見出し画像

なくなってしまいそうな大切なもの・藁工場

先日見学した愛知県豊田市の藁工場をご紹介したい。以前ご紹介した鉱山のすぐ近くに位置する田園地帯にある小さな工場。中には85歳の老夫婦がたった二人で作業をしていた。少し腰が曲がったとても優しそうなおばあさんと、凛としたおじいさん。稲を細かく切ったりほぐしたりする機械に向かって作業をしていた。僕たちが入ると、とても嬉しそうな顔で迎えてくれた。「久しぶりだねえ」、一緒に連れて行ってくれた勇建工業の加村さんは顔馴染みなのだ。話をしていると、先日は沼津の方から誰々さんがきたんだよ、その前は九州の方から・・・、土壁を扱う左官屋さんが方々からここに藁を求めてやってくるのだという。昔はどこにでもいた藁職人、今では本当に貴重な存在になってしまったのだろう。

稲藁というのは昔は色々なことに利用されていた。例えばソファの中に入れる藁綿。この工場でも昭和の中期までは藁綿が主力商品だったそうだ。だから農家さんは稲刈りの際にも藁を大切に束にしてとっておいた。しかし今では収穫するときにそのまま機械で裁断してしまうそうで、綺麗な長さ80センチくらいの状態の稲藁はとても手に入りにくくなっているということであった。写真のおばあさんの後ろにある藁は、土壁の土を寝るときに使用するものである。細い繊維状になった藁を練り込み、おいておくとその藁が発酵してバチルス菌という菌を出す。この菌にはカビや匂いを防ぐ効果もあり、人の暮らしの中にはとても良いものだ。自然の産物だからこそ持っている自然を優しくコントロールする力なのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?