)…北海道恵庭市出身。NSC東京24期として2019年デビュー。お笑いコンビ フルメタルマダムのツッコミやネタ作りを担当。主な代表作に「バトルティンダー」「架空うんこ人間」などがある。最新作「架空うんこ人間シリーズ シーズン3 うんこ人間への鎮魂歌(レクイエム)」は今夏公開予定。

インタビュアー...マスムラコウヘイ(ねりまワクワク文庫)

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