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この協働事業は高見林業さんが丹精込めて育てた木を伐り、田村材木店で製材して、ますいいリビングカンパニーの家づくりに使うという取り組みである

今日は埼玉県さいたま市にて進行中のOさんの家の木を伐りに、栃木県鹿沼郡にある鷹見林業さんを訪問した。家の木を伐りに山に行く、そんな取り組みができたらいいなあと23年前にますいいリビングカンパニーを作った時から考えていた。中学、高校と山岳部に所属していたから山には親しみは感じていたけれど、伐採の現場というとまた話は別である。登山道を歩いていても伐採を見ることはほとんどない。山の仕事というものを肌で実感する機会というのは都会人にはなかなか得ることはできないのだ。だからこそ家づくりに使う木がどこでどんなふうに育てられているのかに興味があった。育てた木を自分で伐って家を造る、とても素晴らしい取り組みである。

家づくりに従事して早24年目である。24年目にして栃木県鹿沼市上粕尾にある高見林業さん、そして栃木県日光市にある田村材木店さんとの協働の機会を得た。高見林業さんは粕尾の谷にある江戸時代中期から10代にわたって続く林業家である。この粕尾の谷には現在140世帯ほどの方が住んでいるが、その多くが林業などの山に関係する仕事についているそうだ。今の時期は桜が綺麗に咲いていて、思川にはヤマメを釣る釣り人の姿がちらほら見える。6月になると鮎釣りの人がどっと増えてくるそうだ。この会社は齋藤さん親子で経営されている。二人とも東京農大を出た林業のエリートだ。まるでくまモンのようなどっしりとした元柔道家のお二人に育てられた木はとても良質の杉や檜である。田村材木店さんは日光で100年続く製材所を持つ材木屋さんである。こちらは日光東照宮に程近い場所にある。この協働事業は高見林業さんが丹精込めて育てた木を伐り、田村材木店で製材して、ますいいリビングカンパニーの家づくりに使うという取り組みである。

この取り組みでは施主は山に行って家の梁や柱に使用する代表的な木を自ら伐採する。自分の家の木を自分で伐るのである。お清めをして、ワイヤーを張って、チェーンソーで伐るのだが当然自分だけでできるはずはないので木こりさんたちに手伝ってもらう。はじめに倒す側に切り込みを入れて、次に反対側から鋸目を入れていくのだが、ある程度深く入ったところで木が耐えられなくなって倒れだす。周りに立っている木々の枝にあたりながら倒れだすと、空から折れた枝が降り注いでくる。この時は何度見ても感動する瞬間だ。樹齢100年を超える木が倒れると、その小口には水が滲み出してくる。手を当ててみると、本当に濡れている。春は木が水を吸う時期なのだ。

高見林業の木はSGEC認証材である。定められた7つの基準を満たす事業者が認証を受けて生産する木である。そして認証材をしっかりと非認証材から分別して製材出荷するという認証を田村材木店さんも受けている。つまりこの取り組み下ではSGEC認証材だけが現場に入ってくることになるので、家の骨組みとなる柱や梁の全ての産地が明確になるわけだ。高見林業さんから田村材木店に運ばれた木々にはSGECのタグがついている。これはまるでカニの足についているタグのようだが、産地と伐採の履歴を証明するものである。

SGECの7つの基準を以下に示す。この基準は、モントリオール・プロセスを基本に、日本の森林の自然的・社会的立地に即して、持続可能な森林経営を実現するための国際性を持った基準で、森林管理に関する環境、社会及び経済の分野を網羅した基準である。
基準1 認証対象森林の明示及びその管理方針の確定
森林を適正に管理するためには、森林を所有する権利や利用する権利が明確にされ、更に、森林の管理状態が帳簿類で整理されていなければならない。また、森林管理に当たっては、その方針と計画が確定され、更に、その方針と計画について定期的な見直しが行われ、常に森林の管理レベルの向上が図られるよう努めなければならない。基準2 生物多様性の保全
森林を管理する上で、「森林の豊かさ」を保つことは大切で、「森林の豊かさ」の指標となる多様な生物群が共存できる森林生態系が保全されなければならない。森林の中に生息する生物種は、動植物から微生物に至るまでお互いに関係し合って生息しており、生物種に応じた森林の取り扱いが行われなければならない。また、貴重な種が生息する場合には特別な配慮を行わなければならない。

基準3 土壌及び水資源の保全と維持
森林がもたらす恵みの中で、水資源の供給と土砂の流出防止は重要である。特に、森林は水源を守り、清浄な飲み水をつくり、海をも豊かにする。このような森林の恵みが保持されるように、伐採や林地開発など森林の利用に当たっては十分に注意が払われなければならない。
基準4 森林生態系の生産力及び健全性の維持
森林から得られる多様な機能や資源が長期的に安定して享受されるためには、伐採、更新、保育、間伐などが注意深く行われなければならない。また、病害虫や山火事などの森林災害に対しては、対策が常備されていなければならない。
基準5 持続的森林経営のための法的、制度的枠組
森林管理の実行に当たっては、森林生態系の保護・保全や森林に関連する権利、健康、労働・安全・衛生及び等森林管理に係る国内法はもとより、国際条約等を遵守されなければならない。また、地域社会や先住民族(アイヌ民族)の伝統的、文化的、慣習的な権利等は尊重されなければならない。
基準6 社会・経済的便益の維持・増進及び地球温暖化防止への寄与
森林が緑の循環資源としての役割を果たし、産出される認証林産物が、様々な用途に有効に活用され、地域雇用の拡大や地域経済の振興に資するように努めなければならない。また、森林がレクレーション等市民に自然に触れ合う機会・場所を提供するとともに、入山者に対する環境教育、安全などの指導及び対策が整備されるよう努めなければならない。更に、森林の管理・整備・利用が、地球温暖化防止に寄与する二酸化炭素の吸収・固定源として貢献できるよう努めなければならない。
基準7 モニタリングと情報公開
森林の状況は絶えず変化しており、また、森林管理計画の実行の状況についてその影響を評価するために、モニタリングを定期的に実施し、その結果について、公表されそれぞれの地域の情報として共有されるとともに、森林の管理方針・計画の実行及び改定に反映させなければならない。

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