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歩き遍路の話41 足の痛みと共に、ついに実家にゴール!

また少し間があいてしまいました。
お遍路日記の前回の記事では、最終日の午前中、高知県東洋町まで書きました。今回はその続き、断崖絶壁の山と海だけに挟まれた、民家も店も自動販売機も、なんにもない道からのことを書きたいと思います。

11月23日

たしか午前10時頃に、この道に入った。

山と海だけに挟まれた何もない国道

この道は、普段から私が車でよく通る道。

台風が多いこの地域では、台風や大雨などの荒天時には、この道はたびたび通行止めになる。波が道路までかぶってくるためだ。

この何もない区間は、だいたい10kmくらい。私が歩いていたスピードが時速4kmくらいだったので、2時間半くらいでここを抜けられる計算。

とはいえ、もう最終日でゴールは実家だったため、私は特に何時までに着かなきゃいけないという考えもなく、この日はのんびりした心持ちで歩いていた。

途中、一ヵ所だけ日陰で休憩できる場所がある。

以前から車で国道を通るたびに気になっていた場所。でも近くに車を停められる場所はなく、路肩に停めるにしてもここは車が速いスピードで通る道なのでそれも危ない。気になっていたものの、何だかよく分からない謎な場所だった。

なのでこの歩き遍路を機会に、そこに立ち寄ってみることにした。

この何もない区間約10kmの、だいたい真ん中あたりに位置する場所。

山の中に少しひらけたスペースがあって、お堂と木のベンチがいくつかある。ぱっと見は、少し怪しい印象だから、その空間に入るのに少しドキドキした。

(その空間全体の写真を探したけど、残っていませんでした。イメージが湧きづらくてスミマセン。)

お堂の中を覗いてみた。その場所は「法海上人堂」というらしい。

法海上人堂の内部

花がお供えされて、案外きれいにされている。意外と頻繁に管理されている様子が見てとれて、驚いたと同時に、安心した。

お堂の周りは、山。よく見ると、川がある。木陰に風が吹き込んで、きれいな水も流れていて、とても気持ちの良い場所だった。

奥にはトイレも設置されていた。

でも、これはさすがに古い。恐る恐る扉を開けてみると、汚い洋式トイレだった。和式なら汚くてもなんとかできるのに…座らないといけない洋式で汚いのは、さすがに無理だな……とそこのトイレの使用は諦めた。

少しだけその場所で休憩して、また歩き始めた。

このあたりの道は、国道のすぐ隣がほぼ手つかずの山のため、野生の猿や鹿がしょっちゅう出る。

この日、室戸市と書かれた標識のすぐそばの場所で、野生の猿が20~30匹もいた!!道路に近い山の斜面の少しひらけたところで、多分日向ぼっこするために下りてきてたのかな。

こんなにたくさんの野生の猿を見たのは初めてで驚いた。


「室戸市」に入る直前の山側に猿がいた
携帯のカメラをズームして撮った一枚

元気に走り回る子どもの猿もたくさんいれば、お母さんの背中に乗って移動する赤ちゃん猿もいた。竹を揺らして遊んでいる猿もいた。猿の王国かと思った。

こんなにたくさんの猿を見たのは、動物園か猿園くらい。野生の猿の王国は初めて!!

あまりに興奮して、焼山寺あたりで一緒に歩いていたルーマニア人の遍路の男の子にメッセージを送った。(前の件で彼とは少し気まずくなっていたけど相変わらずたまに連絡はとっていた)このへんに野生の猿がたくさんいたよ!と。

ちなみにその日の15時くらいに彼はその場所を通ったらしいのだが、「no monkeys」というメッセージが送られてきた。

さて、たくさんの猿に出会ったものの、この山と海だけの何もない区間を抜けたのは昼ごろ。意外と早かった。

そして、ついに地元!室戸市に入った。

まずは最初の集落、佐喜浜町入木地区の「佛海庵」にも立ち寄った。そこは無人のお堂だけど、トイレが開いていたので借りることにした。ここも来たのは初めて。こんな場所があることはこのときまで知らなかった。

そして、佐喜浜。

この日はちょうど佐喜浜でマルシェイベントが開催されていた日で、私の知り合いもたくさん出ていたので、お遍路姿で寄ってみた。

そしたらみんなに「お遍路結願おめでとう!」と言ってもらえた。

まだあと少しあるけどね。家まであとちょっと。でも、もうすぐ終わる。

お昼ごはんはそこのマルシェで買って食べた。そしてたしか、13時頃出発。


夫婦岩が見えた!!
室戸らしいゴツゴツの岩

この辺まで来たら、もうあと少し。もうあとは楽勝~♪と思っていた。

しかし、おかしいぞ?

久しぶりに、足がめっちゃ痛い。疲れた。

久しぶりに、歩いても歩いても進まない感覚。

久しぶりに、「もう歩きたくない」という状態になった。

まるでお遍路の最初の頃に戻ったよう。

椎名地区のバス停に腰をおろして、しばらく休憩した。朝寄った東洋町のお寺でいただいたお菓子を食べる。疲れた体と心に、とても沁みた。ありがたい、と思った。

この感じ、本当に久しぶりだ。最近は結構歩き慣れていたから。

このときはただただ辛かった。地元集落はまだか。家はまだか。車で10分くらいの距離なのに、歩いたらこんなに時間がかかるのか。

歩き始めの頃のように、だいぶしっかり休憩した後、力をふりしぼって腰を上げた。

頑張って歩いて、家まであと5分のところまでやってきた。

そこですれ違ったおばちゃんに、頑張ってねと声をかけられ、お接待で500円をいただいた。もう飲み物を買う距離すらない、ほぼゴールの場所だったけれど、とても嬉しかった。

私地元なんです。家すぐそこなんです。とは言わずに、ありがたく受け取った。

そして夕方、想定していたよりもだいぶ遅れて、実家に帰りついた。

母親が「おかえり」と声をかける。というか、私が東洋町~室戸間を歩いている間で、実は母の車とは一度すれ違っていたのだけど。「昼前にあそこですれ違ったから、もっと早く帰ってくるかと思って、用事を早く済まして帰ってきたんだけど、意外と遅かったね?」と言われた。



さて、やっと歩き遍路の旅が終わりました。

いつも読んでくださっている方々、ありがとうございます!

次回は、遍路の後日談を書こうと思います。ぜひそちらも読んでくださいね^^

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