心の温もりは消しゴムだって消せやしない
たった2両しかないディーゼル列車が、けたたましい音を立てながら無人のホームに滑り込む。もうすっかり日も暮れてしまっている。
ホームに降り立つと、心地良い柔らかな風が頬を撫で、すっかり夏色に変わっている優しい緑色の匂いが出迎えてくれる。久しぶりの故郷だ。
誰も座っていないベンチの横には、ポツンと電灯が灯っている。寂しく灯る電灯の周りには、無数の蛾たちがヒラヒラと無表情で飛んでいる。
列車からは僕を含め3人の乗客が降りたが、僕だけは駅の出口へ向かわない。そのままホームの最後方